進行不可バグが起こったので魔王と一緒に原因究明の旅に出ます。

沖田 紫陽花

第1話 勇者、魔王は激怒した

人類と魔族が何千年にもわたり続けてきた人魔戦争は今日で終わりを迎えようとしていた。勇者率いる人界軍は魔王軍の七つの砦を占領し、本境地である魔王城へ総戦力を集結して攻略を始めた

そして、勇者は魔族をなぎ倒し魔王のいる照覧の間へ向かった

後方では、ここまでともに戦ってきた勇敢な戦士なかまたちが血を流しながらも勇敢に戦っている

―ここまで長い道のりだった。北は極寒の地、南は太陽の都まで出向き様々な魔物と戦った。その途中で数多くの戦友に別れを告げることになってしまったが、今日その恨みを魔王にぶつけてこの戦争を―

終わらせる、と言おうとした時だった。照覧の間の扉が勢いよく開かれ中から半ば呆れたような女性の声が聞こえた。

「何分も扉の前で突っ立っていて…最近の勇者は扉の開け方も知らないの?」

声のするを見ると魔王らしき人物が玉座に座りため息をつきながらあきれた目でこちらを見ていた。

見た目は二十歳前後の美しい女性だが、年齢に比べて体の曲線が少ないような気がする…

「…ちょっと、私魔王なのに残念そうな目でこちらを見つめないでくれる!?こう見えても魔族の中では随一の美形なんだから!」

…意外と魔王は察しがよかった。うっかりしていると下心を覗かれてしまうかもしれない。はやめに決着をつけなければ…

「魔王、ここでお前を殺し戦争に終止符を打つ!」

剣を構えるが女性に向けて剣を交えるのは少し気が引ける。だが、ここで手加減をしてしまえば一瞬のうちに殺されかねない。

「手加減は不要よ。あなたをここで倒して攻勢を逆転させるわ!」

両者、剣を構え照覧の間に沈黙が漂う。

勇者の剣に稲妻が宿った瞬間、魔王と勇者は地面を蹴り剣を交える。

照覧の間に火花が散り、剣のきしむ音が響き渡る。

「さすがね。人界軍のリーダーなだけあるわ」

と言いつつ魔王も女性に似合わない豪快な振りと素早いカウンターを繰り返している。

こちらもカウンターをかわして隙のある所に剣を打ち込むが剣撃を撃ち込まれ、両者とも後方に飛ばされる。魔王は飛ばされた衝撃を受け流し立ち上がると剣を構えなおした。しかし、魔王の剣の構えは通常の構えではなかった。

「一騎打ち…か」

顔には出ていないが、体力の限界が近づいているのだろう。その要望に応え剣を構える。

「勇者には死んでもらうぞ!」

「終わりだ、魔王!」

両者とも床がへこむ程強く地面を蹴り剣に力を籠める。

刹那、何が起こったのか両者とも理解ができなかった。剣を振ろうとすると、何か見えない力に阻まれて剣が触れない。だが、床がへこむ程強く蹴った力はいまだに両者を前へと押している。

「――あっ」

気づくのが遅かった。前に押す力を殺しきれずに両者はどしーんと音が出そうなほど強くぶつかる。

「痛ったぁぁぁっ!勇者ぁぁぁ許さぁぁん!」

「それはこっちのセリフだおまぇぇぇぇぇ!」

何が起こったのかわからず、勇者と、魔王は互いに激怒した

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