貴族令嬢は絆されない!

束白心吏

第1話 『聖女』と噂話

──異世界から聖女が君臨なさる。



 そんな『噂』が広がったのはいつ頃だっただろう。

 私が学生として勉学に励んでいた頃だろうか? 正確な時期は知らないし、そのことを侍女達に聞く気もなかった。

 そもそも貴族というのは学生であってもとても忙しい。ホント失礼な発言をすると、早く没落しないかな我が家……と寝る前に思うくらいには大変である。幼い頃から礼儀作法はもちろん乗馬や学問、護身術なんてものも無理やりやらされて、私は頑張って覚えたのだ。誰か私を褒めてくれ。

 そういう意味では貴族に生まれたことを恨んでいる。スパルタ過ぎるというのもあるし、地位が下の貴族からは媚び売られるし最悪の場合は理不尽に恨まれるし……誰だよこんなクソ制度作ったやつ。身分差別反対! さっさと貴族制撤廃しろ!

 ちなみに話を戻すけど、最近は房中術というものを教わっている。同性の教師だから襲われることはないと思うけど、視線が気持ち悪いというのが本音。舐め回すような視線がおじさん臭いけど、教え方は上手いから変えることもできないという悲しさ……はぁ。女は男の慰みものじゃねえっての。男尊女卑とかざっけんな! 男女平等を主張する!


 まあとにかく、貴族は至上最悪にクソッタレな社会ってことが一割でも伝わったなら幸い。更に私のような貴族は政略結婚もさせられる……というか産まれる前から婚約者が決まっているなんてザラにあるような時代である。まあ私の場合その立場が危うくなる『噂』が『聖女の噂』と共に流れているので、少々お家のお顔を伺ってる最中なのだけども。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る