第17話 エロゲとはつまり喧嘩の火種になる

もう止めだ。

嫌な記憶を何時までも思い出しても仕方が無い。

俺は首を振る。

もう二度とアイツらに巡り合う事は無いだろう。

赤信号のままで終わらせてはならない。


丁度、外のベンチに山城と座っている。

山城は俺を心配そうに見ながら.....ジュースを買って来てくれた。

優しいな、本当に.....。

泣きそうになりながら.....俺は山城に頭を下げる。

そして柔和な顔をした。


「山城。俺さ。お前とか中島に出会って良かったよ」


「.....私も嬉しい。だって.....長谷川君、優しいし物知り」


「オイオイ。言い過ぎ。俺はそんなに物知りじゃないよ」


「.....でも優しいのは事実。だから私は.....君が好き」


髪の毛を弄りながら.....俺に赤面になりながら告げる山城。

茹でだこの様になりそうな感じだ。

俺は、その姿に笑顔を浮かべる。

本当に可愛いな。お前、と告げる。


「.....可愛い?.....可愛いのかな」


「十分だ。お前に好きって言われたら男子は誰でもイチコロだと思う」


「.....うん。でも私は長谷川君以外は見ない」


「.....そ、そうか」


だって.....一途だから。

と胸に優しく手を添える山城。

俺は.....頬をカリカリとまた掻いた。

改めて思ったが俺は恥じらうと頬を掻く習性があるな。

考えながら.....また少しだけ恥じらう俺。


「次、何を見る?」


「.....じゃあ次は模型コーナーでも見るか」


「.....うん。行こう」


俺はゴミ箱に空き缶を入れた。

それから手をパンパンと叩いてから.....山城を見る。

山城は俺の手をジッと改めて見ていた。

俺はグーパーをしながら、山城、と声を掛ける。

山城はビクッとなりながら俺を見てきた。


「.....繋ぐか?」


「.....で、でも私の手.....小さいし.....やっぱりいい.....」


だが俺はその手を見逃さなかった。

そして山城のその柔らかそうな小さな手を握る。

山城は、!、となりながら真っ赤になる。

それはさながら本当にイチゴの様に、である。

だがされるがままに握り返してくれた。


「.....も、もう。ごういん」


「だって握ってほしそうな顔をしていたぞ」


「.....でも嬉しい。暖かい」


「.....お前の手、小さいけどカイロみたいだ。何というか.....人肌ってこんなにぬくぬくなんだな」


「.....」


突然山城がスンスンと泣き始めた。

俺は予想外の事態に慌てる。

そしてハンカチを用意しながら.....山城に構える。

山城は、違うの悲しいんじゃないの、と俺に笑みを浮かべる。

嬉しすぎて泣きたくなったの、と呟いた。


「.....有難う。長谷川君」


「.....あ、ああ。しかし泣くなよ。ビックリする」


「.....ご、ごめん」


「.....でもお前はそれがお前だもんな。可愛いよ」


またチョコンと握ってくる山城の手。

俺はその手を握ってから。

そのまま笑みを浮かべながら博物館の方に歩き出した。

山城は.....無垢な笑顔を浮かべる。

そして博物館の模型コーナーに来た。



「.....今日は有難う。楽しかった。とっても」


「.....ああ。結局.....時間無くて煎餅缶は見れなかったな」


「.....また今度見よう」


「そうだな」


夕暮れ時。

山城の家の前に来た。

俺は、見送る、と言ってからやって来たのだ。

山城はモジモジする。

そして俺を、俺の手を見てきた。


「.....手、また握って」


「.....あ?.....ああ」


そして俺は恥じらいながらも山城の手を握る。

すると安心した様に山城は俺の手を離した。

それから俺を見てくる。

山城は、じゃあ、と呟く。

俺は少し名残惜しかったが見送った。


「また学校でな」


「.....うん。また会えるよね」


「.....決まってんだろ」


そう。だね、と山城はまた満面の笑顔になる。

そして俺達はそのまま別れた。

それから俺は伸びをしてから家路に着く。

すると玄関先に.....何だか可愛らしい靴があった。

俺は?を浮かべてリビングに入る。


「帰って来たね」


「おま!?中島!!!!!」


「アハハ。中島さんですよー」


茶髪を揺らしながら柚と一緒に居た中島がやって来る。

それから中島は、で?どうだった?デートは、と聞いてくる。

俺は赤面しながら、最高だった、と返事する。

でもデートじゃないっての。


すると、そうなんだ、とニコッとする中島。

そして俺の手を握ってくる。

な、何だ!?


「じゃあ今度は私に付き合って」


「.....へ?」


「ゲーム屋に行くの。約束だったでしょ」


「.....え?あ、ああ。良いけどエッチなゲームは禁止だぞ」


柚に聞こえない様に小声で告げる俺。

もー!!!!!私を何だと思っているの!!!!!と文句を垂れる中島。

いや、変態だろ?ただの、っていうか何をしに来たんだよ。

俺は思いながら中島を見る。

中島は、あ。忘れてた、と俺に向く。


「私ね、泊りに来たの」


「.....は?」


「泊まりに来たの。貴方の持っているゲームがしたいから」


「.....」


マジに話がぶっ飛びすぎて頭が付いて行かないんですが。

どうして?、という感じで俺は目をパチクリする。

っていうか何でこのタイミングで、だ。


どうなっているのだ。

何で泊まるんだよ。

本気で意味不明なんだが.....いきなりすぎる。


「お兄ちゃん。実はね.....中島さんその、ゲーム?の件で喧嘩したんだって。ご両親と」


「ちょ!言わないで柚ちゃん!!!!!」


「.....え?ああ。成程な。それは納得だ。中島.....お前、最低だな」


最低じゃ無いから!、と暴れる中島。

でもゲームで喧嘩するの?、と柚は謎の顔をする。

言えないけどそりゃそうだろ。


エッチなゲームだもんな。

完璧に言うとエロゲだもんな。

喧嘩が起こってもおかしくない。

俺は額に手を添えて.....愕然とした。


「.....中島。お前.....」


「あ!その目!止めて!私はまだ体、綺麗だから!」


「.....」


いや何を言ってんだ。

中島は、お願いだから、と涙目で懇願してくる。

俺は.....盛大に溜息を吐く。


それから.....中島が一晩?だけこの家に泊まる事になった。

エロゲで喧嘩ってのも.....最悪だ。

本当に忙しないな.....。

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