第6話 憧憬投影
ダンジョンの入り口に何故エリスちゃんがいたのか聞いてみた所、どうやら狩りの帰りだったらしい。帰り道、たまたまダンジョンの入り口付近を歩いていたら僕とゴブリンを見つけたらしい。
「その偶然が無かったら僕は死んでたのか。」
苦笑すると、エリスちゃんは「本当によかった……」と安堵していた。
「アレスはまだ狩りをするの?」
「ううん。今日はもう帰ろうかなって思う。ポーションも無いし。」
「それじゃあ、一緒にご飯食べに行かない?」
「え、ご、ご飯!?」
「ん、昔はよく一緒に食べたじゃない。」
え、エリスちゃんとご飯に食べに行く!?む、昔はよく一緒に食べた事もあったけど、今のエリスちゃんとご飯を食べる!?……心臓止まらないかな?
「行くの?」
「い、行く!行かせてもらうよ!!」
「そっか。ならキングラムに戻ろ。」
「う、うん。」
まだふらつく体をなんとか倒れないように気をつけながら僕はエリスちゃんと共に王都に戻った。
***
王都に戻るとエリスちゃんは行きつけの店があると言っていたので着いて行くとそこは酒場だった。
「ここの料理は美味しいんだよ。」
「そうなんだ。一人じゃ行きずらい場所だな。」
苦笑していると、エリスちゃんは躊躇わずに店の中へ入って行く。僕もなるべく躊躇わないよう入ろうとしたが、やっぱり無理だった。
店員がすぐさまやって来て、僕達を席へと案内する。
僕達はそこへ座ると、エリスちゃんはすぐさま注文をした。
僕はエリスちゃんと同じ物を頼み、しばらく待つ事になった。
「そうだ。ステータスはどうなってるんだろ。」
バッグからステータスカードを取り出し、現在のステータスを確認する。
アレス=ガイア Lv4
力E+(13)
耐久E+(11)
敏捷E+(16)
技能D(25)
魔力E(0)
不幸E+(14)
スキル
蒼眼
憧憬投影
魔法
なし
「レベルは上がって無いけど、ステータスがほんの少し上がってる。それに。」
スキルが増えている。
「憧憬投影……。どんなスキルなんだ?」
憧憬投影と書かれている文字に触れ、詳細を見る。
憧憬投影
英雄や憧れている人。なりたい目標の人物をイメージすると一時的ステータスが大幅上昇する。人物のイメージが強い程、ステータスは上昇する。
「英雄や憧れている人をイメージするとステータスが大幅上昇………。」
強化系のスキル。でも何故、こんな仕様なんだ?
「いいスキルを持ったね。」
「う、うん。………憧憬投影か。」
憧れを映しだす。目指している物が多い僕だから得ることが出来たのか。それだとこの仕様も納得出来る。
「憧れが強い程強くなる。アレスはベルドロイドの話は好きだったよね。」
「うん。今もだけど。」
「なら、英雄ベルドロイドや、あの人をイメージしたらいいんじゃない?」
「––––確かにイメージしやすそうだね。」
その時、注文していた料理がテーブルに置かれる。
「食べようか。」
「うん。そうだね。」
エリスちゃんは料理を静かに食べ始める。僕もそれに習って食べ始める。
「……うん。美味しい!!」
「でしょ?」
酒場と言えばワイルドな食べ物でワイルドな味なのかと思ってだけど違う。庶民派と言えばいいのかわからないけど、食べやすい味で、庶民派の中でも凄く美味い庶民的な味みたいな………。何言ってんだろ。
「–––––そう言えば聞いたよ。エリスちゃん。冒険者から
「みんなが勝手にそう呼んでるだけだよ。」
「そう呼ばれる程凄いんじゃないか。……どうやったらそんなに強くなれるの。」
「うーん。目標が、あるからかな。」
「目標?」
僕が聞くと、エリスちゃんの顔はみるみる憎悪に満ちた表情に変わっていく。
「魔物を……、モンスターを絶滅させる。」
「………」
昔のエリスちゃんとは別人のように見えた。
この五年間何が彼女を変えてしまったんだ。聞きたいけど、聞けない。聞くのが怖い。
「–––––ごめんアレス。早く食べようか。」
「う、うん。そうだね。」
きっと、エリスちゃんは潜って来た修羅場の数が僕より遥かに多いのだろう。……それが、彼女を変えてしまったのだろうか。
***
その後、昔話で盛り上がりながら食事を済ませ、僕達は店の外に出ていた。
「いやー。本当に美味しかったよ。また行こうかな。」
「うん。その時は私も行くよ。」
「えっ、あっ、うん!行こう!!」
エリスちゃんとまた食事する約束を得る事が出来た。凄く幸運だ。本当に不幸のステータス働いてるのか?
「これからアレスはどうするの?」
「家に帰るよ。もう夜になってるしね。エリスちゃんは?」
「私もギルドに戻ろうかな。準備もあるし。」
「どこか行くの?」
「うん。今日の夜、
「そっか。僕も明日は依頼でお金を稼ごうかな。」
「そっか。お互い頑張ろうね。」
「うん。」
会話が終わり僕達は歩き出す。
二人沈黙なのだが、何故かそれが心地よく感じる。
「それじゃあ、私はこっちだから。」
「うん。それじゃあ。またね。」
「うん。また。」
そう言い、僕達は別れ道を歩いて行く。
今日、また新たな目標が出来た。
エリス=アスタリアの隣に立つ。
背中を追うのはやめよう。隣に立つ。その為に僕は。
「–––強くなる。」
何度目の誓いかわからないが、一人でそう呟き、僕は再び歩き始めた。
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