反省と後悔


 俺は先輩とテレシアが撃破した機体を輸送機に運び、戦闘中に発見した少女を保護したが。

 ……結局、俺が発見した少女以外に村の生存者はいなかった。

 どうやら、俺たちが交戦した賊はマナに順応できる体を持つ人間を他国から攫って帝国で売る人攫いの集団だったらしく。


 テレシアが不意打ちした敵の機体に残されていたデータから……奴らは「暁の騎兵団」と名乗って活動している賊だと判明した。

 奴らはかなり大規模な騎兵団らしく、野放しにはしておけない。

 そのため、近々大規模な討伐作戦が行われるらしい。


 また、俺が交戦していた少女が用いた煙幕は未確認の兵装であり、帝国が生産している兵装との類似点が見受けられたため、「暁の騎兵団」は帝国と繋がっている可能性が極めて高い。

 そうなれば、帝国が何らかの目的を持って「暁の騎兵団」に兵装を提供している可能性が浮上してくるため……色々と大変そうだ。

 もちろん、他人事ではないのだけれど。

 ひとまず、そうやって、人生で2回目となる任務が終わったのだ。


「俺は本当に何してんだ……」


 2回目の任務の1週間後、休暇を貰った俺は自室のベットの中で芋虫のように布団にくるまっていた。

 胸の中は先輩やテレシアに対する申し訳なさでいっぱいだ。

 俺は作戦中に失態を犯した。

 それに飽き足らず、先輩やテレシアに迷惑が掛かる事を顧みずに自らの欲求に身を任せて敵と交戦した。


 ……俺はクズだ。

 最低の人間だ。

 先輩やテレシアは人数的に不利な戦いを強いられていた。

 勝利できたから良かったものの、もしも仮に二人が敗北していたら……本当に俺は取り返しのつかない過ちを犯す所だった。


 戦闘前、確かに俺は恐怖を感じていた。

 自らの手で人の命を奪う恐怖と自分が死ぬかもしれないという恐怖を。

 しかし、それらの恐怖は赤髪の少女との戦闘中に命を賭けて戦うことへの愉悦へと形を変えた。


「やっと見つけました。私と同類の仲間を……運命の相手を……」


 赤髪の少女の言葉が脳内で反芻する。

 彼女のこの言葉の意味が分からないほど、俺も鈍感ではなくて……俺は騎士という称号に相応しくない人間かもしれない。

 楽しいという感情のままに戦うのは、卑しい獣のする事だ。

 王国に住む人々を守るために戦う騎士のすることではない。


 自分一人が危険な目に遭うのは構わない。

 だが、俺の行動のせいで仲間である隊長や先輩、そしてテレシアが命の危機に瀕する可能性が僅かでも存在するのならば、俺は……。

 ひたすら考え込んでいると、激しい音を立てて俺の部屋の扉が開かれる。


「後輩くん! 暇なら一緒にお出かけしようよ!」


 驚いた俺が扉の方に目をやると、そこには満面の笑みを浮かべている先輩が仁王立ちしていたのだった。

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