組み立て式タイムカプセル
鯨飲
組み立て式タイムカプセル
「宅配便でーす」
配達アナウンスの声で、僕は目が覚めた。
「これまでに絶滅した動物は数多く存在しますが、その中には、死体が少なすぎることが要因で、剥製さえ残っていない動物も存在しています。そのような動物を、」
昨日は、遅くまで絶滅動物のドキュメンタリーを見ていた。どうやら電源を付けっぱなしにしていたらしい。おかげで酷く眠たい。
鉛のように重い瞼を、なんとか開きながら、僕は玄関に向かった。
そして、荷物を受け取った。開けてみると、中にはたくさんの封筒が入っていた。
一つ取り出して、振ってみると、中で破片のようなものが動き回る音がする。
「今どき、宅配便なんて珍しいなぁ」
窓から差し込む、太陽光に封筒を透かしてみると、中には、かつて存在したフランスのような形をしたものが見えた。
最大限分かるように例えたが、これが限界だ。つまり、何か整合性がある形には見えなかったのである。
他にもたくさんの破片が入っていたが、どれもよく分からない形をしていた。
「誰から、送られてきたんだ、これ?」
封筒には「望月翔」という送り主が記載されていた。
そこで、僕はその人物について、調べてみることにした。
「えーと、望月翔、福岡都立大学シュミレーション学部教授。へー、大学の教授だったんだ。さすがにもう亡くなってるか。てゆーか、この時は、まだ学部っていう概念があったんだな。今となっては、全科目を睡眠学習させられるからなぁ」
「てゆーか、一つの学問だけを専門的に学ぶとか、非効率的すぎでしょ。まぁ、技術なかったから仕方ないか。」
睡眠学習が確立した現在、大多数が膨大な知識を有する社会が実現していた。また、全員が、地球のさらなる繁栄という、同じ目的に向かって進むように教育されており、その貢献度合いによって、社会的ステータスも確定するのであった。
100年前に比べて、地球全体の森林は20%、生物の種類は、30%減少した。その代わりに、広大な土地や、資源を得たのだった。
「それよりこれは何だ?見たことないなぁ。お?何か紙が入っているぞ。」
その紙には、「これはパズルです。解けるものなら解いてみなさい。そしてこれは、私を未来に伝えるものです」と書かれていた。
「ほーう、過去からの挑戦状って訳か。受けて立ってやる」
そして、僕はパズルを解き始めた。それは、立体的なパズルだった。
茶色や少し黄色っぽいベージュのピースを組み合わせていくと、だんだんと、一つの生物のような形をしたものが出来ていった。
3時間後、ようやく一つのパズルが完成した。それは、昨日見た、絶滅動物のドキュメンタリーに映っていた、キリンという生き物の形をしていた。
他の封筒には、別のパズルが入っていた。パズル熱が冷めない僕はそのまま、解き続けた。
パズルを組み立てると、どれも、これまで絶滅した動物の姿になった。ニワトリ、イヌ、ネコなど様々な動物ができた。そして、いよいよ、最後のパズルが完成した。
最後のパズルを組み立てて完成したのは、ヒトだった。望月翔、本人の躯体であった。
「これか、これまでの歴史上で唯一、仲間同士の争いによって絶滅した動物は」
額の目を擦りながら、僕はそう呟いた。
組み立て式タイムカプセル 鯨飲 @yukidaruma8
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