第20話 過去の人物とはつまり大切な人の名前を知っているかもしれない

中島には夢遊病がある。

しかしながら.....それは心臓が止まりそうなものだった。

俺は心臓をまだバクバクさせながらベッドで寝る。

因みに中島は妹の部屋で寝ている。


『えへへ。いっしょだね』


「.....ぐぁ!畜生め!!!!!」


夜中の2時。

頭を、うおおおお!!!!!、と思いながらガリガリガリガリと掻く俺。

駄目だ.....全然頭からあの可愛さが離れない。


どいつもこいつも何であんなに可愛いんだ畜生め。

俺は息を整える。

そしてフーッと言いながら目を瞑ってから羊を数え始めた。

羊が1匹、羊が2匹.....。



「.....ん?.....朝か.....」


ちゅんちゅんとさえずりが聞こえる。

俺はゆっくり目を覚ましながら起き上がる。

完全に寝不足だ。

思いながら俺はゆっくり起き上がる。

そして目の前を見る。


コンコン


「お兄ちゃん。朝だよ」


「.....お、おう」


「?.....どうしたの?」


キョトンとする柚。

いや、何でもない.....、と赤面で口元を触る俺。

そして立ち上がる。

俺は柚に聞いた。


「中島は」


「起きたよ。それでゲーム屋に行くって」


「.....またアレか.....でも.....」


「アレって何?」


お前は知らんでいい、と俺は否定する。

それから、えー、と頬を膨らませる柚に、出て行ってくれ服を着替えたい、と言う。

柚は、分かったよ、とドアを柚は閉める。

そしてバタバタと下りて行った柚の足音を聞きながら俺は服を着替えだした。



さて、中島はゲーム屋に行ったそうな。

じゃあ俺はどうすっかな。

日曜日だしな。

と思いながら取り合えずと言わんばかりに外に出ようとした。

その時に、あ。お兄ちゃん、と柚がやって来る。


「どうした?」


「あのね。もし良かったら暇ならファミレス行かない?」


「.....え?どういう事だ」


「お兄ちゃんとデート」


「.....嘘は良くない」


そうだね。てへぺろ、と舌を出す柚。

それがまた可愛らしかった。

俺は溜息を吐きながら、じゃあ暇だしファミレスにでも行くか。

と柚を見る。

柚は、うん、と頷きながら俺の手を握ってくる。

これは柚の精一杯の甘えだ。


「お兄ちゃん。今日はお金は大丈夫?」


「お金は貯めた分があるから大丈夫だ」


「成る程。分かった。じゃあ行こうかな」


そして俺達は家を出る。

それから玄関に鍵を掛けた。

母さんと父さんは買い物に出掛けている為、だ。


俺は柚を見る。

柚は、こうやってお兄ちゃんと仲良く歩くのって私達だけだろうね、と柔和な笑みを浮かべながら俺を見てくる。


「まあ普通の兄妹は仲が悪いからな」


「アハハ。だよね」


「そういえば今日は部活は無いのか」


「無いよ。部活は.....うん」


口角を上げる柚。

バレーボール部員でしかも補欠じゃないから.....忙しないのだが。

今日は休みなんだな。

俺は考えながら.....ファミレスを目指して歩き出す。

すると途中で柚が俺を見てきた。


「お兄ちゃん。中島さんに告白されなかった?」


「ブッファ!!!!!」


「あ、されたんだね。アハハ」


「いやいや柚!何で知っている!?」


当たり前だよ。

隠しきれてないよ中島さん。

中島さんの様子で知ったかな、って感じ。

と笑顔で俺を見てくる柚。

俺は恥ずかしさに口元を押さえながら、そうか、と呟く。


「.....お兄ちゃんを好きになるって中島さんも山城さんも見る目あるよね。優しいもん」


「.....お前ならどっちを応援するんだ?恋」


「.....恋に関して?.....私はどっちの味方でも無いよ。だって.....私は所詮は妹だからね。決める様な態度は出来ないし年下だし」


「.....そうか。相変わらずだな」


だってどっちも良い子だもん。

と柚は人差し指を立てながら俺に説明してくる。

俺は、だな、と穏やかに答えながら。


そのまま15分ほど掛けてファミレスにやって来る。

何だかそのファミレスがかなり綺麗になっている。

目を丸くする柚。


「改装されたんだったね。確か」


「.....そうだな。綺麗になってるな」


「これなら期待出来そう。色々と」


「そうだな。確かにな」


互いに顔を見合わせながら頷く俺達。

そして店内に入る。

店員が早速とやって来た。

俺は2人です、と説明しながらそのまま案内される。

そして座る俺達。


「パフェ〜♪」


「.....ハハハ。無駄無く食えよ」


「うん。アハハ」


そうしていると。

店員が水を運びにやって来た。

その店員に俺は頭を下げる.....ん?

そそくさと去って行く店員。


どっかで見た様な顔だな。

あの.....顔立ちの整った少しだけ眉の太い少女。

だけど全然嫌味にならない顔立ちだ。

あれ?どっかで見た様な。


「お兄ちゃん?どうしたの?」


「いや。同級生だった奴が居た様な?」


と思っているとまた店員が来た。

ニコニコしているその顔を見て驚愕する。

何故かといえば.....大石だったから、だ。


大石はメニューを見ている柚を見て何かをこっそりと渡してきた。

そしてウインクをする。

それから、ご注文はお決まりですか?、と聞いてきた。

柚は、えっとビッグパフェ下さい!、と笑顔になる。

俺は紙を見てから、じゃあ俺はコーヒー下さい、と言う。


「はい。では少々お待ち下さい」


言いながら何事も無かったかの様に去って行く大石。

俺は?を浮かべながら柚の隙をついて紙を開く。

それから読んでみる。


(さっき小豆ちゃんが来なかった?幼い頃の同級生って聞いたけど)


「.....!?」


そうだ思い出した。

あの子は小路小豆(しょうじあずき)だ。

俺と女の子に.....その。

煎餅缶を埋めたら?って提案してくれた大切な一人。

とても懐かしいな。


「.....お兄ちゃん?」


「.....ああ。いや。大丈夫だ」


少しだけ複雑な顔を直ぐに打ち消す。

その小路と一緒に居るのか。

俺は思いながら.....奥で会話している2人を見る。


何でかな.....こんな事すらも覚えているのに何故.....あの子の事は覚えてないのか.....。

悲しくなるな本当に、だ。

全く.....。


ん?でも待てよ。

あの子を知っているんじゃないのか?小路は.....?

俺は見開きながら.....顎に手を添えた。

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