寒空の星

@dsmfoe9

第1話

 願っていても、届かない思いがある。

それを知ったのは、中学生の頃だった。

当たり前に恋をして、なんとなく別れて。

ただの遊びだったんだなって、気がつくのにも遅くて。

自分が見えないくらい、人を信じなくなっていた。


「君はどうしていつも寒がりなの?」

「どうしてって、それが俺だから」


 君はめんどくさそうに返事をする。たぶん、君は私のことをもう気にしてない。

夜の校舎は本当に寒くて、今すぐにでも帰りたかった。


 けれど、1人で教室にいる君を置いて帰るわけにはいかなかった。

「帰らないの?」

「うん。この後、用事があるから」

 おかしいと思った。生徒はおろか、先生までもいない校舎の中で、何を待っているというのか。

 私は興味を引かれる。


「ついてくる? 俺の用事」

「え、いいの? っていうか、早く帰らないと怒られちゃうよ」

「いいって。どうせ、警備員ぐらいしかいないし」

 君はようやく立ち上がって、荷物を片手に歩き出す。

 私と君との距離は以前のままで、絶対に縮まらない。

 もう私たちってこのままなのかな、そう思うと胸が痛くなる。


 屋上にでた途端、とてつもないくらい冷たい風が吹く。

私が身震いしてるうちにも、君はずいずいと前に進む。

「よっし、美冬! 上、見てみろよ」

 何かと思い、君に従って空を見上げると。

 

 星が空を滑る。駆けるというにはいささかノロマで、少しおかしかった。

どうして、君はその目をしているのだろう。

 星は白く緩やかに燃えているのに、君はその死にざまさえ気にしていないように映る。

 ああ、空が高い。

 

きっと、君と私の距離は星との距離にある。

遠く離れている、けど、ちゃんと光ってほしい。

君が見つめてくれるなら、私も。

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