学園クエスト ~現代日本でクエストが発生しました~

レオナールD

本編

第1話 目覚めの初日①

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デイリークエスト


・腕立て伏せを100回せよ。

 報酬:スキル【身体強化Lv1】を修得。


・座禅を1時間せよ。

 報酬:スキル【精神強化Lv1】を修得。


・牛乳1本(900ml)を一気飲みせよ。

 報酬:アイテム『ポーション』を獲得。


――――――――――――――――――――


「………………何じゃなんじゃこりゃ」


 自宅のベッドに寝転がりながら、俺はぼんやりとつぶやいた。


 5月初旬。ゴールデンウィークの1日目。

 どこかに出かけるでもなく、勉強やスポーツに励むわけでもなく。

 ダラダラと昼間っからベッドで惰眠を貪っていた俺の目の前に、突如としてそんな文字の羅列が出現したのである。


「クエスト? スキル? これってロープレゲームとかに出てくるやつだよな?」


 目の前に出現したのはテレビ画面のようなウィンドウ。

 その中に映し出されているのは、RPGゲームでよくあるようなクエストボードであった。


 俺はさすがの異常事態に起き上がって、ベッドの上にあぐらをかいて座った。

 頬をつねったり、こめかみをグリグリとねじったりしてみる。


 うん、痛い。

 どうやら夢ではないみたいだ。


「うーん、夢じゃないとすると、なんで突然こんなものが見えだしたのかね…………あ、インフォメーション?」


 クエストボードを観察していると、四角い画面の右上のあたりにアルファベッドで『Information』と書かれているのを発見した。文字の横にはピコピコと点滅する赤い『!』が浮かんでいる。

 まさかと思って『!』を指で押してみると、ピコンと短い電子音とともに画面が違うものへと切りかわった。


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Information(NEW!)


おめでとうございます!

月城真砂さま。あなたは神による能力検証実験のモルモットに選ばれました!


・能力内容

【クエストボード】

 様々なクエストを達成することによってスキルやアイテムを取得できる能力。


・検証期間

 月城真砂さまの人生が終わるまで。


・実験報酬

 クエストボードによって取得したスキルを持ったまま来世に転生することができる。

 また、月城真砂さまが希望する世界に転生することができる。


 どうぞクエストとスキルのある生活をお楽しみくださいませ。


――――――――――――――――――――


「モルモットって……人聞き悪すぎるだろ!? 他に言い方なかったのかよ!」


 月城真砂さま…………はい。そうです、私が月城真砂つきしろまさごです。


 この『Information』に書かれている情報を信じるのであれば、俺の目の前にあるクエストボードは何らかの実験のために神が与えてくれた能力のようである。


 ファンタジー小説はわりとよく読むほうだし、中学の頃には異世界トリップとかに憧れていた時期もある。

 しかし、まさか自分の身にそんな事態が降りかかってくる日が来ようとは思っても見なかった。


「うーん……どうしたもんかな。モルモット扱いは不本意だけどスキルとかアイテムが本当に手に入るのならかなり興味深いな。中二心がくすぐられるというか、ちょっとワクワクする」


 今日はゴールデンウィークの初日。1週間ある連休の始まりだ。

 俺は高校では帰宅部だし、連休だからといって友達と海水浴とかキャンプとかアウトドアに出かけるほど活動的じゃない。

 インドアな性格が幸いして、クエストボードの力を検証する時間はたっぷりとある。


「腕立て100回、座禅1時間……牛乳の一気飲みと回復アイテムの因果関係はわからないけど、やろうと思えば全部この家の中でできることだよな」


 試しにやってみるか。

 そんな風に思い至って、俺はさっそくベッドから床に足を下ろす。


 まずは腕立て伏せ。

 床に両手両足をついて、数を数えながら腕立てをする。


 筋トレなんてもう何年もやっていなかったためさすがに100回連続ではできなかったが、どうやら途中で休憩を挟んでも続きからカウントされるようだった。


 何度も休憩をしながら、30分ほどかけて100回をやり遂げた。


『デイリークエストを達成。スキル【身体強化Lv1】を修得!』


「おお!?」


 ピコーンという音が鳴って、頭の中にATMのように機械的な音声が流れた。身体の中に何かが入ってくるような感覚。

 一瞬だけ胸がカッと熱くなって、すぐにもとに戻った。


「うーん……身体が軽くなったような、気のせいのような……?」


 軽く飛び跳ねてみたり、拳を振ってジャブを繰り出してみたりする。


 たしかに先ほどよりも動きやすくなったような感じがしないでもないが、プラセボ効果……つまり勘違いだと言われればそんな気もする。


 今一つスキルを修得したという実感がない。


「うーん……まあLv1だもんなあ。そんなに目に見える変化はないってことかな? よし、それじゃあ次は……」


 座禅を1時間。床に座ってあぐらをかく。

 座禅なんてしたことがないから作法とか全くわからない。

 とりあえず何となく浮かんだイメージに従って両手をそれらしく組んで、目を閉じてみた。


 それにしても、座禅するときって何を考えればいいのだろう。

 それとも、考えちゃダメなのだろうか。

 そもそも座禅と瞑想ってどう違うのかわからない。


 いかん、雑念が多すぎる。

 何も考えるな。心を真っ白にしろ。


 俺はうんうんと頭の中から余計な考えを消し去るように努力した。

 途中から「いつも通りボーっとしてればいいんじゃね?」と気がつき、意外と得意分野だなあと思いながらぼんやりと時間が経つのを待った。


「…………」


 あれからどれくらい時間が経っただろうか?


 カチコチと時計の音がする。

 座禅を組んでから随分と経った気がするのだが、まだ1時間にならないのだろうか。

 アラームとか設置しとけばよかったかな――そんな考えが頭によぎる。


『デイリークエストを達成。スキル【精神強化Lv1】を修得!』


「おおっ、成功だ!」


 どうやら1時間たったようである。ピコーンと音声が耳に響く。

 座禅のやり方があっているのか不安だったが、あれで問題なかったようである。


「無事に修得できたみたいだな。さて、それじゃあスキルの検証をして…………ん?」


 新しく修得したスキルを試そうとして……そこでふと思う。


 精神強化って、なんだろう?

 身体強化はわかるけど、精神強化って……心が強くなる? どうやってそんなの確かめればいいんだ? 精神ってなに? こころってなに?


 身体強化以上に漠然としており検証の仕方がわからない。

 そもそも、精神が強化されるとどんな効果があるというのだろうか。ホラー映画とかに強くなるのか?


「なんか……我ながら微妙なスキルだよな、【クエストボード】って。役に立つのかどうか、イマイチ効果がわからん」


 身体強化も精神強化も無事に修得することができた。

 しかし、どちらも微妙過ぎて本当に効果が出ているのか全くわからなかった。


「こうなったら……最後のに賭けるしかないか。牛乳あったかな?」


 俺は深々と溜息をついて部屋から出た。

 スタスタと階段を下りて、台所がある1階へと降りて行った。






――――――――――

本作のコミカライズが開始しました!

「booklista STUDIO」というサイトで月1連載していますので、どうぞよろしくお願いいたします!(詳細は近況ノートに投稿)


https://studio.booklista.co.jp/

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