マリッジカクテル、 ネオンライトの中で
春嵐
01
仕事帰り。
いつものバーに向かう。駅前。ネオンの灯り。
特殊なネオンで。街は明るいのに、星空は見える。上を眺めながら、なんとなく歩く。
彼は、今日も来ているだろうか。
バーの扉を開けて。いつもの席へ。
座る。彼は、来ていなかった。今日は、ひとりで呑むのか。いつも通り、甘めのカクテルを頼む。気まぐれ味。いつも、その日の気分に則したものが出てくる。
いちご味だった。甘酸っぱくて、なのに、すっきりしている。
恋人を待つ、乙女の気分。
「乙女か」
20後半にもなって、乙女はさすがにないな。もう、いい年だと思う。周りも、どんどん結婚していく。
自分だけが、普通ではないという、強迫観念みたいなものにとらわれていくのを、感じる。普通の生活。普通の人生。普通の仕事。普通の恋愛。とにかく、すべて、普通にしなければならない。そういう、なにか、そうしなければならないようなものがある。
いちご味のカクテル。
なくなる前に、彼が来たりしないだろうか。
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