第10話 朝からお姉さん

翌日、日曜日の朝。俺は何年かぶりの、目覚めが良い朝を迎えた。ベットから出て、洗面所に向かおうとして時、


ピンーポン。

と、インターホンが鳴った。こんな、朝から誰だ。と、思いながら、扉を開けたら、


「おはよう、和樹くん」

「え、ゆ、雪森さん、、!」

そこには、雪森さんが立っていた。相変わらず、綺麗すぎる。じゃなくって、


「ど、どうしたんですか、こんな、朝早くに?」

「どうしたって、朝ごはん、まだでしょう?」

と、可愛く首を傾げる、雪森さん。そうだった、昨日の夜、雪森さんとあんな事やこんな事をしたんだった、、(ご飯を作ってもらい、膝枕してもらっただけ)。そんでもって、これからも面倒見るって言ってたっけ…


「確かに、まだですけど。あ、あの、別に大丈夫ですよ、毎日、朝からそんな、、」

「ダメです。お姉さんがいないと、和樹くん、また、カップ麺とか食べるでしょう?」

「まあ、確かに…」

正しく、その通りだ。洗面所に向かった後で、カップ麺を探してただろうーーって洗面所?


「あ!すみません!僕、まだ、朝の準備もしてませんでした、今、顔洗うんで、ちょっと待っててくれまー」

「お邪魔します〜」

気づいたら、雪森さんはもう、家にあがっていた。


「ちょ、ちょっと、雪森さん、、」

「あ、和樹くん、ね・ぐ・せ、付いてるよん」

「今、起きたばかりなんで、、」

「昨日はぐっすり眠れた?」

「お、おかげさまで、はい」

「ふふん、良かった。じゃ、顔、洗っておいで。なんなら、お姉さんが洗ってあげよっか?」

「じ、自分で出来ます!」

と、子供のように洗面所に走って、逃げてしまった。雪森さんは絶対、いたずらっぽい顔で笑ってるに違いない。



洗面所で、自分の顔を洗ったり、歯を磨いたり、寝癖を直しながら、考えていた。なんで、雪森さんはあんなにも俺に構うのか。最初に会ってからの二週間は特に何もなかった。そんな事を考えながら、リビングへと向かった。


焼けたパンの匂い、ジュージューとベーコンが焼ける音、まさに、理想的な朝の雰囲気と化した、俺にキッチンに雪森さんは朝食の準備をしていた。


「あ、和樹くん、ちょっと待ってね!もう、出来るから」

「は、はい」

その、数分後、テーブルに皿を並べる雪森さん。


「はーい、出来たからおいで〜」

「あ、ありがとうございます。 ん?」

俺は何かがおかしいと思った。


「雪森さん?」

「え、な、何かしから?」

明らかに動揺している。「え?私、なにも悪い事してません?」と言った顔だ。


「なんで、皿が隣合わせなんですか?向かいにも椅子はありますよね?」

そう、つまり、雪森さんの皿と俺の皿がぴったり隣同士だ。


「な、なんでって…だって…」

初めて、あの、クールな雪森さんがモゾモゾしている。


「だって、和樹くんの隣に座りたいんだもん。ダメ?」

卑怯だ。いつは、年上のお姉さんっぽいのに、急に、そんな上目遣いで言われたら、ダメなんて言えない。


「べ、別に良いですよ?」

「やった♡」

と、可愛く笑いながら、雪森さんは席に座った。俺も続いて、隣に座った。相変わらず、緊張してしまう。


「「いただきます」」

二人合わせて、そう言い、食事を始める。

雪森さんが用意してくれた朝食は、焼いたパンにたっぷりのバター、軽く焦げ目が付いたベーコン、綺麗な形をした目玉焼きとシャキシャキな野菜たちと言った、なんとも健康に良さそうな朝食だ。


「雪森さん、全部、凄く美味しいです!」

「良かった!」

どれも美味しく、昨日みたいに感想を忘れそうになったが、今回はちゃんと言えて、ホッとした。


食べ終わり、食器を片付けていると雪森さんが、


「和樹くん、コーヒー飲む?」

「あ、ごめんなさい、僕、コーヒー苦手で、、」

「そうなんだ」

そう、俺は昔からコーヒーが苦手なのだ。大人になれば、飲めるだろうと思っていたが無理だった。

食器の片付けも終わり、ソファーに座ると、雪森さんはまだ、キッチンでゴゾゴゾしている。


「はーい、和樹くん、これ。」

「え?」

と、雪森さんがコップを出してきた、


「コーヒーが苦手だから、コーヒー牛乳を用意しました」

「ありがとうございます!コーヒー牛乳は好きです!」

「和樹くん、子供みたいで可愛い」

「あんまり、嬉しくないですね、、」

「ふふ、よいっしょっと」

雪森さんが隣に座ってきた。


「やっぱり、隣に座るんですね?」

「もちろん♡」

まあ、少しは慣れてきたから、俺も対して何も言わなかった。

雪森さんが入れてくれた、コーヒー牛乳を飲んでいると、


「和樹くん、そろそろ、抜いてくれる?」

「ンッ!ゲホゲホ!」

「大丈夫、和樹くん!?」

「だ、大丈夫です。今、なんて言いました?」

「え?だから、そろそろ、抜いてくれるって言ったけど?」

やはり、聞き間違いではない。


「い、いや、それはちょっと、、」

「うん?なんで赤くなってるの?あ、、ははーん、何を想像してるのかなぁ、かずくん?」

雪森さんもほんの少しだけ顔赤らめならが、いたずらっぽい顔で言ってきた。てか、誰だよ、かずくんって。


「もう、可愛いな、よしよし。私が言おうとしたのは、そろそろ、敬語を抜いてくれないか?って事だよ」

「なんでそう、まぎらわしい言い方するんですか!」

「だって、和樹くんの反応が可愛いだもん」

和樹くんに戻ってるし。


「ま、まあ、ともかく、敬語ですか、、僕、26なんで多分、雪森さんの方が年上ですよね?」

「私、今、27歳だよ。一つ上だけど、和樹くんとはもっとも〜っと仲良くなりたいから、タメ口でいいし、和樹くんだったら、そ、その名前でだって呼んでいいだよ? 」

ちょっと待って、雪森さん、なんで自分で言って、照れてるの?キャラ崩壊してるよ?まぁ、可愛いからいいか。


「ま、まあ、すぐには無理かもですけど、そうします。」

「うん!やった!和樹くんは偉いからい〜っぱい、いい子いい子してあげる♡」

「い、いいですよ、別に…!」

「はーい、お姉さんの胸においで!」

「だからいいってッーー」

「ほーら、いい子いい子。」


結局、その後、たくさんいい子いい子してもらった。

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