100円玉
まこんちには今日は誰も、友達もいなかった。
いつもとは違う、少し贅沢にあてもんのカレーおかきと5円のチョコを袋いっぱいに買い込みゲームへ。
先程の先輩たちが、あきらめろや、と肩をがっくりと落としたT先輩と戻ってきた。
全て察しがついた。
先程の200円はT先輩のものか…。
バレたら怖いし、返そうと思ったが、やはりできずゲームもせずにそのまま帰った。
ポケットの中の200円は私の捨ててしまいたい悪の証拠に思えて、風呂に入ってもテレビを見ていても、先輩のがっくり項垂れた頭を心から追い出す事は出来なかった。
次の日、学校の行きしなに1人で歩いているT先輩をみつけた。同じ団地の先輩後輩。
しゃべった事もあまりなかった先輩だが勇気を出して話しかけてみた。
「昨日、まこんちでお金落とさなかったですか?」
あぁ、落としたよ。
あの俺お金拾ったんで返します。
と200円を差し出す私に先輩は
あー俺落としたのは五百円札やねん。これは違うわー笑笑
と言いながら先輩は突っ返してきた。
俺も拾ったお金やし先輩、持っといて!
と言うと恥ずかしくなった私は走って逃げた。学校にたどり着くとまたいつもと同じ日常が始まった。
ただ一つ違ったのは昼休みにわざわざ先輩が2.3人の仲間と連れだって私のクラスに来てこう言った。
これはお前が拾ったんやしお前のもんや。でも俺もお金落としたんもほんまやし、100円ずつ山分けにせんか?
私はその100玉を嬉しく受け取って貯金箱に入れた。怖かったT先輩と少し仲良くなった証に思えた。
高校の時バイクの事故で他界したT先輩。今でも時々思い出します。
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