私からあなたへ 【5分で読めるシリーズ】

AIR

第1話  家族

お母さんは嫌いだ。


私が、物心ついてからしばらくのこと。

内の両親がよくケンカしているのを見る様になった。


どっちが悪いのかとかそんなのは分からない。

何より、そこに入るのが怖かった。


知らんぷりしたかったわけではなかったが、仲裁などに入って余計、事を荒立てしまう事で、両親が二人とも離婚してしまう事を酷く恐れた。



私が中学生3年の時、私の恐れていた事が起こる。

両親は離婚とまではいかなかったが、とうとう離れて暮らすことになった。


父も母も、私を引き取ろうとしていたが、私はどうしたらいいのかわからず。

とりあえず、父が家を出ていくことになり、父が建てたこの家に、母が残る形となった。


学校もある為、私もこの家に残ることにした。

そうなってからの生活は、怒鳴り声や喧嘩の声を聴かなくて良くなっていた。

お母さんも肩の荷が下りていたのか、気持ちが前より活き活きしていたのが伺えた。



私もこれでやっと勉強に集中できる。


集中できる。と言っても、どこか違和感。

やっぱり何か違って、寂しい。


いつもなら、この時間くらいにはお父さんが帰って来る声がして、お母さんが返事をする会話が聞こえていた。

それが会話すら聞こえてこない。


家族3人で食卓を囲んで食べた日々が懐かしい。

けど、ずっと食卓には一人足りない。


日にちが経つと、お母さんと二人で食べている時もあれば、私も反抗期なのか、母の誘いを断って、一人で食べている事が多くなった。


そんな私に母はなにも言わなかった。

ただ、御飯だけが用意されていて、勝手に食べろという事なのだろう。

そう解釈するようになっていた。

私も忙しくなって好きにさせてもらっていた。



そんなある日の事、母が急に病に倒れた。

家には私しかいない為、母の看病をしなくてはならない。

これがまた、何故か、なかなか良くならない。


最初はびっくりして母の看病をしていたが、ずっと寝込んでいて。

医者にもう一度行こう、と言っても、母は行こうとしなかった。


私も受験を控えている為、何かと忙しい。


だからだろう。

いつも母がやっていてくれていた、掃除、洗濯、食事をすべて私がやらなければならなくなっていた。

これが私の怒りに変っわった。

受験勉強の時間も削られ、挙句の果てに、家で一日中寝ている母のごはんまで作らなくてはならない。

しかも、病院には一切行こうとしない。

こんな、治す気もなく、一日中寝ていようとする母に、なぜ私がすべてをしなければならないのか。



そして、御飯を持って行けば、いつもごめんねと謝って来る。


謝るなら、病院に行って欲しい。


何故治そうとしないのか。

私がごはんや家事をやっている事が当たり前の様に感じている母に、嫌気がさしていた。


そんな状態を知ってから、父は家に帰ってくるようになっていた。

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