第100話 巻き込む二人 (ソシリア視点)
「あれ?」
マルクとリーリア会話の最中、私はふと違和感を感じる。
……なにかを見逃しているような、感覚を。
だが、その違和感は原因がわかる前に薄れてなくなってしまう。
「どいうした、ソシリア?」
「なにかあったの?」
「……いいえ、大丈夫よ」
少し思案した後、違和感を友人が心配で過敏になっているだけだと判断した私は口を開く。
「ただ、大きな悩みでなくとも、サーシャリアは精神的に疲れているだろうと思ってね」
「……確かに、サーシャリアは家族に婚約者までに裏切られた訳だものね」
「本当に好き勝手やってくれたものだな」
怒りが滲む、リーリアとマルクの言葉を聞いて、私の中にも怒りがわき出てくる。
伯爵家に、カイン。
サーシャリアを虐げたその存在を一体どうしてやろうかと考え、私は小さく息を吐く。
確かにそれらの存在は許せないが、今意識すべきはどうやってサーシャリアを安静にさせるかだ。
それ以外は後にした方がいい。
そう考えて、ある問題を思いだした私は深々とため息をついた。
「だからこそ、アルフォードにはとっとと覚悟を決めてほしいんだけどね」
「ああ……」
瞬間、手紙でおおよそのことを知るマルク、リーリアの顔にあきれた表情が浮かぶ。
そして、二人は悩ましげな表情で話し始める。
「一度決めると、アルフォードは頑なだからな」
「それでも、サーシャリアのことを考えると、私もアルフォードがそばにいてくれた方がいい気がするんだけど」
「……なにか、手を回すか?」
ふと、私の頭にある考えが浮かんできたのはそのときだった。
……即ち、二人を共犯にできるのではないか、という。
今回のセインの件は、私の独断でアルフォードに怒られる覚悟を私は決めている。
ただ、二人を巻きこむことができれば、アルフォードを説得して有耶無耶にすることができるかもしれない。
それに何より、だまし討ちではなくアルフォードが乗り気になっていた方が、サーシャリアにも安心できるはずだ。
そう判断した私は、にんまりと笑ってマルクとリーリアへと口を開いた。
「実はね、もう打っているの」
「は?」
そう告げた瞬間、マルクが呆然とした表情を浮かべる。
……一方のリーリアはあきれたような、予想していたような表情で口を開く。
「はあ、やっぱりね。で、どれだけ手を回しているの?」
その言葉に、私はさらににっこりと笑う。
やはり、リーリアは話が早いと。
気づけば、私達の足は止まっていた。
私は周囲に人がいないのを確認し、声を潜めて口を開く。
「実はね……」
そうして私は、今まで自分が裏で動いてきたことも全て、話し始めた……。
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