第1話

「……また懐かしい夢を」


 電車に揺られているうちに、いつの間にか寝てしまっていたようだ。グッ、と全身に力を入れて体を伸ばすと、心地よくてなんとも言えない感じが全身に浸透する。


「………ふぅ」


 首を動かすと、ポキポキと音が鳴る。それに合わせて首にかけている銀色のロケットが太陽の光を浴びて煌めいた。


「……もうすぐ会えるんだな」


 ロケットを開けると、そこには色褪せた一枚の古い写真。父さんが買ったにも関わらず、全然使わなくなったデジタルカメラを持って行って二人で撮った写真。


 ーーー元気にしているだろうか。


 俺はーーー浜崎透は、高校の入学を機に、10年前に離れた故郷へと戻ってきた。


 理由は、再会を約束した女の子と出会うため。


 もちろん、ちゃんと自分の成績とかを加味して決めたし、両親も知らない土地よりかは少しは知っている土地の方が安全という理由で、ひとり暮らしも許可してもらった。


 歳離れた妹は寂しそうにしていたが……。


「……ん?」


 ポケットから振動音が伝わってきたので、何事か?と思ってスマホの電源を付けた。


 そこには、一つのメッセージが来ていた。


「……おいおい、みのりの奴……」


 自然と手を頭に持って行ってしまった。そこには、ただ簡潔に『お兄ちゃん寂しい』と送られてきた妹からのメッセージ。


 俺の妹は七歳も年齢が離れており、誇らしいことに、俺を頼りになるお兄ちゃんとして認識してくれている。


 そしてどこで距離感をミスったか、小三になってまで『お兄ちゃんと結婚するのー!』と両親や、みのりの友達に言いふらしているらしく、重度なブラコンと化していた。


 まぁ別にその事はどうでもいい。どうせ言っているのは今だけだし、こうして距離を置いておけば、自然とブラコンも治るだろう。治らなくても反抗期でそんな気持ちは消え去るだろう。


 まぁ?それでも妹には慕われたいとは思うがな。


 とりあえず、みのりには今電車だから、マンションに着いたら連絡すると送って…………よし。


 何やら振動音がしたが、一旦無視。既読つけると誤魔化せないが、既読つけなければいくらでも言い訳できるからね。


 電車の中で電話はマナー違反だし。後一時間くらい我慢してくれ、みのり。


『~♪次は、晴山、晴山~』


「ん」


 目的の駅が次なので、隣に置いておいたリュックサックを背負い直してから立ち上がる。車窓から見える景色は10年前と酷く変わってしまった。


 そのまま見続けていると、田んぼが目に入る。そこには、一つの真っ赤な鳥居を幻視した。


「……………」


 目に映るのは、鳥居の向こうでこちらからは顔が見えないように佇むきつね色の髪の毛の少女。その手前には、一人の少年がその少女をじっと見つめていた。


 次に瞬きした時には、その景色は一瞬で消え去った。


 ……全く、俺はどれだけあの時の記憶のことを大事に思っているのだろうか。


『ドアが開きます。ご注意ください』


 ピンポーンと音がなり、目の前のドアが開くと、俺は10年振りに帰ってきた故郷へと足を踏み入れた。


「………変わったな」


 後ろから降りる客の邪魔にならないように、少し歩いてからグルグルと周りを見渡した。


 10年前は、小さな駅で、駅のホームから街の様子が見えていたのだが、今では大きな晴山駅のせいで、街の様子が見えない。


 ほんと、10年で大きく変わった。


 それでも、どことなく懐かしいと感じるのは、この街の空気を覚えているからか。


「……行こう」


 このままだと、懐かしく感じすぎてしまい後30分は余裕でここに入れる。まだ駅のホームだぞ?


 俺は、一旦懐かしむ気持ちを抑えてから駅から出た。


 駅内には、コンビニやら、カフェやらが出来ており、そこでの変化にも驚いたが、駅を出てからさらに驚いた。


「……ぜんっぜん違うな……」


 俺の記憶にある景色とは全く違う。昔は、駅の周りなんて何も無くて、少し歩いたところに商店街があった程度なのに、今ではちょっとしたショッピングモールやら、ビルが立っていた。


「……あ、この噴水……」


 でも、駅から出て目の前にある噴水だけは記憶と合致した。この晴山市はるやましを代表する山である、晴山を模したオブジェクトだ。山頂から勢いよく水が吹き出ていた。


 なんか、一度見覚えのあるものを見たら、ちょっとこの街を散策して、また見覚えのあるものでも探そうかなぁと思う気持ちに、今は一旦蓋をしておく。


 出来れば、それはあの子と二人でーーーーー。


 俺は、メモを手にマンションへと向かった。





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ソウルワーカーとかソウルワーカーとか同人ゲームやってたら更新遅れました。

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