第85話 闘病

どこか見覚えのある空き地。



近くに公園がなくて昔よくここで遊んだ。



ふと見るとそこに子供の頃の小町がいた。



小町は剛本に気が付くと近寄ってきた。



小町「探したわよ。つよしさん。」



剛本:これは何だ?



小町「つよしさん。どうしたの?顔色が悪いわ。」



心配そうに剛本を見つめる子供頃の小町。



剛本「小町。。なのか?」



小町「何?つよしさんったら私がわからないの?」



剛本「い、いや。。そんな事は。。」



小町「変なつよしさんね。」



剛本「俺を探してたって?」



小町「ええ。。。」



剛本「どうしたんだ?」



急に黙り込む小町。



小町「。。。」



剛本「?」



小町「つよしさん。私ね。。。」



剛本「うん。」



小町「私、もうすぐ死ぬの。」



剛本「なっ!?何を言っているんだ?」



うろたえる剛本に小町は微笑んで



小町「だからさよならを言いに来たの。」



剛本「いや!俺がお前を守る!絶対に死なせたりしない!」



小町「。。。ありがとう。」



小さい小町は剛本にその背を向ける。



小町「でも、もうダメなの。」



泣いているのだろうか?



後ろ向きにうつむいてまたしばらく黙り込む。



剛本「待ってろ!俺がすぐに助けに行く!」



剛本「諦めるな!」



すると小町の体は突然輝き始める。



そして小町の姿がこぼれ落ちる様に消え始めた。



それを繋ぎ止めたいが触れると今すぐ壊れそうで触れる事すら出来ない剛本は叫ぶ。



剛本「やめろ!死ぬな!」



小町「さよなら。。。つよしさん。。」



剛本「小町!!」



剛本「小町!行くな!!!」



剛本は天井に手をかざしながら目を覚ました。



目には涙を浮かべていた。



常夜灯の明かりがボンヤリと照らすその部屋は簡易ベッドが10個並ぶ青の研究所の地下の病室だ。



そのベッドの一つに剛本は涙を流して横たわっていた。



どうやらうなされていたようだ。



熱が出ている。



丁度、インフルエンザか何かそんな症状だ。



剛本「今のは。。夢。。か?」



剛本:小町。。。。



剛本:皆は大丈夫だろうか?



剛本:被験者からナノマシーン適合者への感染での症例はここでは俺だけだ。。



剛本:ここから長期化した場合どうなるかは未知数だ。。



剛本:小町達がどうなったか知りたい。。。



この青の研究施設はイシュタラ神殿の牢獄同様でインプルは勿論、直接会話も効かない。



唯一の通信手段は専用の通信機器を使う事だが当然剛本は持っていなかった。



周りは見知らぬサークルアンデッドの被験者達。



それもウイルスに侵されて全員苦しんでいた。



剛本:ここは。。地獄だな。。



剛本:終わることの無い絶望を彼らは強いられてきたのか。。



剛本:ここにいる者達もイシュタラ達も



剛本:そして今は小町達も。。。



剛本:確かエンキと言ったな。



剛本:一体何なんだ?



剛本:何故こんな酷い事が出来る?



そんな事を考えている時、不意に耳元で声がした。



エルヴィン「随分シケた感じだねぇ。。」



剛本「エルヴィン?いつの間に?」



剛本「お前はここに入って大丈夫なのか?」



息を切らしながら剛本はエルヴィンを見る。



エルヴィン「オイラは特別だからね。」



自慢げに振る舞うエルヴィン。



苦しそうだが剛本は少し表情が和らいだ。



エルヴィン「朗報だよ。ナノマシーンウイルスの血清剤が完成した。」



それを聞いてハッとなる剛本。



剛本「本当か!?」



エルヴィン「あぁ。今、順番に投与して回ってるよ。」



エルヴィン「ここにもすぐに来るよ。もう少しの辛抱だ。」



剛本「。。。そうか。。これで小町も。。」



剛本がボンヤリと天井を見つめて安堵の表情を浮かべているとシーリングライトの明かりがついて数名の人影が入って来た。



ショウ「待たせたな。」



クレピオス「さあ、早速投与を始めましょう。」

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