第105話 一つの提案 (ソシリア視点)
「……っ!」
想像もしていなかっただろうアルフォードの激しい拒絶に、マルクは息を飲む。
しかし、それに気づかないようにアルフォードは続ける。
「今のサーシャリアに教えるわけにはいかない。大丈夫、後から俺がきちんと説明する。だから俺に任せてくれ」
「だ、だが……」
「頼む、マルク」
真剣な表情で、そう告げるアルフォードにマルクは数瞬悩む。
「はぁ、わかったよ。だが、説明するときは俺も呼べ」
「ああ、ありがとう。できる限り頼らせてももらう」
そういって、表面上は和やかにマルクは矛を収める。
……しかし、マルクの気づいているだろう。
アルフォードは、絶対に頼るとは言っていないことを。
それに気づいていてもなお、言及できないなにかを今のアルフォードは有していた。
その様子を見つつ、内心私はマルクに謝罪する。
アルフォードのもう一つの地雷について、伝え忘れていたことに気づいて。
そう、これまでもアルフォードは頑ななにサーシャリアに伯爵家について明かすことを由としなかった。
それも、サーシャリアに思いを告げる告げないなど比にならない頑なさで。
……そのことに、実のところ私は異常を感じないわけではなかった。
あまりにも、アルフォードがサーシャリアに隠すようになにかを行っていることに対して。
しかし、伯爵家についてはサーシャリアに言うかどうか悩むのもまた事実だった。
正直なところ、サーシャリアに伯爵家について話すことが大きな刺激になることは分かり切っている。
今、明らかに体調の悪いサーシャリアに、本当にこの話をすべきか、迷った私は後に回すことを決めていた。
──即ち、サーシャリアが精神的に余裕がある状態、アルフォードと思いを通わせた後にしようと。
私と同じような企みがあるわけではないだろうが、難しい話題にだれもアルフォードに意見する人間はいない。
それを確認したアルフォードは、この先の方針を話し始める。
「どうやら、伯爵家は王都の屋敷に逃げ込んできているらしい。何事もなければ明日、俺はそこに乗り込む。マルク、だいたいの方針はわかっているな」
「あ、ああ。手紙に送られていたのをみた」
「なら、それを見返しながら、待機しておいてくれ。お前は切りたくない切り札だから、できる限り出したくはない」
「わかった」
「待って、アルフォード一人でいくの?」
「いや、セインもつける。ソシリアとリーリアには、後処理を任せることになる。気にせず、ゆっくりと、待機していてくれ。なにかあれば、遠慮なく頼る」
「……わかったわ」
リーリアの言葉を聞いた後、アルフォードは周囲を質問はないかと確認するように見回す。
「伯爵家から話はそれるけど、少しいいかしら」
私が口を開いたのは、そのときだった。
「……ソシリア? 何のことについてだ?」
さすがに話が想像できなかったのか、眉をひそめながらアルフォードが尋ねてくる。
それに、私は笑顔で告げた。
「侯爵家に関する大きな発見があったのと、それをふまえての提案があるの」
◇◇◇
更新遅れてしまい申し訳ありません。
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