第21話 記憶とはつまり間違いが生じる可能性もある

小路小豆。

俺の過去を知っているかも知れない少女だ。

真面目に働いているそんな彼女を見ながら.....俺は目の前の柚を見る。

柚はガツガツとパフェを食っていた。

その中で俺は顎に手を添える。


「ふーむ?」


「お兄ちゃんどうしたの?同級生さんの事?」


「.....そうだな。同級生さんの事だ」


だけど悩んでいるのはそこでは無い。

もしかしたら昔の事を知っているかも知れないという事だ。

俺は期待値を持ちながらモチベーションを上げつつ。

待っていると.....大石がやって来た。

紙をまた置いていく。


「.....?」


(隙が無くてごめんね。あの子、結構働き屋さんだから)


「.....」


俺は大石に手を横に振る。

それから構わないとメッセージを送ってから。

コーヒーを飲み始める。

まあこんな味だろうファミレスってのは。


「って。あ。無くなった」


「ドリンクバーで入れてきたら?」


「そうだな」


立ち上がってドリンクバーに近付く。

するとその近くに居た小路が俺に寄って来た。

そしてモジモジし始める。

な、何でしょう?

思いながら小路を見る。


「久しぶりだね」


「.....あ、ああ。お前この町に居たんだな」


「うん。居たよ。.....あ。みんな元気かな?中島ちゃんとかみんな」


「そ、そうだな。元気だぞ」


今エロゲを買いに行っているとは流石に言えないが。

思いながら苦笑いで小路を見る。

小路は、そうなんだね、と笑顔を見せた。

太眉ながらも美人の顔で、だ。

考えながら咳払いをする。


「小路。ちょっと聞きたい事がある」


「何かな?」


「お前さ、煎餅缶を埋めたらって提案してくれたじゃないか。あれって.....誰と一緒に埋めたか覚えているか」


「.....あ、えっと.....その事なんだけど.....」


と思ったら小路が、店員さーん、と呼ばれた。

小路は、後でね、とそのまま呼んだ方向に走って行く。

俺は、まあ仕方が無いか、と思いながらそのままコーヒーを入れてから席に戻る。

すると柚がニヤニヤしながら俺を見ていた。


「な、何だよ柚」


「いやー。良い恋ですね?お兄ちゃんさん?」


「恋じゃねーよ.....いやいや」


「そうなの?恋の様に見えるけど。アハハ」


「小路はそうは思って無いさ。でも.....」


でも?、と聞いてくる柚。

俺はそんな柚に、アイツはマジなキーパーソンだ、と答える。

柚は?を浮かべて俺を見てくる。

そうキーパーソン。

もしかしたら運命が変わるかもしれないのだ。


「もしかして大切な女の子の事が分かるの?」


「.....ああ。もしかしたら、だが」


「.....じゃあ大切だね」


「.....ああ。だからキーパーソンなんだ」


覚えていたら言うんだけどね、と柚は少しだけシュンとする。

俺は、気にすんなよ、と声を掛けた。

それから窓から外を見る。

そんなもんだからな、人生ってのは。


「柚は頑張ってくれてる。だから.....絶対に無駄じゃない」


「.....お兄ちゃんは優しいね」


「.....これでも年上だからな」


「.....だね」


そういやパフェくれよ。

と俺は匙を持つ。

だが柚は、やーだ、と言いながらパフェをくれなかった。

ケチ臭いな、俺が金を出すのによ。

思っていると小路がやって来た。


「長谷川君」


「.....おう。小路」


「.....えっとね、煎餅缶を一緒に埋めた人は知ってるよ」


衝撃の告白だった。

俺は直ぐに聞き返す。

マジで?、と言いながら、だ。

すると小路は俺に向いてきてから頷いた。


「.....でもね。それは中島さんじゃないよ」


「じゃあ誰だ?山城か?」


「.....山城さんでも無いと思うよ」


「.....え!?」


煎餅缶を埋めた女の子の特徴だけは知ってる。

泣きぼくろがあってね、黒髪の長髪だった。

それでワンピースを身に付けていたよ、と答える。

名前は知らないのか?、と尋ねるが。


「.....私ね、実はあの後にリンゴ熱で高熱を出してね。肝心な部分の記憶が無いの」


「.....記憶が無いのか」


「でも大きなヒントは知ってるから.....大丈夫」


「そうか」


しかし中島じゃ無くそして山城でも無い?

どうなっているのだこれ?

思いながら.....俺は首を傾げる。

何がどうなっている。


「小路。それ以外に知っている事は」


「うーん。.....でもドジっ子だったね。確か」


「.....そうなのか.....」


ドジっ子で当て嵌まると言えば。

やはり山城なんだが.....黒髪ではない。

どうなっている?

何が間違っているのだ?


「でもここで出会ったのも運命だから.....人探し手伝うよ」


「.....そうだな。助かる」


「熱を出したから記憶が正しいかどうか分からないしね」


「.....疑うわけじゃ無いけど.....そうだもんな」


「.....うん」


さてと。

忙しくなりそうだな。

黒髪の長髪に.....泣きぼくろ?


そんな知り合いはこの近くには居ないんだが。

本当に.....何がどうなっているのか。

思いながら俺は首を傾げた。


「小路。お前の記憶はまだそれ以外無いのか?」


「.....うーん。ドジっ子以外だと.....そうだね。.....確かだけど頭が良いって聞いたよ。でもどこまで頭が良いのか分からないけど」


「.....うーん.....」


悩みが多いな。

さて、どうするべきか。

思いながら俺は顎を撫でる様に顎に手を添えた。

それから考え込んだ。

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