訳あり令嬢はプロポーズと溺愛から逃げ出したい!!
高岡未来@9/24黒狼王新刊発売
第1話
「可愛いフューレア。どうか私の妻になってくれないか」
玲瓏たる声があたりに響いた。
握られた手が熱い。
突然のことに呼吸が止まった。
「私は生涯きみを愛するとここに誓う。世界の誰よりもきみのことを愛している」
動けないでいるフューレアに、求婚主ギルフォードが畳み掛ける。
女の子なら誰だって夢見るだろう。愛の言葉と真摯な眼差し。
彼の空色の瞳はフューレアを真っ直ぐに射抜き、隠しきれない熱情を携えている。
彼は愛を乞う騎士のように跪き、流れるような仕草でフューレアの手の甲に唇を押しあてた。
まさか、こんなことになるだなんて。今朝、ギルフォードが屋敷に迎えに来たときは考えてもいなかった。
だって、彼とはこれまで幼なじみとして交流を深めてきたのだ。
その彼が、まさか公衆の面前で、フューレアに求婚をするだなんて。
フューレアは身じろいだ。
だが、手を取られているため逃げることも叶わない。
どうしよう。
一体どうしたらいいの。
だって、あなた知っているじゃない。わたしは誰とも結婚するつもりはないって。
結婚をしたら、自分の厄介な身の上に、相手を巻き込むことになる。
生涯独身を通す気でいるのに、こんな風に逃げられない場所で答えを求めてくるだなんて。
それなのに、彼の真剣な眼差しに射止められ、体が熱くなる。
胸の奥に名前をつけることができない不思議な気持ちが湧き出してくる。
これは一体何? 答えを見つけることができないのに、ギルフォードから目を逸らすことができない。
フューレアはごくりと息を飲み、ただじっとギルフォードを見つめることしかできなかった。
* * *
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます