第8話 とらんすふぁーすちゅ~でんと

 校門の前でウロウロしている赤い傘。

「会計君は元気ね」

「バカは雪を見ると、はしゃぐんだよな~」

「あぁ、それで夏男も朝から、はしゃいでバスに乗り込んでいたのか…どうりで」

 秋季が納得いったという顔で頷く。

「あっはっはー」×3

 バカはバカにされても気づかないものだ。

 呑気に窓から校門の様子を眺めている生徒会の面々。

「おっ、出てきたようだな会計」

 秋季が嬉しそうに身を乗り出す。

「あっ‼ 転びましたわ」

「ざまぁ‼」


「頑張れ‼ 会計‼」

 窓をガラッと開け秋季が大声で会計を応援する。

 それに続いて春奈と夏男が囃したてる。

 実に嬉しそうだ。

 とにかく人を、からかうことが好きなのである。

「うるさいんだよ‼ アンタらは‼」

 そしていつも、おちょくられている小太郎は走った。

 薄く雪が積もった外を打ち履きのまま、そして2度転んだ。


 赤い傘がクルッと反転して小太郎と向きあう。

「キミ‼ ………」

 言葉に詰まった小太郎。

 そう、何を言えばいいのか?

(ゾンビじゃないよね?)

 聞きたいことが多すぎて、何て声をかけていいのか解らない。

「告白っちゃえよ‼」

 夏男がヒューヒュー騒いでる。

(窓から落ちりゃいいのに‼ というか落ちろ夏男‼)

 小太郎は3階の窓で騒いでいる夏男をチラッと睨んだ。

 夏男は眼鏡をかけていた。

(あぁ…だから女の子だと解ったのか…)


 バカは放っておいて小太郎は赤い傘の女の子の手を引いた。

「ようこそ‼ カレイド高校へ」

「えっ?」

 いつの間にか小太郎の背後で立っいた秋季がニコッとほほ笑む。

「転校生の四宝堂しほうどう 冬華とうかです‼ よろしくお願いします」

 ペコッと頭を下げる。

「えぇ?」

「とりあえず、手を離していただきたいです‼」

「えぇぇ…はい…」

 色々、聞きたいことが若干増えた小太郎


 生徒会室でポタージュをアフアフ噛むように飲んでいる冬華。

 小柄な美少女ではあるが、その言動、所作の全てで理解できる。

(あぁ…やっぱりコッチ側の人間なんだ)


「ふぅ~っ…」

 飲み終わった冬華がコトリとカップを机に置く。

「転校生と言ったね冬華君」

 基本、年下は君付けの秋季。

「はい。本日よりココに通うことになりました」

「あの…転向とか誰が決めるんですか?」

 小太郎が数々の疑問の中から、ようやく一つ目の質問を投げかける。

「誰? 自主的です‼」

 真顔でハキハキ答える冬華。

(自主的な転校ってあるんだ…)


 時代の変化を肌で感じて、ブルッと身震いした小太郎。

「まぁ、よろしくお願いいたしますわ」

 受け入れ早いな…


 この時代に求められるのは適応能力である。

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