第10話 理想と現実
スーパーロリ教師(?)、
「……やぁ、
うん、頭の使い過ぎでよぼよぼの爺さんみたいになった
つーか、こいつと飯食いに行くのか。なんか普通に仲良くなってね? 当初の予定じゃ、もっと普通な奴と友達になって普通に学生生活を満喫するつもりだったんだけど。まぁ、他につるむ奴もいないし、しょうがねぇか。
「別にいいよ。確か隣の棟の一階が学食だっけか?」
「その通りだ……この老いぼれも連れて行ってくれ……」
「はいはい」
御巫を乱暴に引きずりながら学食を目指す。俺達一年の教室は学習棟の五階に教室があるから、学食までは結構距離があるんだよな。二年は四階、最高学年である三年は三階にあるから、学生寮と同じで学年が上がれば移動も楽になるってこった。ちなみに、二階は職員室で一階には生物室やら化学実験室やらがあるらしい。まだ授業で使ったことがないからよく知らないけどな。
三階にある渡り廊下を通って集合棟へ。ここは文字通り色んな施設が集まってる。食堂に購買、視聴覚室に展覧室。シャワー室付きのジムまで完備してるとなれば、ちょっとしたアミューズメントパークだ。改めてえらい所に入学しちまったと思うよ。
「うわ……めっちゃ混んでるな」
たどり着いた食堂は生徒達でごった返していた。そりゃそうか。時間をずらせる朝食や夕食と違って、お昼はみんな一斉に来るんだもんな。仕方がない事とはいえ、これはかなりげんなりする。
「うげぇ! こんなに並んでんのかよ!! ……あっ、そうだ」
御巫がなにか閃いたように手槌を打った。予言しよう、確実に名案ではない。
「俺が席とっとくから颯は飯よろしくな!」
やっぱりな。結局俺を生贄にして自分だけ楽しようって腹じゃねぇか。そうは問屋が卸さねぇぞ。
「はぁ? ちょっと待てふざけんな。俺だって席をとっとく方がいいに決まってんだろ。ここは公平にじゃんけんで決めるぞ」
って言ったんだけど、「ちょ」の部分で既に御巫の姿は消えていた。動きが機敏過ぎる。忍者かよ、あいつ。くそったれめ。
仕方がないから、心の中で悪態をつきつつ並んで待つこと二十分。やっとの思いで二人分の昼飯をゲットし、ダラダラしているチャラ男を見つけ、不機嫌さマックスで奴の前にお盆を置いた。
「おせーぞ、颯。昼休みが半分近く過ぎてんじゃねぇか」
「ざけんな。今度はお前が並べ」
あの行列の中、二人分のお盆を持って進む俺の気持ちがお前に分かるか。俺はムスッとしながら箸を掴むと、すきっ腹にどんどんとご飯を流し込んでいく。昼飯を確保するのにかなりの労力を消費するとはいえ、やっぱりここの飯は美味いな。しかも、これが無料だって言うんだからまじで半端ないだろ。この点に関してだけは本当に皇聖学院に入ってよかったって思えるよ。
「はぁ……なんか俺の思ってた感じと違うぜ……」
ハンバーグを箸で突っつきながら御巫が情けない声を上げる。
「思ってた感じってなんだよ?」
「いやだって俺達はギフテッドだぞ? 言っちまえば選ばれた学生ってわけだ。それなのに他の高校と受けてる授業大差ねぇだろ? もっとこう……ギフテッドらしい授業ってやつを期待してたんだよ、俺は」
「あー……なるほどな」
「互いのギフトをぶつけ合って火花を散らすようなさぁ……心が
「まぁ、言いたいことはすげぇわかる」
実際、俺も同じようなことを思ってたしな。え? って事は、俺は御巫と思考回路が似てるって事? ごめん、それ立ち直れないわ。
「それなのに
ため息を吐きながら御巫がかったるそうにハンバーグを口へと運ぶ。分かりみが凄すぎて辛い。
「でも、そういう事なら次の授業は期待できるんじゃねーの?」
「あ? 次の授業ってなんだよ?」
こいつ……美人教師とかの情報はしっかりと持ってるのに、次の授業が何なのかとか知らないのかよ。とは言っても、阿久直の事もあるし、御巫の情報は割と当てにならんけどな。
「具体的に何をやるのか知らねぇけど、時間割には基礎訓練って書いてあったぞ?」
「基礎訓練……」
それまで死にたいのような顔をしていた御巫の顔に、見る見るうちにやる気が満ちてくる。
「おい、颯。さっさと飯を食うぞ」
そう言うや否や、御巫はおかずをがっつき始めた。随分とまぁ単純な奴だな、おい。いや、気持ちは分からんでもないんだけどさ。基礎訓練なんて普通の高校の授業にはないはず。御巫じゃなくても期待せずにはいられないってもんだ。俺にだってギフテッドとして強くなりたい理由ぐらいあるんだよ。
後半はほぼほぼ味なんてわからない速度で昼食を終わらせ、早足で戻っていく。気持ちは図工の時間を前にした小学校低学年。絵を描いたり、段ボールで何か工作したり楽しかったなぁ。そんなワクワク感が全身を駆け巡っているわ。
「……ん?」
教室に入って一番最初に目に飛び込んできたのは黒板に書かれた文字だった。
『体育着に着替えて実習棟の前に集合』
おぉ……こいつは期待通りの授業が行われるかもしれない。体育着に着替えるという事は体を動かすという事。つまり、ギフトを高め合うための戦闘に備えた訓練をするに違いない。
「……なぁ、颯?」
「……あぁ、御巫よ」
もはや、言葉は不要。俺達は互いに頷き、ロッカーからジャージを取り出すと、男子更衣室へと足を運ぶ。そして、目にもとまらぬ速さで着替えを終えた俺達は、そそくさと実習棟の前に向かった。
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