愛していたのは

@kusahayashi

愛していたのは

僕が一番愛していたのは誰だったのだろう。


僕らは、三人で友達だった。

僕、彼女、彼

仲のよい友達だった。家が近くで幼なじみ、物心ついた頃にはもう友達としていた。皆欠けてはならない存在で皆大好きだった。僕以外もそうだと信じきっていた。彼女は、異性だからと恋人になりはしたものの三人の関係性は変わらないものと信じていた。

だが彼は、彼女と恋人になったからと僕から離れていった。


彼女を大切にするんだ。


彼女と同じだけ俺といなくていいんだ。


彼は、そういってどんどん離れていく。いや、離れていったというのは僕の主観なだけで彼から言えば僕らが恋人になったのだから三人で遊んでばかりではいけないと遠慮しただけなのだろう、何故ならば彼女と彼が二人で遊ぶことは一切なくなり、僕と二人で遊ぶことは少なくなりはしたが合ったからだ。


だがその時は、そんな冷静にそれを考えることが出来ずどんどん離れていく彼に焦り、袋小路に嵌まっていった。


別れれば、いいのか?


なぜ?彼女のことは好きなのに


なぜ?前のように出来ない?


僕はどちらも取りたいのだ。でもどちらも捨てることが出来ないのだ。彼女と恋人のままで彼と友達でいたいのだ。それも前と同じように欲張りすぎているこの感情を欲張りとわからないから僕は前に進めないでいるのだ。でも選ばなければならない。そういないとどちらかを完全に失う。そんな僕を急かすように彼女は、言う。


貴方は、彼のことが好きなのではないの?私は彼のことは友達としか見れないけれど僕のことは、恋人としてみるわ。でも貴方は彼も愛しているように見えるわ。私が女だから選んだのなら少し考えてみることね。


まだ怒って言ってくれれば良かったが彼女は、優しく僕を諭した。僕は彼を好きか、想像してみたが性愛的に彼を愛したい訳ではないことは確かだった。彼と握手以上に馴れ合いたい気持ちはなかった。勿論彼女とはその気持ちはある。が愛とは性愛ばかりではない。


あっ、一緒にいつも居たいのは彼だ。


気付いた、気付いてしまった。しかし急いでそれをしまいこんだ。

それを許すほど世間も彼も甘くはないからだ。そして彼女にあまりにも失礼だ。

蓋をした、栓をした。深く遠く閉ざした。

そして彼女に


ごめんよ。前のようになりたくて悩んでしまっていたんだ。彼と恋人になりたいとは思ってないよ。


それだけ言い、自分の心を閉ざして彼に固執してしまったことを謝ろうと彼に…だがそれは永遠に敵わなくなった。


彼は、死んだのだ。あっさりと突然に

交差点でトラックに轢かれたそうだ。


突然の死、事件性のない事故。ここで時系列は冒頭に帰る。


僕が一番愛していたのは誰だったのだろう。


今まさに選んだのは彼女だ、そして彼を選べなくなった。これからは迷わず彼女を愛せるだろう。でも単純に一緒にいたいのは彼だった。それは勿論世間的にずっと続けれるものではない。なんて若い思いだ、でも問いかけはただひとつにこうだ


僕が一番愛していたのは誰だったのだろう。


END



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