雷神の槌作戦篇

第1話 建国神話

 むかしむかしのおはなしです。


 人間にんげんたちが、魔法まほうをしらないころのおはなしです。


 人間にんげんたちはたすけあいながらくらしていました。


 しかし、たべものはすくなく、かれらはいつもおなかをすかせていました。そして、飢饉ききん凶暴きょうぼうけものたちのしゅうげきで、おおくのものがいのちをおとしていきました。


 あるとしのことです。


 さくもつがふさくになり、もりのきのみやどうぶつもとりつくしてしまいました。


「かみの啓示けいじをうけた。あたらしいとちをめざしてたびだとう」

 

 そういいだしたのは、ルフトるふとという若者わかものでした。


 おおくのものがルフトをばかにしました。


「かみのけいじだって?うそつきなばちあたりめ」


「ここをでていっても、たべものなんてあるものか」


 それでもルフトはくじけませんでした。


 かれにはごにんの仲間なかまがいたからです。


 いげんにみちたザルツハイム、けんにたけたヴァルドゥ、まつりごとにたけたラハト、あきないにたけたレベルア、そしてかしこきものロルム。


 かれらとともにルフトはふねをつくり、みなみのうみのかなたにむけてたびだちました。


「かみがおっしゃるにはみなみには温暖おんだんで、みのりのゆたかなとちがあるときく。そこにさえたどりつけば、ゆたかなくらしができるにちがいない」


 かれらはたがいにたすけあいながら、うえやあらしをのりこえてみなみをめざしてこうかいをつづけました。

  

 ななじゅっかいのあさとよるをこえたひ、かれらはようやくりくちにたどりつきました。


 そこでかれらをでむかえたのは、やさしくちえにみちた巨人きょじんたちでした。


さいしょルフトたちはかれらのきょだいさにおそれおののきましたが、かれらはるふとたちにたべものをあたえ、やさしくもてなしました。


「ちいさきものたち、たいへんなくろうをしたね。ここはたべものゆたかなとちだ。きみたちにおいしい果物くだもののがとれるとちをあたえよう。わたしたちよりはるかにすくない土地とちでも、きみたちはいきてゆけるだろうから」


 巨人たちにおそれをなしていたろくにんでしたが、しだいにかれらのやさしさにこころをひらき、またたべもののゆたかなことにかんしゃしました。


 そしてまた、巨人たちは人間にんげんにふしぎなちから、魔法まほうをさずけました。


 魔法まほうはほのおをよびだし、ちをさき、かぜをふかせるふしぎなちからです。


 ルフトたちはまほうのちからで、さらにゆたかなせいかつをきずきました。


 また、ルフトはきょじんたちのゆるしをえて、こきょうにのこったひとたちをよびよせました。


 ルフトたちはこきょうのなかまたちとともにこのあらたなとちですごし、やがてけっこんしてこどもをおおくもうけました。


 しかし、あるひをさかいに巨人きょじんたちはきかいなやまいにたおれていきました。


 からだがいきているうちからくさっていくやまいです。


 ルフトはなげきかなしみましたが、魔法まほうでもかれらのやまいをなおすことはできませんでした。


 さいごの巨人きょじんがやまいにたおれたとき、ルフトはかれらのいたいをていねいにまいそうしました。


 そして、じぶんたちをこころよくむかえいれ、魔法まほうをさずけてくれた巨人きょじんたちへのかんしゃのせきひをたてました。


 しかし、そのルフトもまたやまいにたおれ、かえらぬひととなったのでした。


 あとにのこされたひとびとはルフトのゆうきをたたえ、くにのなまえを「ルフトのおうこく」という意味の、「ルフト・バーン」とすることにしたのでした。


                    ――絵本ルフト・バーン建国記

                       

                      さく アレイア・ロルム

                      え  みどりかわ みつる 

                       福耳館書房 刊  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る