第40節 -光を描くということ-
コロニア市内の雑貨店で買い物を楽しんだり、カフェでお茶をしたりしながら玲那斗とイベリスは久しぶりの休日を満喫していた。
海の見渡せる場所を散歩して会話を楽しんだ後は近くのレストランで昼食をとり、今は午後からどうするかを2人で話しているところだ。
「午後からはどうしようか?どこか行きたいところはあるかい?」玲那斗が言う。
「えぇ、どうしても立ち寄らなければならない場所が一つ。」笑顔でイベリスが返事をする。
「奇遇だね。きっと俺も同じ場所に行こうと思ってる。」
2人は目的地を言わなくても互いの言わんとしていることが理解できた。
9月5日、雨を凌ぐ為に立ち寄ったアートギャラリー。ピーターの元を訪ねることが今日一番の目的と言っても過言では無い。
今日は “しばらく経ったらまた訪ねて欲しい” と言った彼の希望に応える日だ。
「行きましょう、ルーベンさんのところへ。」イベリスは玲那斗の手を引いて歩き出す。
「あぁ、そうしよう。」無邪気に笑う彼女の笑顔を見ながら玲那斗は返事をした。
市内の大通りを歩くことおよそ10分。目的地であるピーターのアートギャラリーに2人は到着する。
「なんだか妙に緊張するね。」入口扉に手をかけながら玲那斗が言う。
「そうかしら?でも私は少し貴方の後ろにいた方が良いかもしれないわね。」イベリスは玲那斗の後ろに回りながら言った。
彼は以前イベリスの姿が光の塊のように見えて直視できないと言っていた。そのことを承知しているからこその行動である。
「よし、じゃぁ入ろうか。」玲那斗はそう言うと入口扉を開き、2人はギャラリーへと入った。
ギャラリー内は前回来たときと変化が無いように見える。
最小限に抑えられたオレンジ色の灯りの中に飾られている数々の絵画は、それでいて以前と変わらない輝きを放っているように感じられた。
ただひとつだけ違ったのは1枚だけ異なる質感の絵画の展示が増えていたことである。
2人が前回訪れた際にピーターが見せてくれたコーヒーアートだ。
「これは、あの時彼が見せて下さった絵画ね。」朝食の風景が切り取られたかのような繊細な絵に近付きながらイベリスが言う。
目で見て楽しむだけで、香りまで感じられそうなほど優しくも温かな質感の絵は彼女の心を惹きつけた。
玲那斗もイベリスの横に歩み寄り共に絵画を眺める。
その時、奥の部屋から男性の声が聞こえた。
「おや、訪ねてくれていたのかい。久しぶりだね。姫埜君、イベリスさん。」
「ルーベンさん、お久しぶりです。」振り返りながら玲那斗が返事をした。
「お元気そうで何よりです。」玲那斗の後ろに隠れつつイベリスは言った。
2人の前に現れたピーターは穏やかな笑みを湛えながら言う。深い色のサングラスで目元を見ることは出来ないがその表情ははっきりと見て取れる。
「イベリスさん、私に気を使ってくれているのだね?だが大丈夫だ。」
彼の言葉を聞いたイベリスはひょっこりと顔を覗かせ、おもむろに玲那斗の横に立つ。
「それで良い。さぁ、奥の部屋に来たまえ。君達に話したいことと渡したいものがある。」
そう言うとピーターは奥の部屋に歩いて行った。
玲那斗とイベリスは互いに顔を見合わせる。玲那斗が一度頷き彼について歩き始めるとイベリスもそれに続いた。
「前と変わらず散らかっていてすまないね。君達が来ると分かっていれば少し片付けたんだが。」
「急にお邪魔してすみません。」ピーターの言葉に玲那斗は言った。
「気にすることはない。さぁ、椅子にかけたまえ。お茶を用意しよう。」
玲那斗とイベリスは以前座った場所と同じ位置にある椅子に腰掛ける。
部屋の中は前と変わらずたくさんの絵画や資料で埋め尽くされており、イーゼルに置かれたキャンバスには描きかけの絵画がある。
2人がキャンバスに描かれているものを見つめているとピーターが淹れたての紅茶を持ってきてくれた。
紅茶を受け取った玲那斗とイベリスそれぞれが礼を言う。
「ありがとうございます。」
「ドアーズという茶葉を頂いてね。君達なら気に入ってくれるかもしれないと思って取っておいたんだ。癖が無くて飲みやすい。」
ピーターはそう言いながら砂糖を溶かして一口飲む。
イベリスも砂糖を入れ、スプーンでゆっくりと溶かした後に香りを楽しんでから一口飲んだ。
ほのかに薔薇のような香りを感じ取ったイベリスはふと頭の中にロザリアの姿を浮かべた。直感でしかないが、彼女が気に入りそうな紅茶だと思ったからだ。
「とても美味しい。渋みも無くて飲みやすいわね。」イベリスが言う。
「このお茶を持ってきてくれた修道女もそう言っていたよ。」
ピーターの言葉に玲那斗とイベリスは紅茶を飲む手を一斉に止める。そして玲那斗が尋ねた。
「教会の方ですか?」
「あぁ、この国の人ではないな。2人組のとても美しい方々だったよ。名は確か…」
「ロザリア…」ピーターが名を思い出そうとした時にイベリスが呟く。
「そう、確かに彼女はそう名乗ったな。君達と同じように奇跡のことについて色々と話したよ。」
なるほど、どうやら自身の勘は間違っていなかったようだ。彼女が気に入りそうな…ではなく、彼女が気に入っている紅茶に違いない。イベリスはそう思った。
「さて、君達がここに再度訪れた時に話そうと思っていたことがある。端的に言ってしまえば例の奇跡についてだ。私は第五の奇跡についても現地で見ることは無かったが、なんだか気になってしまってね。 “外で空の様子を眺めていた”。」
ピーターの言葉を聞いた玲那斗は第五の奇跡においても空の状況が自然とは違う何かが起きていたことを理解した。
彼は全色盲であり、昼に明るい太陽が輝く空を見上げるなどということが長時間出来ない。
現地で観測したように、自然界に存在する空とこの国の大地の間には何らかの境界となるような “何か” があったということだろう。
「とても澄んだ空だったよ。それが人々の言うような青い色なのか赤い色なのか、どういうものかはわからないがね。見上げ続けていると吸い込まれそうなほど透き通った空だった。いや、落ちていきそうな錯覚を覚えるほどのという方が個人的にはしっくりくるな。」
「では、やはり第五の奇跡の日も空が眩しく感じなかったということですね。」
「その通り。奇妙なものだ。晴れた日に目を細めることもなく空をじっくり眺めることが出来るなどと。生涯を通じてないものだと思っていた。写真の中に映るものでしかじっくり眺められないからね。」玲那斗の言葉にピーターは頷く。
「だが私から見て変わったことと言えばその程度のことだ。しばらく空を眺めて物思いに耽っていたが、パリキールの方角から聞こえた凄まじい音と振動で現実に引き戻されたよ。そちらへ振り向くと煙が空に向かったたなびいていくところだった。」
それはマルティムに関わりのある倉庫や建物が焼き払われたという雷撃の音に違いない。
公安から資料提供を受けたウォルターの話では各建物は跡形も残らないほどに砕かれたり焼かれたりしていたらしい。公安と共に消火活動に従事した機構の中隊が記録していた内容も似たようなものであった。
それはパリキールだけにとどまらずにポーンペイ島全域において組織に関わる人間がいる家屋や物置などはことごとく薙ぎ払われたということだった。
「私はその音にびっくりしてしまってすぐにここに引き返してきたからその後のことは目にしていない。その日のラジオニュースで神の裁きとメディアは言っていたな。連日の報道で繰り返された単語だ。密売組織に関わりを持っていた場所がことごとく焼かれたのだろう?奇跡の少女、アヤメ・テンドウの力はどうやら紛うこと無い本物らしい。」
ピーターは椅子に深く腰掛けたままティーカップを脇のテーブルへ置き、深い溜め息をつきながら言う。
「彼女の力が本物であるなら、彼女が聖母の御言葉として公言する組織の人間に対する殺戮も次の奇跡で成し遂げられるのだろう。以前にも話したが、胸中は複雑なところだ。私には今でもどちらが正しいことなのか判断しかねる。」
ピーターはやや険しい顔を玲那斗に向けて問うた。
「君達機構は彼女の奇跡を止められるのかね?彼女の奇跡を止めた後、心の拠り所を奪われた民衆の声とどう向かい合っていくつもりだい?」
「そのことについては深くお話することは出来ません。我々に出来ることを最大限に行う。為すべきことを為す。それだけです。」情報を外部へ漏らすわけにはいかない。玲那斗は抽象的にただそう答えた。
「内部の事情は話せない、か。当然だな。だが私は信じている。君達なら彼女の奇跡を止めるに至る道筋を見つけ出し、それを成し遂げるだろうと。そして同時に民の心に寄り添ってくれるだろうと。」
「貴方がたの未来が明るいものであるように、私達は全力を尽くします。」イベリスが言う。
「あぁ、頼む。我々国民には力が無い。暴力的な力をもつ相手に対して声を上げることすら叶わない。彼女や君達や警察や政府といった力を持つ者達を頼ることしか出来ないからね。」
ピーターはそう言うと椅子から立ち上がると棚の上に置いた包みを手に取り玲那斗に差し出した。
「話したいことは話した。聞きたいことも聞いた。最後に君達二人に渡したいものを渡そうと思う。受け取ってくれたまえ。」
玲那斗は差し出された四角い包みを手に取る。この感覚は額縁だろうか?
「開けてみても?」
「もちろん。」玲那斗の言葉にピーターは快く返事をした。
玲那斗は慎重に包みを開く。すると中には額縁に収められた1枚の絵画があった。
その絵画を目にした玲那斗とイベリスは息を呑んだ。描かれていたのは “自分達であった” からだ。
中心に玲那斗とイベリスが描かれ、周囲にはジョシュアとルーカス、フロリアンが描かれている。
とても繊細なタッチで描かれた絵画はモノクロでありながらも非常に立体的で存在感のあるものだ。彼が出会ったことのないメンバーにしても頼もしいジョシュア、おどけたルーカス、朗らかなフロリアンといった全員の表情の特徴もよく描き分けられている。
そして仲間に囲まれて中央で笑う玲那斗と傍に佇み微笑むイベリス。背景にはモノクロの濃淡で表現された光のようなものと背後には虹が描かれており、彼が1枚の写真から感じ取った世界が確かにそこに垣間見えた。
「私にはイベリスさん、貴女が神様の与えてくれた奇跡の光のように見えた。」絵を眺めて目を輝かせる二人を見たピーターは再び椅子に座り、ティーカップを手に取って言う。
「光とは即ち人の道を照らす希望。創世記に語られる第一日目の光や古代エジプトにおける太陽信仰からもそれは窺うことが出来る。姫埜君の生まれ祖国、日本神話の主神〈天照大御神〉もそうであるように。光というものは人や動物や植物を問わず、多くの生命を育むために必要不可欠なものだ。そんな光という存在を太古の昔から人々は描こうとしてきた。」ピーターは紅茶を一口ほど飲み、2人へ視線を向けながら続ける。
「だが光という存在には形が無い。そんな目に映らないものをどうやって描けばいい。過去を生きた人々は考えた。そうして辿り着いた答えの一つが〈目には見えない存在を描くために、光そのものに “神” という概念を与える〉というものだった。見えないものに対して “想像する” という余地を付加したんだ。希望の光。神のもたらす奇跡。そうした絵画を通じて光は広く絵として描かれていくことになる。」
「人々の希望…」
イベリスが呟く。リナリア公国があった時代に周囲に言われていた言葉が蘇る。レナトと自分は国の未来であり新しい時代の幕開けに向けた “希望の象徴” であると。
玲那斗の中に存在するレナトの魂もリナリアでの過去の記憶において自分達が “希望” だと言われていたことを玲那斗に告げる。
「そうだ。多くの神話で語られる通り人々にとって光とは神がもたらす奇跡そのものだったのだよ。それから幾年相の時を経ながら光というものは絵画の中に様々な形式で描かれ【目に見えるものとして】表現されてきた。故に私は思う。光を描くということは即ち人の希望を描き出すということだと。」
ピーターはティーカップを机の上に置くとサングラスを外し、目を細めながらまっすぐに2人を見て言った。
「私は光というものが織りなす色彩という世界があるということを知っているが、それをこの目にしたことはない。どんなものかも想像できない。ただ人々が言うように温かいものや情熱は赤色で示すだとか、冷たさや孤独や肯定といった心は青色で示すだとかいう言葉における認識を共有しているくらいだ。しかし、先日貴女と出会った時に私の中にも〈色彩〉というものが見えた気がした。私には多くの人々が区別しているような意味と同じ感じ方での色の識別は出来ない。だが、私のような全色盲の人間にとってのオレンジ色や緑色といったものは確かに存在するし、それを絵に描くことも出来る。貴女に出会ったことで自分の中にあるそれらが具体的な〈色彩〉をもって見えたような気がしたのだ。そこで君達が写った写真から感じられた温かさや優しさ、そして使命に対する責任や付きまとう困難、それらを虹として表現してみた。昔から虹は何かと何かを繋ぐ為の象徴として描かれることが多い。君達のその情熱と思いがいつか世界を繋ぐだろうと願って。私にとっての “虹の架け橋”。その彼方にこそ希望があると思っている。」
絵に込めた意味を2人に伝え終えたピーターは再びサングラスをかける。
「ありがとうございます、ルーベンさん。大切にします。絵画、仲間にも見せますね。きっと喜びます。」玲那斗が言う。
「気に入ってくれたのであれば嬉しいよ。あぁ、君達がここを訪ねてくれて本当に良かった。私は既に棺に片足を入れた老人だ。このような心揺り動かされる出会いなどこの生においてはもう存在しないものだと思っていた。私からも礼を言う。ありがとう。」感慨深い様子で頷きながらピーターは言った。
「ルーベンさん、私達は必ず貴方が描かれた希望を実現して見せます。」
「楽しみにしているよ。」イベリスの言葉にピーターは笑顔で返事をした。
「では、この辺りで失礼します。」
玲那斗とイベリスは席を立ちあがると椅子に腰掛けたままのピーターに2人揃って深々とお辞儀をする。その後出口へと向かって歩いた。
しっかりした足取りで部屋を出る2人をピーターは見送る。2週間後の第六の奇跡を、彼らが本当の意味での奇跡に変えるよう願いながら。
* * *
地下室生活もあと少しだろう。アルフレッドは予感していた。
第六の奇跡まで残り2週間あまり。売り捌くはずだった薬物の在庫も大半が第五の奇跡で焼き払われ、自分達の手足となって動いていた使い捨ての駒も残されていない。
今まで自分達が警察に見つかること無く悠々と暗躍できたのは大統領による情報隔離と隠蔽、抹消、加えて自分達が全く動かなくても取引が回るような仕組みを作り上げていたからであった。
もはやその仕組みを維持する為の人間という歯車が存在しない。薬物という燃料も残されていない。
おそらくは近日中に大統領も自分達を見限り自己保身に走るだろう。アヤメの手で殺されるか、大統領の手によって殺されるか、警察に捕まって獄中で死ぬまで生かされるか、逃げようとして “姫様” に殺されるかの簡単な四択問題だ。
「ボス、もう俺達には時間は残っちゃいねぇ。どうするつもりだ?」ベルンハルトが問い掛けてくる。
アルフレッドは聞き流す。足を机に投げ出し椅子でくつろぎながら手元のグラスに注いだ酒を傾け、いつものように煙草をふかしながら何をするでもなく天井を見上げる。
「なぁ、俺達にはもう策は残されちゃいねぇ。使い捨ての駒も残されちゃいねぇ。肝心の薬もあのガキに焼かれちまった。だが、何もかもが八方塞がりの状況でただ待つなんてのは俺は御免だ。」ベルンハルトの正直な告白にアルフレッドは視線だけを投げかけて答えた。
「そうか。そうだな。そうだろうな。俺だって同じだぜ?兄弟。だが何もしようがない。どうあがいたって結末は変わらない。奇跡とやらが起こってからただ何もせずに静観してきたツケが今頃になって回ってきたってことさ。利息が加わり法外な額になってな。ガキに狙われ、警察がここを嗅ぎ付けるのも時間の問題。大統領閣下も敵になるだろうとあっちゃ穏やかじゃない。しかし俺達が動けば姫様に嬲られるのがオチだ。この状況、お前ならどうする?」
「うまく港まで辿り着ければ船で逃げられる可能性もあるかもしれねぇ。」アルフレッドの問い掛けにベルンハルトは希望的観測を口にした。
だがその答えは論理的ではない。動けば姫と名乗る悪魔に瞬殺されるに決まっているからだ。
「ベルンハルト。こういう時にはな、敢えて何もしない方が良いんだよ。俺達はしくじったんだ。アヤメってガキを仕留めそこなった時点で運命とやらは結論付けられていた。何とかしなけりゃって気持ちだけで突っ走ると、死ぬぞ?」
「要するに運任せか。」ベルンハルトは笑いながらそう言うとブランデーをボトルから直飲みした。
「機構とやらがガキの奇跡を止め、警察が俺達を捕える。その通りの順序になるのかは分からねーが、それだけが俺達が安全にこの地下から抜け出せるシナリオってやつだ。姫様もそのシナリオならわざわざ俺達を殺しに来ることは無いだろうさ。万が一大統領が先に乗り込んできた時だけ返り討ちにしてやれば良い。ご機嫌はいかがかな?って挨拶してやってよぉ。地獄の道連れには首数が多い方が良いだろうからな?」
「違ぇねぇ。」
「そうすりゃ大統領閣下も自らの罪を暴かれることなく組織に乗り込んで事件を解決しようとした英雄として末代まで崇められるかもしれねぇな?」
2人はいつになく上機嫌に会話を交わしながら笑い合う。
死を待つだけとなった人間に怖いものなど無い。恐れるものなど無い。ただその瞬間から目を逸らすために手近にある楽しみに興じることだけが生きる糧となる。
その時は必ず来る。うまい商売があるという姫様の甘言に乗せられて太平洋の島まで来た結末がこのざまだ。
悪はいつか裁かれると相場が決まってはいるが、あまりに呆気ない。
どこかの国のカルテルのように派手な抗争をするわけでもなく、自分達が派手な暮らしをするわけでもなく、ただ時間が過ぎ去るのを無為に過ごしただけだった。
そう、地下という拠点が与えられた時点で気付くべきだったのだ。
ここが自分達の墓場であるということに。
ソロモンに語られるような悪魔マルティム、またの名をバティンのように人間を国から国へ瞬間移動させるような力があればまた別の結末を辿ることが出来たのだろうが…
あいにく悪魔だったのは自分達をこの地に招いたあの女であって自分達ではなかった。
最初から自分達はただの生贄だ。悪魔が自らの楽しみの為に用意した贄に過ぎない。
「とんだ笑い話だったなぁ?そう思うだろ?お前も。」
「まったくだ。違ぇねぇ、違ぇねぇ!」
自暴自棄ではないが、ただ死を待つのみとなった2人は自らが置かれた状況の滑稽さを嗤い続けた。
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