第4話 茄子美人の美食美学
「今日は日本の外交官をもてなさなければならない」
その日、ホワイトハウスは少し慌ただしかった。大統領が言った通り日本の外交官と食事会をする予定なのだ。
「本日来られる外交官は『美人』らしいですよ」
「つまりビューティフルレディか、それは楽しみだ」
夜、日が落ちて星と月が空を支配する時間帯となった頃に外交官がやってきた。先に客室へ案内したというので、大統領は遅れて日本の『美人』と評判の外交官へ会いに来た。
「お待たせしてすまない、私が大統領です」
「お会いできて光栄です。外交担当の『茄子美人』と申します」
日本の外交官は茄子だった、紫色の野菜、あの茄子である。文字通り野菜の茄子だった。どう見ても茄子だった。
軽く挨拶してから大統領と茄子美人はソファで向かい合って座る。
茄子美人は美葉っぱを艶めかしく組み替える。なるほど、美人と言われる所以だ。
「早速食事の用意と致しましょうか、こちらへ」
「あらありがとう、料理はどなたが作っていただけるのかしら」
「私ですマダム」
「まあ大統領直々に? とても有難いですわ」
「これでも大統領ですので、料理には些か自信があります。お口に合うかはわかりませんが」
「ホホ、実はわたくし意外とグルメなんですのよ」
「お手柔らかに、マダム」
本日提供する料理はグリル系である。まずは部下に用意させたサラダで胃を慣らしていく。
「あら、このサラダには茄子が入っているわ、私これでも茄子は好きなの」
つまり共食いである。
「存じております、以前インタビューを受けた雑誌のプロフィールにも書かれていましたね」
「まあ! あの記事読まれたのね、恥ずかしいわ」
「いえいえ、とても美しい写真と言葉でしたよ」
次はスープを提供する。これは大統領が初挑戦した豚汁である。具材は牛蒡とプロテインだけで、汁多めに出した。
「フフ、この素朴な味は落ち着くわね」
「ありがとうございます、次はいよいよメインディッシュのグリルです。まずは茄子のチーズ焼きです」
またもや共食い。
「体が熱くなってくるわね、このままだと田楽になっちゃいそう」
「ソーセージも、ありますよ」
「ああ! 待って! そんな太くて大きい物は入らないわ!」
茄子美人の制止も聞かないまま、大統領は彼女の口へソーセージの皿を近づける。茄子美人は蔓を妖しく蠢かせながらソーセージをとり、恐る恐る先端を葉っぱで舐めた。
「じゅるっ……はぁ、これが大統領のソーセージなのね」
「野菜の茄子が肉を食べるというのは中々機会がないと思いまして」
「あぁっ! 大統領の熱いソーセージが中に入ってくりゅぅ!」
茄子美人の穴をソーセージが突き進む、ソーセージが進む度に茄子美人の身体が痙攣するかのように跳ねる。身悶えるその姿はエロティカを体現していると言っても過言ではない。
「あぁ! このまま熱くなったら田楽になっちゃう! 処女田楽をソーセージに捧げるなんて!」
茄子の身体をソーセージが侵食していく、野菜の茄子が肉と接合しているのだ。接合口ではクチュクチュと青汁が垂れてより一層センシティブな雰囲気を作り出している。
似たような物にピーマンの肉詰めがある。あれはピーマンがミンチ肉の子供を身篭るという大変背徳的なものだった。
「あんっあん……うっちゅばっ、んはぁ! はぁはぁ、駄目、もうイきそう!」
「どうぞ、御遠慮なく」
「あぁん! あぁっ、田楽になっちゃうううう!」
ついに大統領のソーセージが茄子美人の身体に全て収まった。それとともにソーセージの旨味に当てられた茄子美人がピクンピクンと小刻みに痙攣し始めた。どうも彼女には刺激が強かったらしい。
心做しか茄子美人の紫色の肌がほんのり濃くなっている。
「唐辛子はいれてないのだがな」
不思議な話である。
「あっ、だめ! このソーセージ中で! とまらな! い、イッちゃうぅ!」
くどいようだが、これは野菜の茄子がソーセージを食べてるだけである。おかしな所は何一つない。
発言通りイッてしまった茄子美人は絶妙に美味しそうな田楽となっていた、ここに味噌をつけて食べたら美味だろう。
「田楽になっちゃった。私を田楽にしたのは貴方が初めてよ大統領」
「光栄です。マダム」
こうして大統領と茄子美人による食事会は静かに幕を閉じた。
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