やばい学校
あれから2日が経ったが、まだ友達が作れていない。クラスでは、朝に少し話が聞こえる程度にはなったが、依然として静かである。
そして入学式から3日目の朝、俺は下を向きながら正門をくぐり抜けた。
1日前に学力診断テストというものがあり、新学期が始まる頃に毎回あるらしい。
それが終わり今日は肩の荷が降りたような気分で教室には入った。
勿論、知らない人と話す勇気など1ミリもないので、スマホを手に取り無音で音ゲーを始めた。
中難関曲をプレイしていると、誰かが教室に入ってきた。すると彼は、俺の右に座っている青野くんに声をかけた。
「よ、おはよう」
「おう、ういす。」
声をかけたのは、棚瀬 葵と言う人ですごく元気のいい奴だ。
「まじ新しい生活なれないんだけど。」
「それな。」
彼らは同じ中学校の同じクラス出身で奇跡的にもまた同じクラスになり昨日に続き今日も話しているみたいだ。
すると途中で、隣の人だれだっけと言う声が聞こえた。
俺のことだろうか。
他人に気にかけられた友達を作る上で最高のチャンスであるのに、今進めている音ゲーがフルコンボを迎えようとしている。
音ゲーを優先させるか、友達作りを優先させるかを悩んでいたらスライドノーツを外してしまったので顔を上げた。
「お、君が北上くんだっけ?よろしくな!」
「よ、よろしく。」
ぎこちない返事を返すと、棚瀬くんがいぇい北ちゃんというふうに手を前に出してきた。あまりにもフレンドリーな感じに圧倒されながらも手を交わした。
かわいいね北ちゃんと言われたが、俺にとっては貶し言葉にしか聞こえないので苦笑してごまかした。
今日から授業が始まる。
そして熱き戦いからの敗北者たちは、さらに校内で下克上が始まることだろう。初戦から落ちぶれないようにこの一つひとつの授業も大事にしていかなければならないと心に誓った。
…のはずだった。
…のはずだったのだ。
しかし、なんだ今日の授業というのは。
数学の先生は、何を喋っているのか分からない。
国語の先生は、女性の若い先生だったため、棚瀬くんをはじめにその周りの人達が先生を口説こうと必死で授業が進まない。
そして、現代社会の授業はなんだ、法律しか語らないではないか。
さらに古文の先生は、先生の声が小さすぎて聞こえない。当然、クラスは先生を舐め始め朝までは凍りついたような静かな教室だったが、今では別クラスのように私語で賑やかになってしまった。
その時、俺は来る高校を間違えたと実感した。
帰り学活が始まると、太川先生がキレ気味で教室に入ってきた。授業内容を全部聞いたみたいだ。まあ、今日の授業の感じだと当然だろう。
そして、教室では30分間、空白の時間が時計の針を刻む音と共に流れ去った。そして、やっとのことに太川先生は口を開いた。
「ん?なんでこうなってるか分かってる?」
先生の一言には誰も反応しない。
少し経つと、棚瀬くんが顔を上げ先生にすみませんと一言置き僕が悪いと言うことを伝え謝った。彼も反省しているみたいで安心した。
そして、説教が始まるのだろうと気を引き締めて反省の態度を取り繕った。しかし、帰ってくる言葉はみなが思ってもいないような言葉だった。
「ん?ナンカイッタ?」
先生は「ん?ん?」という字幕が見えてしまうほどにリズム良く首を突き出しては戻しの動作を繰り返していた。
この先生の回答にみなの頭には「HA?」という文字が浮かんでいることだろう。
数分たった後に、他にも原因のあるやつがいるのだろうと聞かれているのを察したのか、棚瀬くんと一緒になっていた人達が次々と反省の意志を先生に伝えた。
しかし、それでも先生は何も話を進めようとはしない。
「…うん。で?」
またまた、先生のこの回答におそらく全員が、「こいつヤバいやつだ」と思っただろう。既に空白の時間が50分をそろそろ経過している。
早く帰れないことに、この話に関係ない人達はもう苛立ちを覚えている。それに気づいたのかは知らないが、そろそろ終わらせるかというような気持ちが感じられる深いため息をついて教卓にある輪ゴムをいじりながら話し始めた。
「いま、謝ってきた人いるけどさ、なんで俺に謝るの?…ん?…迷惑かけてるのって、しっかり授業を受けようとしている人たちじゃないの?…ん?…俺関係ないとか思ってる奴いるだろ。ん?ちゃんと注意とかしたのか?あの言っておくけど、俺は関係ないとか言ってる奴ほんとに嫌いだから。…ん?ここ進学コースでしょ?総合とか体育科とかじゃないでしょ?だったらさ、寄り良い授業ができるようにみんなで協力すべきじゃないの?ん?」
首を前後に少し揺り、輪ゴムをいじりながら話されても、全然頭に入ってこない。それから20分間さらに話続けられ俺の兄がそろそろ家に着く頃にやっとのこと説教が終わった。
皆が一斉に席を立ち、教室を出ていく途中、「マジ田川死ね。」や、「あいつホント空気読めん何時やと思てねん。」などという愚痴がすごく聞こえてきた。
そんな中、変える準備をしていなかった俺は、取り残されながら帰る準備をして、先生に挨拶して教室を出た。
もちろんのこと、先生は機嫌が悪くてあいさつを返してこなかった。
やはり、来る学校を間違えてしまった。
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