負けない強さ!
フィールの唄は盗賊達の力を増幅し、冒険者達の加護は急激に無くなっていった。それによりシルフィードの防衛の冒険者や守衛達は劣勢になっていった。
「オラオラ!さっきの勢いはどうした!」
「皆殺しだ!さっさと死ねや!」
「これだよ!これ!フィールの聖歌は最高だぜ!」
まだ辛うじて死者は出てない状態だが、それも時間の問題だった。その時、側面に周り込んでいた冒険者達と狩人が魔法と弓矢で強襲した!
「燃やし尽くせ!フレア・ボム!」
「待たせたな!喰らえ!!!」
魔法使い3人と村の狩人や弓矢を使う冒険者達10人が一斉に攻撃を放った!
「ぎゃっ!!!!」
「ぐっふ!?」
「うぎゃぁぁぁぁ!!!!」
後方の方にいた盗賊達の叫び声が上がる。炎の魔法は着弾すると爆発し、周りの盗賊を炎へと包んだ。弓矢は複数の盗賊に突き刺さり、致命傷を与えて戦闘不能にした。
魔法使いは一撃を放つとすぐに村の方へと離脱し、弓矢も第2射を放った後は離脱した。盗賊達は追うことも出来ずに数を減らされ、仲間の介抱する者と戦闘を行う者に別れる事になった。
「糞が!!!!舐めたマネしやがって!!!」
ゲースは激昂した。いいようにやられたのが気に入らないのだ。
「フィール!別の聖歌を唄え!感覚が麻痺するヤツだ!」
フィールは絶望と憎悪から、全てを壊す破壊の聖歌しか唄えない。回復の聖歌は唄えないのだ。故に、気分を高揚させて痛みの感覚を麻痺させる事しか出来ないのである。
他の聖歌を唄ったことにより、【固有聖歌】『高揚の激流』の効果は減った。しかしまだまだ、強化されている事に変わりはない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「シオン!しっかりしろ!」
クロウはシオンを抱き起こして、シオンを揺すった。
「う…………うくっ」
意識が朦朧として返事が出来ないシオンに、ある人物がやって来た。
「何をしているの!早く起きて唄いなさい!でなければ大切な人が殺され、大切な村が破壊されるわよ!」
やって来たのはイオンだった。相変わらずローブを深く被り、マスクをして素顔は見れないが、本気で叱咤激励しているのがわかる。
パンパン!パンパン!
イオンはクロウに抱えられているシオンの頬を平手打ちをした。
「お、おい!」
クロウも止める暇も無く、シオンをひっぱたく!
「い、痛い!!!!」
シオンの意識が覚醒した。
「やっと目が覚めたのね!早く唄いなさい!大事な人達が死ぬ前に!」
「でも!私の唄いじゃ!向こうの唄に勝てないよ!!!」
シオンは涙目で訴えるが、イオンは提案した。
「ピアノは私が弾くわ!貴女は唄に集中しなさい!聖歌は練習も無しにピアノを弾きながら唄える物では無いわ!」
「イオンさん………」
どうしてそんなに聖歌に詳しいのか気になったが、今は唄に集中する事にした。
「見なさい!目の前ので傷付き、倒れている冒険者や守衛達を!聖歌は想いを力に変えるわ!目の前の人達が傷付かないように、願いながら唄いなさい!」
そう言うと、イオンさんはピアノを弾き始めた。
支援系聖歌【護りの唄】をもう一度、唄い始めた。
「何度でも弾き飛ばして上げるわ!私の絶望は止められない!」
フィールも再度、聖歌を唄い始めた。また二人の聖歌が聖歌唱力の力場を作った。
相手の聖歌の圧力に、お互いに踏ん張りながら唄い続ける。
クロウはシオンの手を繋ぎ、護る様にシオンを支えた。
「頑張れ!シオン!」
クロウの励ましに、シオンも応えようとする
『ありがとう!クロウ!私、頑張るよ!』
シオンは傷付きながらも戦う目の前の人達の為に唄う!
「シオンちゃん?」
「あれ?傷が治っていく!?」
「敵の攻撃が軽くなった感じがするぞ!」
シオンの唄った魔詞には本来、回復効果は無い。しかし、シオンの気持ちに比例して回復の効果まで付加されていたのだ。
『な、なぜ!?さっきまでとは違う!』
フィールは戸惑っていた。先ほどまでは自分の方が強かったのだ。しかし、今は自分が押されている。この違いはなんだ?そして再度、唄に力を込める。
『私は負けない!どうして私だけが不幸なのよ!みんな死んだ!私が殺した!だったら周りの全てが絶望して、不幸になれば良いのよ!私だけが不幸だなんて認めない!同じ苦しみを味わえ!』
すでに、自分勝手な思いにも気付かずに全てを他人のせいにして唄い続ける。
お互いの想いをぶつけるかの様に聖歌唱力の力場は拮抗していた。そんな時、シオンの中にフィールの想い(記憶)が流れ混んできた。
『ああぁ………そんな……』
シオンはフィールの起こった出来事に涙した。
「しっかりしなさい!貴女が諦めたらみんなが同じ目に遭うのよ!」
イオンの叫び声に、はっ!と我に変えるシオンは涙を流しながらイオンを見詰めた。
「唄いなさい!みんなの為に!そしてフィールの悪夢を終わらせなさい!シオン!!!」
シオンは涙を流しながら覚悟を決めて頷いた。
その時!シオンの脳内に新しいメロディーが鳴り響いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【後書き】
愚者の声
「脳内にメロディーって聞くとボカロを思い出しますね」
シオン
「ボカロには負けませんわ!」
愚者の声
「いやいや、無理でしょう?」
シオン
「やっぱり?」
愚者の声
「私はボカロと言うとソニ子さんが好きですねー」
シオン
「巡音ルカね。お姉さん気質が好きですわ!」
愚者の声&シオン
「「あれ?何の話でしたっけ?」」
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