2話
「今度のお盆に江ノ島に行きたい」
久しぶりに連絡が来た高井は挨拶もなしに要件を伝えてきた。
私の周りは、挨拶する間もなく要件を言ってくるがそんなに忙しいのか…?
「突然何?」
「江ノ島の怪奇現象を調べに行きたい。」
話が噛み合っている気が全くしない。
高井は江ノ島の怪奇現象について語り始めた。
まとまらない内容を理解しようと話を聞いている間に時計の長針は一周していた。
「まとめると、江ノ島近辺の海で起こっている子供失踪事件は神隠しだから、調べ行きたい…と言うことでいいかな?」
「うむ!」
とても良いお返事を貰った。
いや、え?
「行けば良いじゃん。いってらっしゃい。子供と間違えられて失踪しないようにな。」
早口に行きたくないと言う言葉を遠回しに伝え、電話を切ろうとする。
それを察したのか、高井は意義あり!と叫んだ。
「神隠しだよ?神隠し!行かないなんて事はないよね!だって怪奇現象だよ。一体どの神がなんの目的で神隠ししているのか。気になってしかたないよね!ロマン!ロマンがあふれるよ。」
「うるせぇ……」
声高らかにロマンを語りだす。
全く持って理解ができない。
何なら、不謹慎発言でツブヤイター炎上しろと心の中で唱えておく。
江ノ島の失踪事件
最近ニュースで見ない日はない。
1ヶ月前から江ノ島の近海、片瀬東浜海水浴場と片瀬西浜鵠沼海水浴場で頻繁に10歳未満の子供が行方不明になっている事件だ。
土日に必ず1人は行方不明になっているため、現在の失踪者は10人になる。
不可解な事に、本当に突然消えるのだと言う。
一緒に話していたはずなのに少し目を離した隙に消えているという証言ばかりだとニュースでは行っていた。
目を離したのは1秒にも満たない時間だ。
ジュースに目を向けた、時間を確認したその一瞬で自分の子供がいなくなるのだ。
密かに、ネット上では神隠しと言う噂が流れている。
事故や誘拐の線で警察が調査しているも、誰一人として居なくなった子を見かけた人も居なければ、捜索して誰一人として見つかっていない。
痕跡が一切ないことから、捜査は難航している。
海水浴場を一時休止する話も出ているが海に入れるのはせいぜい残り半月……
更にはお盆休みは海水浴場の売上にも関わる大事な時期だ。休止は無いだろう。
車で江ノ島近辺を走るが、海水浴場客は減る様子を見せない。
自分の家族は大丈夫という過信なのか、私には分からないがお盆は例年通りの人混みになるだろう。
「大丈夫?凄い考え込んでる声が聞こえたけど…」
知らず知らずのうちに唸り声をあげていたようだ。
考え出すと唸り声を上げてしまうのは、癖だ。
それが分かっている東は、その状態の私を放っておくし高井は心配する。
これは、高校時代から変わらないやり取りだ。
「んー。大丈夫。」
「そう?なら、いいけど…事件は勿論だけど、久しぶりに会いたいなぁ…なんて。」
高井は小、中、大学と友人がうまく作れず高校で私と東が初めてできた友人だと言っていた。
ここで断る方が良く無い気がしてきた。
最近溢れることが多いため息を飲み込み、見えもしない電話の相手に笑顔をむける。
「わかった、付き合うよ。東も一緒に」
東、お前も道連れだ!!!
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