第21話 ティアマトの力2

監視室



金森「この光は。。エンキ博士の予測にあったティアマトから力が流入しているのかもしれん。君はエンキ博士の論文を読んだことはあるかね?」



西田「いえ、エンキ博士については最高機密との話で伺っております。わたくしでは情報にアクセス出来ません。」



金森「あの論文は本当に美しい。あれを見て涙を流さない研究者はきっといないだろう。恐らく今までの世界観が180度変わる。そういった代物だ。」



西田「エンキ博士はそれ程の人物なのですか?」



金森「私からすればあの方はもはや神だよ。」



西田「。。神?」



金森「かつて人は自然に対し、そして死に対して畏怖しその依代として各々が生活と文化にあわせた神を創造しそれを立て祀る事で同じく畏怖する哀れな民を従えた。」



金森「ただ畏れを癒やし従える為の神は程なく文化間でお互いの正当性を保てなくなり争いを呼ぶ。次に他者の神による理不尽に対する真理を問う者が現れる。しかしそれはそうして生まれた如何なる宗教の類であってもほぼ例外なく後世の継承者によって自己の利益の為に歪められ、それが為に当初の純粋な悟り人の想いを踏みにじりそれ自身がまた暴力と化す。」

  

金森「だがあったのだ。たった一人の悟り人が見た真理に繋がる道が。」



金森「人がその心理に近づいた時、神罰が下った。以来地球は氷に閉ざされて試練の時を迎えた。」



金森「長い長い寒さとの戦いの中でかつての殆どの技術は忘れ去られた。いや、封印したのかも知れない。しかし我々はこの場所で数百年間眠っていた博士と出会ってしまった。」



西田「眠っていた?。。まさか?」



金森はモニターを見て



金森「他守ショウ。もっと見せてくれ。君のおかげて博士の理論の検証がようやく出来るのだ。」



金森は不敵な笑顔を見せた。



映し出される他守の映像ではその緑のオーラから一円玉程の透明な球体が2つ生み出されて上空へ上がっていくのが見えていた。



右の男「球体は水素の様ですが。。」



金森「物質と反物質を生成しているのか?」



金森「質量が同じなら水素爆弾の75倍程のエネルギーか。。」



西田「なっ!博士、ここも危険なのでは?早く避難した方が。。」



金森「この計画を始めた時点で既に我々は覚悟は出来ている。」



金森「考えてもみたまえ。今回の件でエンキ博士に送ったデータで我々の研究は10年は進む。」



金森「今この瞬間もあの方は見ておられる。」



西田はここで初めて自分の運命を察した。



ふさぎ込んで震える西田。



金森「君には悪いことをしたね。」



そう言い終わるかどうかの所で全ての光は緑から真っ白になり



音もなく全てが消えた。





◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 



殆ど無意識であろう。



ショウはとにかく力を求めた。



その結果、究極のエネルギーを得るための道を自然に導き出した。



その緑色のオーラは水素と反水素を生み出して外気と干渉しない球体に押し込めた。



両者は陽子と電子のプラスマイナスが逆転したもので触れれば物質からエネルギーに100%変換される。



さらにその球体を作ると同時に味方をオーラで包む。



そしてショウはその球体に手をかざしぎゅっとその拳を握るとその球は静かに合わさった。



そして大爆発が起こった。



カンビや機械人形はおろか施設そのものを全てを吹き飛ばし、地上からそのままカプセルのドーム状の天井を貫いて遥か空の彼方、宇宙抜けてまで風穴を開けた。



その衝撃は大地はうねらせて地震をまき起こした。



光と地震が収まると全ては無と帰していた。



施設の建物があった場所は大穴となり、カプセルの天井に空いた大きな穴の中の真っ黒な空には無数の星が輝いていた。



そこに高速で近づくオレンジ色の光が見えた。



瓦礫の中、ショウのオーラに守られていた検体達の群れの中アナトはそれに気付いた。



アナト「兄様!」

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