雲の中の記憶
とある彼岸花
第1話 事故と弟
「大丈夫!?」
男の子が病室へ駆け込んできた。
誰なのか思い出せない。私がどんな人間かすら…
「姉さんが事故にあったって聞いて走ってきたよ。」
姉さんというから彼は私の弟なのだろう。
名前が分からないからなんて呼べばいいか分からない。それに、なんて声をかければいいかさえわからなかった。
「あ、姉さん記憶が無いって聞いたよ。ごめん、姉さんからしたら僕が誰か分からないし声かけれないよね。」
悲しそうな顔をする彼に申し訳無さを感じる。彼は私について話してくれた。
「僕は
「謝らないで。」
彼に申し訳無さを感じて何も話さないはずがつい声をかけてしまった。自分のことを話してくれているのだから静かに聞いていようと思ったのに…
「ありがとう。なんか…新鮮だな…。」
「?」
何が新鮮なのかわからずキョトンとしていると陽くんは涙ぐんで話し始めた。
「うちはね、母が昔死んだんだ。今は父さんが再婚しているけど再婚してからは義母と姉さんは仲が悪くて義母は姉さんにご飯を出さないし姉さんも口を利かないしで姉さんが家に帰ってくることも少なくなったし話すことも少なくなっちゃったから。」
「…」
自分が義母と仲が悪いからって陽くんにまで迷惑をかけて…私って最低だな…
「今日は義母は来ないって。父さんはオーストラリアに10日前から出張中。」
「そっか。私って嫌なやつだったんだね。ごめんね…退院できたら義母とも仲良くするから…ごめんね。」
「…!そうじゃない!確かに僕は姉さんと仲良くしたいけど義母とは仲良くしなくていいから。姉さんに酷いことするやつなんて、僕も嫌いだから…」
もしかして、ブラコンなのか?
「あ、もうこんな時間明日も来るから!」
そう言い残して彼は颯爽と病室を去っていった。
私…最悪な人だったんだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます