第41話 法と露天風呂と門

『他者を殺してはいけない』

『他者の物を取ってはいけない』

『他者を騙してはいけない』



バアル「イシュタラの国の法はこれだけだ。」



ショウ「え?法ってそれだけ?」



バアル「これなら子供でも解るだろう?」



ショウ「なんかこう、もっと厳しくて長いのを想像してました。」



バアルは頷くと



バアル「我々は食事を取る必要がない。よって奪い合いをする必要がない。紛争をする必要もない。」



バアル「我々は病気にならないし歳も取らない。よって社会福祉も必要がない。」



ショウ「じゃぁ毎日何をして暮らしているんですか?」



バアル「芸術に勤(いそ)しんだり勉学に励んだり競技をしたり、自分を高める事や趣味を楽しんで暮らしている。」



ショウ「仕事は?」



バアル「神殿の仕事以外は基本自由だ。趣味で作ったものを必要な物と交換するバーターがある。」



バアル「公共事業や兵役等の国の仕事はチカラの強いものが志願してやる。皆、自分の得意な事で国に貢献している。」



ショウ「じゃあお金は必要がない?」



バアル「イシュタラの国に貨幣は存在しない。よって貧富の差もない。」



ショウ「仕事がないんじゃ水道とか電気とかお風呂もないんですか?」



バアル「ない。それにここには夜もない。風呂は天然の露天風呂があるので自由に使ってくれたまえ。」



ミネルバ「露天風呂って。。ちゃんと男女わかれてますの?」



バアル「天然なので別れてはいない。恥ずかしければ水着を着ればいい。」



ミネルバ「えええ!?」



ミネルバは顔を真っ赤にしてショウの方を見て



ミネルバ「わ、わたくしは水着を着ますからね!」



と念を押した。



ショウはそれよりもあのオムツの様な姿を皆に晒さないといけないかも知れないと言う事に気が付いて脂汗をかいていた。



ショウ「うわぁぁ。。どうしよう。。?」



しかし、水中なので誰もそんな汗には気が付かない。



しかし、アナトはなんとなく察した。



アナト「どうした他守?オムツが恥ずかしいのか?」



ショウ「わっ!ちょっと!アナト!何言っるの!!」



人魚達の前でオムツの事を言われて慌てるショウを見て意地悪そうに少し笑うアナト。



ショウ:そう言えばアナトはどうなんだろう?



ショウ:み、水着だよな?



ショウ:たぶん。。



ショウ:それよりオムツ。。。どうしよう。。?



そしてそのすぐ後にショウ達に最初の試練が訪れた。



バアル「風呂はさておき先ずは入国だ。」



バアル「この門は意思を持っている。もし、このイシュタラの国に『好まざる者』と判断された場合はこの門をくぐって中に入ることは出来ない。」



剛本「じゃあ、俺は無理だな。イシュタラを信じた訳じゃない。」



バアル「それも解っている。だが、先ずはこの試練を受けてもらう。」



剛本「何んでだ?結果が判っててやる意味があるのか?」



バアル「試練を受ければ解る。」



剛本「。。!?」



ショウ「あの、質問があります。」



バアル「何だい?」



ショウ「ミネルバはどうなるんでしょうか?」



バアル「彼女は君が通れば多分大丈夫だ。」



ショウ「解りました。まぁ、邪魔な時はしまっててもいいんで。」



ミネルバ「ちょっとtamori!人をモノみたいにおっしゃらないで下さる!?」



ショウ「だってお前。。ホントに何もするなよ?今から召喚禁止だ。キ・ン・シ!」



ふくれるミネルバ。



ひと呼吸おいてバアルは切り出した。



バアル「では剛本君。君から入りたまえ。」



剛本「。。。分かった。」



剛本の前に大きな門が立ちはだかる。



その内側の真っ黒な空間に剛本は一瞬ぞっとして鳥肌が立つのを覚えた。



決して自分を受け入れはしないであろうその門の威圧感に押し潰されそうになりながら剛本は覚悟を決めるとバアルをひと目見て静かに入っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る