大魔人!(怒)

シオン達の馬車が砦の中に入ると大勢の兵士達が出迎えてくれた。シオンの住居である砦は更に頑丈な城壁に守られていた。これは、万が一の時に、住民を避難させるシェルターの役目もあったからだ。


その中庭とも言える場所には埋め尽くされるほどの兵士が集まっていた。


ワァーーーー!!!!!!

ワァーーーー!!!!!!


「シオンお嬢様!お帰りなさい!!!!」

「会いたかったです!聖女様ーーーーー!!!!」

「シオンの姉御!お疲れ様でーーーーす!!!!」


大歓声の声が響き渡ります!

ってか、呼び名を統一しなさいよ!!!


私的には姉御って呼ばれる方が好きなんだけどね♪


馬車からシオンが降りると、歓声は一際大きくなった。


「久しぶりだな。元気にしていたか?」


シオンの父、リゲル・オリオンが出迎えた。


「お父様!ただいまー!」


シオンは抱き付いて再会を喜んだ。


「親父!自分だけずるいぞっ!」


シスコ………こほんっ、兄のシリウスもシオンの再会を喜んだ。


「メイドから定期的に報告は受けていたが、本当に元気で良かったよ」


「あら?この私が学園ごときに通う、令嬢達にやられるとでも?」


シリウスは両手を広げてやれやれと言った仕草を行った。


「まぁ、シオンなら大丈夫だろうとは思っていたよ」


シオンの頭を撫でながら甘い微笑みを浮かべるシリウスであった。


「あっ!そうそう、忘れておりました。紹介したい人がいるんでした!」


まだ馬車の中にいるアルデバランとベガを思い出していった。


「紹介したい人?」

「ええ、私(オリオン家)の大事な(金づる)人です!」


シオンがそう言うと父リゲルは大いに喜んだ。


『娘が短い期間で大事な友達を見つけるとは!?親として嬉しいものだな。よし!家名を聞いたら惜しみ無い援助をしよう!』


この時、父リゲルとシオンには致命的な誤解があった。リゲルは同年代の女友達だと思っていたことだ。


「それはめでたい!シオンの大切な人とは、歓迎しなければな!なぁ、シリウスよ!」

「ええ、妹の大切なご友人です。歓迎致しますよ!」


そう言って、馬車から出てきたアルデバランとベガを見て固まる二人であった。


ピキッ!!!

ピキッ!!!


「し、シオン?そちらの二人は………?」


「もうっ!今、言ったじゃない!私の大事な人達ですよ!」


オリオン家にとってのお得意様ですよ?失礼があってはいけないわ!


「シオン、多分勘違いしていると思うぞ?」

「ええ、その紹介では誤解を産みますよ?」


二人はシオンの言い方に問題があり、予想通りの誤解を産んでいると雰囲気で察した。


「シオン?そこの男達はどこの誰かな?」


シリウスはひきつった笑みで尋ねた。


『バカなっ!?メイド達からの報告では親しい男性はいなかったはずだぞ!はっ!?まさか、シオンが裏で手を廻して、情報を隠蔽していたのか!?』


シリウスとリゲルは混乱していた。


「初めまして!私はアルデバラン・レグルスと申します!この度、シオン令嬢にお願いして連れてきてもらいました」

「私も初めまして。ベガ・アルタイルと申します。この度はオリオン家の皆様とお話があり、同行させて頂きました」


アルデバランやベガは、口調を変えて、王族特有の失礼のない王公貴族の挨拶を交わした。


「アルタイル…………レグルス………?」

「北と南の王子なのか……?」


シリウスは内心で舌打ちを打った。


『くそっ!これではこいつらを亡き者に出来ないではないか!すでに他国の密偵もここに来ているはずだ。こいつらを殺すとマズイ事になるな………どうする!?』


「お父様、お兄様?どうなされたのですか?歓迎すると仰ったではありませんか?」


!?


『『しまったーーーーーーー!!!!!!』』


つい女友達だと思い歓迎すると言ってしまった!どうする!?ぐぎぎぎ……………


オリオン家の家訓で、1度言った言葉を安易に反故できないのだ。


「…………仕方がない。話もあるそうだし、歓迎しよう。シオンも数日間の馬車の旅で疲れた……………!?」


数日間、同じ馬車にいただと!!!!!!?


父親の言葉にシリウスも同じ事にいきつき驚愕した!


「シオンは先に部屋に戻りなさい。湯浴みの用意をさせている。そこの王子様達には、男同士で大切な話があるからね。とっておきの『歓迎』をしようじゃないか」


「えっ!ちょっ!まっ!?」


「じゃ、先に着替えてくるね♪また後で!」

「シオン!待ってくれ!誤解をーーーーーーー!!!!!」


シオンがいなくなり、王子達二人は蛇に睨まれたカエルであった。


「さぁ!『歓迎』しようじゃないか♪」


笑顔から一転、顔色が変わった。


「俺の大事なシオンと数日間も同じ馬車に乗っていた事について話そうか?」


それはそれは、地の底から響き渡るような大魔神の低い声でした。








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