初めまして、死神です。
菅野アスカ
第1話 死神のお仕事
初めまして。私は死神です。
死神と言っても、人を殺しに行くわけではありません。そういうのは青い馬の方とか、首くくった痩せた方とかのお仕事です。私たちの仕事は、あくまでも「お迎え」。死んでしまった人──場合によっては人ではなかったりしますが──の魂を切り取って、天へと運ぶのです。
運んだ魂はそこで神様や天使様の裁定を受けて、天にいる資格がないものは地獄へ落されます。
天に行ったものも地獄に落ちたものも、時が来れば輪廻の輪に乗ります。その時間が早まるか、遅くなるかの違いです。
徳の高い人間の魂は死の天使様方が運びますから、私たち死神が運ぶ魂はそれ以外。普通に天にいられるものもいれば、すぐさま地獄行きになる者もいます。後者は死を認めずに暴れるものも多いので、結構大変な仕事だったりします。
徳の高い人間なんてそう多くはないので、死神は毎日毎日働いています。でも、私は比較的、「呼ばれる」ことが少ないです。
死神にはそれぞれ担当があって、それに合致する人が付近で亡くなると、死神はそれを直感的に探知することができます。これを、私たちは呼ばれるとか、お呼ばれとか言います。
呼ばれたら即座に現場に急行して、死んだ人間の魂を切り取ります。ですから、私以外の死神は、現場で鉢合わせすることもよくあるそうです。どうやら私と担当が同じという死神はいないらしく、私は死神と鉢合わせしたことはありません。
だって──
「なあ、ひい爺さんが死んだって本当か?」
「ええ。今朝姉さんが見に行ったら、布団の上でぽっくりですって」
「そうか。…ま、当たり前っていえば当たり前だよなあ」
「本当にね。まさか、125歳まで生きるなんて…」
──私は、長く生きた人間だけを運ぶ死神だから。
サクッと切って回収したら、すぐに天へ運びます。下手に抵抗されても面倒なので。
「天使様、新たな魂をお連れしました」
「ああ、ご苦労。それは私が引率するから、もう帰っていいぞ」
「はい」
死神が話すことを許されるのは、下級の天使様だけ。それも、今みたいにお仕事の時だけです。向こうから話しかけてきた場合は除きますが、そんなことめったに起きません。
引率の天使様に魂を渡して、下界に戻ります。死神はずっと天にはいられないのです。何せしょっちゅう呼ばれますから、下界をパトロールしていないと時間がかかってしまうのです。
死神の仕事は、この繰り返し。
代り映えがなくて退屈ではありますが、大切な仕事ですから、心して取り掛かっています。
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