第84話 剛本剛(ごうもとつよし)

81区警備局イシュタラ対策部特殊捜索1課



ナノマシーン適合者を中心に作られたこの組織は今、サークルアンデッドの開発したナノマシーンウイルスが局内に蔓延し、大半が隔離病棟に隔離されて閑散とした状態だった。



本来ならサークルアンデッドでの事件を期に一気にサークルアンデッドを買収した『社団法人ニンナズ』の一斉捜索に乗り出す所だがそれも出来ずにただ時間が流れていた。



そんな中、前回に引き続きイ特課長室



エアバニー「サスケ、ちょっと用が出来た。席を外してくれるか?」



そう言われるとサスケはまた片膝をついて



サスケ「御意。」



と一言残してまた影の中へ消えて行った。



床に出来た黒い影が小さくなって消える瞬間、エアバニーは遠くの方で「ニンニンでござる!」と叫ぶのが聞こえた様な気がした。



エアバニー「。。。。。」



エアバニー「大丈夫か?アイツ。。。」



そして再び部屋に静寂が戻る。



エアバニー→バアル:「すまない。お待たせした。」



バアル→エアバニー:「いや、突然ですまないね。」



エアバニー→バアル:「いや、全然。ところで一体今日は何の用で?」



バアル→エアバニー:「実は剛本君の事でね。」



エアバニー→バアル:「アイツがどうかしました?」



エアバニーの表情に不安がよぎる。



しかし次のバアルの言葉でそれは一変する。



バアル→エアバニー:「彼を人の代表としてイシュタラ対人間の戦いの停戦交渉をする用意がある。」



エアバニー:おいおい。。マジか。。?



エアバニー:一体どうやって。。?



バアル→エアバニー:「言葉が出ないかい?」



エアバニー→バアル:「。。。あ、ああ。。でも、無条件という訳ではないんだろ?」



バアル→エアバニー:「そうだね。こと81区に関しては特にね。」



エアバニーはゴクリと生つばを飲む。



バアル→エアバニー:「我々の要求は3つ。」



バアル→エアバニー:「イシュタル様の悲劇と人々の罪、そして多くのイシュタラ達が懸命に放射能汚染物質の除去と生き物の保護に尽力して来た事を人々に知らしめる事。」



バアル→エアバニー:「次に83区にいると思われるエンキとの戦いに共闘する事。」



バアル→エアバニー:「最後にエンリルの捜索に協力する事。」



バアル→エアバニー:「2つ目と3つ目は特に81区との同盟を意味すると思ってくれていい。」



エアバニー→バアル:「。。。ありがたい話だ。俺たちにとっては願ってもない条件だ。」



エアバニー:83区の問題はサークルアンデッドの事件以降、蜂の巣を突いた様な騒ぎになっている。。。



エアバニー→バアル:「有り難すぎて怖いくらいだ。。」



エアバニー→バアル:「しかし、何故剛本を代表に?区の代表ではなく。」



バアル→エアバニー:「そうだね。理由も3つある。」



エアバニー→バアル:「。。聞かせてもらえるか?」



バアル→エアバニー:「勿論だ。」



バアル→エアバニー:「まずイシュタル様の意思とも言えるイシュタラの門に彼は認められた。これは我々にとって非常に重要な事だ。」



バアル→エアバニー:「そして彼はイシュタラの議員5名からチカラの移譲を受けてティアマトのチカラに目覚めた。つまり他守ショウやエンリルを除けば人類最強の存在となった。」



バアル→エアバニー:「アイツが。。。?」



バアル→エアバニー:「さらに彼は意図せずだがあのヤム議長の政策を人間殲滅から人間側のナノマシーン適合者と共闘してエンキ打倒に変えた。」



エアバニー→バアル:「そ、そんな事が。。。」



バアル→エアバニー:「本当に奇跡だったよ。」



バアル→エアバニー:「以上だ。何か質問はあるかい?」



エアバニー→バアル:「い、いや。。。。」



エアバニーはしばらく言葉を失った。



バアル→エアバニー:「この事は83区の件もあるのでまだ口外はしないでくれ。」



エアバニー→バアル:「わ、分かった。」



バアル→エアバニー:「ではまた。」



エアバニー:バアル:「あ、ちょっと待ってくれ!剛本はいつこっちへ?」



バアル→エアバニー:「今、サークルアンデッドの開発したナノマシーンウイルスの血清剤開発に携わってもらっている。」



バアル→エアバニー:「こちらと81区で同盟を結ぶ前提でそれも情報共有するつもりだ。」



バアル→エアバニー:「血清剤が完成次第そちらに向かってもらう。」



エアバニー→バアル:「何もかも願ってもない。。。本当に感謝する。」



バアル→エアバニー:「そうか。何よりだ。ではまた会おう。」



バアルはそう言うと直接会話の通信を切った。



エアバニーは呆けたように天井を見つめる。



エアバニー「ふーぅ。。。」



エアバニー「剛本剛ごうもとつよしか。。。」



エアバニー「もう、アイツが隊長でいいんじゃねぇか?」



何か肩の力がどっと抜けた気がしたエアバニーだった。



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