第21話 新たな謎解き

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モニカ・ブレイブ


ジョブ:戦乙女ヴァルキュリア


スキル

 剣術   19

 掃除   32

 勇血   7

 光魔法  2

 身体強化 3

 魔力強化 2

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 ダンジョンでの攻略を経て、モニカはどんどん成長していった。

 修得しているスキルのうち、『光魔法』はクラスチェンジした際に覚えたもの。『身体強化』と『魔力強化』がスキルオーブで覚えさせたものである。

 モニカの戦いぶりを見てわかったことだが……『戦乙女』は『魔法剣士ルーンナイト』に近い職業のようだ。

 やや剣士寄りではあるが、クラスチェンジ前のレオンと似通った戦い方である。身体能力と魔力にバフをかけるスキルであれば無駄にはならないだろう。


「本当に勇者の下位互換なんだな……良くも悪くも」


 勇者として最も必要なスキルである『勇血』も所持していることだし、本格的にレオンがいらなくなってきた気がする。

 もちろん……「いらない」などと言ったら兄を探しているモニカにも、レオンの身を案じている仲間達にも申し訳ないのだが。


「お兄さん、このダンジョンはどこまで続いてるのかな?」


「さて……底にある物は知っているが、どうしてレオンやら四天王やらが先に進んでいるのかは不明だな」


 このダンジョンの最奥には、ダンジョンを生み出している『コア』と報酬のアイテムしかない。

 それなりに貴重なアイテムではあったのだが……レオンと四天王がそれを求めてダンジョンを進んでいるとは思えなかった。


「まあ……不幸中の幸いにも、このダンジョンの仕掛けはほとんど把握している。いずれは追いつけるはずだ」


 出たとこ勝負になってしまうが……追いついてしまえば、目的だってわかるだろう。

 鬼が出るか蛇が出るか……前に進む以外に道はなかった。


「じきにダンジョンの最奥に到着する。答えはすぐに出るだろうよ」


 俺はモニカの頭を軽く撫でてから、石造りの回廊を進んでいった。

 何度かモンスターと戦うことにはなったものの……敵はそれほど強くはない。モニカを育てる肥料にしかならなかった。

 やがて到着したのは広い部屋である。

 部屋の床にはまたしても無数のパネルが敷き詰められていた。前回と異なっているのは、パネルに矢印ではなく動物を象っているであろう文様が描かれていることだ。


「また謎解きですの。訳が分かりませんの」


 部屋の構造を見るやウルザが真っ先にさじを投げた。

 諦めるのが早過ぎる。本当に脳筋な娘であった。


「痕跡は……やはり部屋の奥に続いているな。扉は閉まっているが……」


 ナギサが部屋の床や壁を確かめながら「フム?」と首を傾げ、無防備に足を踏み出そうとして……。


「あ」


 ナギサの姿が消えた。

 一瞬で、跡形もなく消えてしまった。


「ナギサさん!?」


「いなくなりましたの! イリュージョンですの!」


 エアリスとウルザが驚きの声を上げた。

 いなくなったナギサの姿を探して左右を見回すが……ナギサは俺達の後ろに立っていた。


「これは……私はどうして部屋の入口に……?」


「ひゃっ! どうして後ろにいるんですか!?」


 瞬間移動したナギサに、モニカが驚いて跳ねる。

 何故か俺の上着にしがみついてきたモニカを宥めながら、俺はこの部屋の仕組みについて説明する。


「この部屋は決まった順番にパネルを踏んでいかないと、部屋の入口に強制送還させられる仕組みになっているんだ」


「決まった順番……?」


 ナギサが目を細め、床のパネルをジッと見つめる。


「フム……パネルに描かれているのは動物だな? これは鼠。これは犬。こっちの人形は……猿か?」


「パネルは十二種類あるようですね。私の好きな猫はないみたいです」


「お兄さん、見たことのない動物もいるよ。これはドラゴンなのかな?」


 エアリスがどこかガッカリしたような表情で首を傾げた。モニカも「うーん」と難しい顔で唸った。

 エアリスとモニカは素直に謎解きに挑んで考え込んでいる。

 ウルザは最初からあきらめているようで、携帯食料の干し肉をモシャモシャと齧っていた。

 おそらく、彼女達にはいくら考えてもわからないだろう。

 この部屋の仕組みはゲームをプレイする人間……つまり、日本人を対象として作られているのだから。


「あ……もしかして……!」


 ナギサが目を見開いた。

 そう……このメンバーの中で謎を解くことができる基礎知識を持っているのは、俺を除けばナギサだけ。

 ジパング……日本を模した国の出身であるナギサであれば、解くことができるだろう。


「十二種類の動物……干支。十二支か!」


 ナギサが答えにたどり着く。

 大正解。床を覆っている十二種類のパネルに描かれているのは十二の動物。すなわち、『十二支』である。

 この部屋は干支の順番でパネルを踏んでいかなければ、スタート地点の入口に戻されてしまうのだ。


「つまり、この部屋は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥の順番で床を踏んでゆけばいいのだな!? そうだろう!?」


「ああ、その通り。そこから先は説明はいらないな」


「うむ、なれば先陣を切らせていただこう!」


 ナギサは再び足を踏み出し、床に敷き詰められたパネルの上に乗る。ナギサが踏んだのは鼠の絵が描かれたパネル。今度は転移させられることはなかった。


「次は丑。そして寅……」


 ナギサが順番にパネルを踏んでいき、他の面々も後に続いていく。

 これが十二支であることに気がつけば謎解きは終わったも同然。数分後には部屋の奥にある扉へと到着することができた。

 全員がゴール地点にたどり着き、エアリスが胸を撫で下ろして口を開く。


「ふう……ジパングの方にしか解けないだなんて、随分と意地悪なダンジョンですわ。ゼノン様も良く『エト』なんて知っていましたね?」


「……まあ、俺だからな」


「さすがはご主人様ですの! 強くてカッコイイだけじゃなくて博学ですの! 文武両道ですの!」


 ウルザが絶賛してきた。

 俺が知っているのはゲームの知識があるからである。そこまで褒められると、かえって気まずくなってしまう。


「この先にお兄ちゃんがいるんだよね……どうして、こんな奥深くまでは言っているのかな?」


 モニカが唇を尖らせ、呆れたように言う。

 それは全員が抱いている疑問である。血痕や足跡などの痕跡を追いかけてここまで来たは良いものの……本当に、どうしてレオンまたはボルフェデューダはダンジョンの奥深くにまで潜っているのだろうか?


「理由もそうだが……そもそも、どうやってこの部屋の謎を解くことができたんだ?」


 改めて考えてみると……おかしい。

 この部屋は『十二支』という日本人独自の知識がなければ、解くことができない謎解きである。

 レオンはもちろん、四天王ボルフェデューダにそんな知識があるわけがない。


「匂うな……謎と陰謀の匂いがしやがる」


 ダンジョンを進めば進むほど、謎が解けるどころか不穏な気配が強くなっている気がする。

 それでも……ダンジョンを進む以外に俺達にできることはない。

 俺はゆっくりと首を振り、下の階層につながっている扉を開いたのであった。






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あけましておめでとうございます!

昨年は一年、ありがとうございました。


「悪逆覇道のブレイブソウル」は書籍1巻が発売。

「レイドール聖剣戦記」も2巻が発売、コミカライズが連載開始いたしました。

他にも「学園クエスト」のコミカライズ版がスタートするなど、作家としてとても実りのある一年になりました。


今後も頑張って執筆していきますので、今年もどうぞよろしくお願いします!

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