ゆめの還る場所

詩月すずの

序章

はじまりの夢

昔から、不思議な夢を見ることがあった。

夢の内容はいつも決まっていて、知らない誰かが、楽しそうに笑っている夢。

その人が笑うと私も嬉しくて、懐かしくて、この幸せがずっと続くといいのにと思ってしまう程だった。


だけどその人は、突然暗い暗い闇の中に閉じ込められてしまった。

その名を、愛する人、大切なもの、全てを奪われて。

果ての見えない暗闇に閉じ込められてしまった。


右も左も朝か夜かもわからない、悠久の闇。

闇は長い長い時間をかけてその人を蝕んでいった。

やがて全ての人々から忘れられ、更には疎んじまれ。優しく全てを等しく愛する人であったのに、徐々に暗闇に意識を奪われて、長い時間をかけて呪いに変わってしまった。


今もその人は、暗闇の中で一人泣いている。

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