『掃除』

「うわぁ、見て、もうこんなに埃が。」

「本当だ、随分たまってしまったね。」

「嫌だなぁ。はぁ。」

「・・・僕は掃除が特別好きな訳ではないのだけれど、埃が溜まっているおかげで掃除をしなくては、と思える。」

「当たり前じゃないか。だから皆掃除をする。」

「はは。そう、当たり前かもしれないな。」

「どういうことさ。」

「いやぁ。清潔に保ちたい、綺麗なままにしたいと思うか、汚れそのものを取り除きたいと思うか、掃除をする理由って何だろう、と思ってさ。」

「はぁ。君は常にそういうことを考えているのかい。」

「そうかもしれないな。一人でぼうっとしていることが多いとよく言われるよ。」

「それで、君の理由、掃除をする理由はどっちなんだ。」

「うーん、後者かな。」

「汚れを取り除きたい、か。」

「いや、待てよ、やっぱり前者かもしれない、あぁ、うん。」

「・・・。」

「どうしたんだい?」

「いいや。・・・掃除でもしようかな。」

「そうか。では僕はすぐそこの川沿いを散歩してくるよ。長い散歩になりそうだから、今晩のおかずを適当に買って帰る。」

「おいおい。まだ僕の家に居候する気か。いい加減自分の家に帰れ。」

「勘弁してくれ。僕は掃除が大の苦手なんだ。じゃあ行ってくるよ。」

「・・・困ったもんだ。」



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