第10話・芦屋道満の子孫との対決
茨木童子を配下にしてから数日が過ぎた、茨木童子は数日おきに顔を出すようになってきていた。
いきなり空間に真っ黒な輪が現れるとそこから出てくるのだ。しかし何をするでもなくクーラーに当たり涼みながらアイスコーヒーを飲んで、街の様子やたわいない話をするとまた黒い門を出し帰って行く。
今日もさっきやって来た、俺は千尋が驚くから合図してから来るようにと言って約束させた。
「兄貴、街で何かしたり名前を書く時に茨木童子とは書けないじゃないですか、何か名前を付けて下さいよ」
「今まではどうしてたんだ」
「毎回適当な名前を書いてました」
「そうか、しかしいきなり言われても思いつかんよ」
「茨木太郎丸はどうかしら? 太郎丸はおじいちゃんが昔飼ってた犬の名前よ」
太郎丸って嫌がるだろ、と思ったら。
「茨木太郎丸ですか、いいですねこれからそうします。姉貴ありがとうございます」
あっさり決めやがった、まあいいが。
「じゃあ太郎丸、街で何か怪異や変わった噂話を聞いてないか?」
「特にないですね、平和でいいじゃないですか」
「そうだな」
「そう言えば兄貴達の噂は広まってました」
「俺達の噂?」
「はい、陰陽師カップルとか学生霊能者カップルとか、兄貴達の事だとすぐにわかりましたよ」
「そうかわかった」
「千尋の姉貴、このアイスコーヒーってやつおかわりもらってもいいですか?」
「いいわよ」
すぐに持ってくる。
「太郎丸はコーヒーが気に入ったの?」
「はい、美味しいです。自動販売機ってカラクリの箱にコーヒーがあったので買おうと思いましたがお金がいるんですね、それにどう操作するのかわからないので諦めました」
「お金がないならうちで飲めばいいわ」
「ありがとうございます」
「お前金持ってないのに飯とかはどうしてるんだ?」
「俺達化け物は基本的に食わなくても死にません、食うのは気まぐれです。最近は山で猪とかを捕まえて食ってます」
「そうか」
「ご飯が食べたくなったら、私が作ってあげるわ」
「姉貴、ありがとうございます」
茨木童子はアイスコーヒーを飲み終えると帰りますと言い黒い門を通り帰って行った。
「太郎丸はいつも唐突ね」
「あいつは元々そういう性格なんだろうな」
「ねぇ、最近考えてたんだけど私達が出会ってから霊や妖怪がよく出るようになったと思わない?」
「俺もそう思っていた」
「これも閻魔様が言ってた運命の出会いと関係あるのかしら?」
「はっきり言えないが多分そうだろう、この街の出身じゃない妖怪もここに集まって来ているしな」
「怪異を見るのは好きだけどちょっと不安だわ」
「偶然重なっただけかもしれないから様子を見よう」
「わかったわ」
俺はふと茨木童子のように門が出ないか念じてみた『コンビニの前へのゲートよ開け』空間に門が開いた、千尋が驚いて。
「あなたが作ったの?」
「ああ、試しにやったら出来た」
門をくぐってみる、コンビニの前に立っていた、すぐに引き返した他の人には気付かれてないようだ。
「どこに行ってきたの?」
「コンビニだ、千尋も試してみてくれ」
「出来たら便利ね、どうするの?」
俺がやった方法を教えた。千尋が真剣な顔で試している小さいがゲートが出た、千尋が入って行きすぐに戻ってくる。
「やった、出来たわ」
「どこに行ってきたんだ?」
「大学よ」
嬉しそうに答える、俺は指輪に聞く。
『これはお前らの力か』
『違うわ、あなた達の力よ』
『何でこんな事が出来るようになったんだ』
『あなた達何度もまぐわったでしょ、その度に体が熱くなったでしょ? その度に能力が開花していってるのよ』
『毎回熱くなるところが上に上がって来ているが何か意味があるのか?』
『チャクラが開花してるのよ、意味なんてないわ、強いて言えば運命の二人だからよ』
『わかった、他には何が出来るよになったんだ?』
『それは内緒いろいろ試してみるといいわ』
『答えない時もあるんだな、俺達を試しているのか』
『そうよ試験よ』
千尋はいろいろゲートを開いて行き来して楽しんでる。俺は出来たら便利かもと思った瞬間移動と分身の術と手を使わず物が動かせるかを試してみた。三つ共成功した。
千尋にも教えてやる、千尋もすぐに出来るようになった。
「これって指輪のおかげかしら?」
「さっき聞いたが違うらしい、俺達のチャクラが開花して能力が上がってきてるから身についたらしい」
「つまり愛し合ったからなのね」
「そうだ、だからまだ俺達の知らない能力があるはずだ」
千尋は何か考えている。
「何も思いつかないわ、何か思いついたら試してみましょう。でもゲートと瞬間移動って似てるけどどう違うのかしら?」
「俺にもわからない」
「一つ思いついたわ、術を使う時呪文を唱えるでしょ? それを心の中で唱えるだけで術が仕えないかしら? 試してみて」
「わかった」
俺は心の中で五芒星を描き、千尋に貼り付け千尋に動けなくする術をかけた。
成功した術を解いてやる。
「出来たぞ」
「やったぁ、でも他には思いつかないわ」
「焦る必要はない、ゆっくり考えよう」
「そうね、でも新しい能力は精神的に疲れるわね、眠いわ」
「俺もだ、少し仮眠しよう」
二人でソファーに横になった。夢の中にとうふ小僧が出てきた、気持ちよく寝てるんだ邪魔をしないでくれと思った。
『夢じゃないよ、また閻王から伝言だよ』
隣に千尋もいる。
『なんだ? 言ってみろ』
またノートを見ながら話してくる。
『能力の開花見ていたぞ見事だ、流石運命の二人だ。さらなる能力の開花を期待しておるぞ、いろいろ試してみるがいい、だって』
『それだけか?』
ノートをめくる。
『敵意を持った霊能者が近づいている、だって』
『わかった、まだあるのか』
『これだけだよ』
『わかった、ありがとうございますと伝えておいてくれ』
『わかった、寝てるのにごめんね』
ふっと消えた、眠い目をこすりながら千尋を見る、千尋も眠そうな目でこっちを見ていた。
「夢じゃなかったな」
「ええ、もう少し寝ましょ」
「そうしよう」
すぐに眠りについた。
三時間程寝てたみたいだ、あくびをしながら起き上がる、千尋はまだ寝ている。
ふと空を飛べたら面白そうだと思い試してみる、しかしどうやっても飛ぶのは無理そうだ。
念動力でパソコンを手前に引き寄せ、超能力の情報を検索した、千里眼と透視に発火能力と読心術がまだ試していない能力だ、千里眼と透視は同じと言うページもあるがとりあえず透視を試す、トランプがないので雑誌を適当にめくり裏に向けてテーブルに置く、雑誌が透けて文字が見えた、今度は山にいる茨木童子の様子を心の中で見るエロ本を読みながら酒を飲んでいるが本当かただの想像かはわからない。
発火能力を試す、さっきの雑誌を台所に置き、燃えろと念じると燃えたすぐに水道の水で火を消す。燃やせるということは凍らせる事も出来るんじゃないかと思い凍れと念じる雑誌が氷に閉じ込められた。
面白いがだんだん人間離れしているようで少し怖くなった。
読心術は相手がいないと試せないので千尋が起きてから試す事にした。やはり新しい能力は疲れるまたソファーに横になった。
起きると千尋がパソコンを見ている。俺は上体を起こした。
「起きたわね、これ試してみたの?」
「ああ、透視と千里眼それから発火能力と凍らせる能力が使えるようになってた、試してないのは読心術だけだ」
「凄いわね」
「ちょっと心の中で何か考えてくれ? いつものテレパシーじゃなく普通に考えるだけでいい」
「わかったわ」
俺は集中して読み取る。
『優斗好き大好き伝わってるのかしら?』
「ストップ、聞こえた。優斗好き大好き伝わってるのかしら? って考えただろう?」
「当たりよ」
「使えたか、だがこれが一番疲れるぞ、普段は使わない方がいい」
「わかったわ、他のを私も試してみる」
俺はまた指輪に聞いた。
『今使った能力で全部か?』
『そうよ、おめでとう。これからも頑張って他の能力を開花させるといいわ』
『まだあるのか、凄く疲れるからもういいんだが』
『慣れれば疲れなくなるわ』
『わかったよ』
『後は臨機応変にどう使うかが見ものだわ』
『そうだな、使いようによっては凄い力になりそうだ』
『それより千尋を止めて疲労でふらふらよ』
『わかった』
千尋は台所で凍らせる能力まで使えたみたいだ、本当にふらふらしている。
「千尋、今日はもう実験は中止だ」
「わかったわ、もう無理」
俺に倒れかかってきた、ベッドに運び寝かしつけた。
『指輪、俺は大丈夫なのになぜ千尋はあんな状態になったんだ?』
『精神力の問題よ、単にあなたの精神力が強かっただけよ』
『そうか、わかった』
俺はアイスコーヒーを淹れてくつろいだ。俺は能力の事を頭の中で整理した。漫画に出て来そうな能力を得た。これらをうまく使えば閻魔様や指輪が言っていた世界の王になれる事が何となく理解できた。
とりあえず早く使い慣れて疲れが出ないようにしないと駄目だ。
郵便入れがカタンと音を立てた、うちは新聞は取っていないので見に行った。
果し状と書かれている、すぐに飛び出し左右に伸びる道路を見たが誰もいない、早速千里眼で見てみる、左方向に走って逃げる男を見つけた、顔を覚えた。部屋に戻り果し状の中身を読んでみる。
『坂井優斗殿、陰陽師の真似事をしているみたいだがどちらが本物か勝負を申し込む。次の金曜日の夕方十六時に港で待つ』
名前は書かれていない、カレンダーを見て曜日を確認する、金曜は二日後だ。無視することも考えたが申し込まれた勝負から逃げるのは負けを認めたのと同じだ、受ける事に決めた。
名前を知るにはどの能力を使えばいいのだろうか? とりあえず果し状に手を当て透視をしてみる情報が流れ込んでくる。
芦屋道光二十三歳。芦屋と言う姓はもしかすると芦屋道満の子孫かもしれない。遠方からはるばるやって来たのだろうか? まあいい能力を試してやろうと考えた、負ける気はしない。
腹が減った、眠気も襲って来るそのままソファーで寝た。何時間寝たのだろう起きると朝日が差し込んでいた頭痛がする。千尋が果し状を見ていた。
「おはよう、疲れは取れたか?」
「ええ、でも頭が痛いわ」
「俺もだ、新しい能力を使いすぎたからかもしれない」
「そうね、それよりこの果し状受けるの?」
「そのつもりだ、付いてきてもいいが手出しするなよ、俺をご指名のようだしな」
「わかったわ、相手の名前が書いてないわ」
「芦屋道光二十三歳、芦屋道満の子孫だ」
「芦屋道満? 誰?」
「安倍晴明に並ぶ陰陽師の一人だ」
「あなたが勝つと思うわ」
「俺もそう思うが、奴がどんな術を使うかまではわかってないからな」
『兄貴、入ってもいいですか?』
『茨木童子かいいぞ』
ゲートが開き入ってきた。
「今日は早いな」
「何やら嫌な予感がしたので、おやこれは果し状ですね」
「ああそうだ」
「俺も行きますよ」
「サポートを頼む、相手は本物の陰陽師だ」
「笑止千万、私のフルパワーで蹴散らして見せますよ」
「その前に俺の新しい能力を試したい」
「新しい能力ですか?」
「ああ昨日いくつか神通力を手に入れた」
「更に能力を得たのですか?」
「そうだ、凄いぞ」
千尋が頭痛薬を持ってきた、俺も貰った。
「朝ごはん作るけど太郎丸も食べる?」
「はい、いただきます」
しばらく待っているとスパゲティがテーブルに並んだ、カルボナーラだ。
「これは蕎麦ですか?」
「違うわスパゲティって言うの西洋の食べ物よ」
「異国の食べ物ですか」
茨木童子は一口食べると、美味いと言ってすぐに完食した。
「アイスコーヒーはちょっと待ってね」
「わかりました」
食後にアイスコーヒーが運ばれてくると茨木童子は嬉しそうに飲み始めた。
「今の人間の暮らしもいいものですね」
「娯楽もたくさんあって楽しいぞ」
「興味があります、いろいろ教えて下さい」
「わかった、とりあえず明日の決戦を終わらせてからな、茨木童子明日は昼過ぎに来てくれ、俺はそれまで能力の特訓をしておく」
「わかりました」
俺は気を集中し特訓を始めた。いつの間にか茨木童子は帰っていたようだ。疲れたら仮眠を取り起きたら特訓を繰り返した。大体コツは掴めて簡単に使えるようになった、日付が変わっていた。頭も体も休めた方がいいだろう、見守っていた千尋とベッドで寝た。
ぐっすり眠れたがやはり頭痛がする、薬を飲んで食事をした。
約束通り昼過ぎに来た茨木童子に、相手を怪我させるのはいいが殺す事は禁止した。
茨木童子が本来の鬼の姿に戻る。
千里眼で道光がいるのを確認しゲートを開き道光の正面に立った。
「待たせたな芦屋道光、芦屋道満の子孫よ」
「お前らどうやって現れた? なぜ名前を知っている?」
「さぁな」
「変な術を使いやがるがまあいい、俺が勝って日本一の陰陽師と証明してやる」
道光が先に動き鬼の式神を八体使役した。
「お前には真似出来ないだろう」
「その程度の力で得意げになるな」
俺は茨木童子のパワーをフルにした。
「茨木童子よサポートは任せるぞ」
「御意」
道光が動揺した声で聞く。
「茨木童子だと? なぜお前にそんな鬼が使役出来るんだ? ハッタリは止めろ」
「フハハハ、この茨木童子の私に勝てるとでも思っているのか? 一瞬で地獄の業火に焼かれるがいい」
「茨木童子よ、さっきも言ったがサポートだけでいい、俺がやる行くぞ」
俺も鬼を使役しゆっくりと道光に近づく、道光が後退りする、足を凍らせ動けなくし分身の術で八体にわかれた、瞬間移動で眼の前に移動する。道光が術を使おうとしたので腕を動くのを心の中で禁止する。道光の鬼が襲って来る。爆ぜろと心の中で叫ぶ。
鬼が吹き飛ぶ。
「茨木童子よ出番だ、鬼を全て潰せ」
「御意」
茨木童子は赤子の手をひねるように一瞬で簡単に八体を潰した。
道光は怯えて震えている。
念動力で木刀を引き寄せる。
「頭を飛ばして殺してやろう」
「ま、待ってくれ殺さないでくれ、俺が悪かった」
道光は失禁し泣いている。
「どっちが本物かわかったか」
必死で頭を縦に振る。
「あなたです、坂井優斗さんが本物です」
俺は術を全部解いてやった、俺も自分にかけた術を解き、茨木童子の力も元に戻した。
「兄貴、腕の一本でも引き千切りましょう」
「茨木童子よ勝負はついたもういい」
茨木童子は道光に近づく。
「フン、我が主と勝負にもならなかったな、つまらん勝負をするでないぞ、次は殺す」
道光は腰が抜けて座り込んだ。
「坂井さん、あんた手を動かさず、呪文も唱えないでどうやってあんな高度な術をいっぺんに使えるんだ?」
「造作も無い事だ、俺は望んでいないが運命の人間らしい、術だけでなく神通力も全て兼ね揃えている」
「安倍晴明の子孫でもない人間にこんなにあっさりやられるとは思ってもいなかった、どこで覚えたのか教えてくれないか?」
「ほとんど独学だ、そして今日は一割程度の力しか出してはいない」
「そ、そんな……」
「今の日本の陰陽師で俺以外で一番強いのは誰だ?」
「俺だ、だからやっつけてこいと言われた」
「帰ったらこのつまらない勝負を一部始終報告しておけ、そして今後こういう事がないようにしろ、次があれば遠慮なく殺す」
「わ、わかりました」
「機会があれば閻魔様に俺の事を聞くといい運命の人間が誰なのかをな」
「あんた閻魔大王とも知り合いなのか?」
「そうだ、話は終わりだ。千尋、茨木童子帰るぞ」
ゲートを開き部屋に戻った。
「あなた、お疲れ様」
「兄貴、凄いですねかっこよかったです」
「あー、慣れない話し方をしたから疲れた」
「話し方もかっこよかったわよ」
「俺もそう思います」
「それなんだが何か口が勝手に動いたんだ」
「誰かが操っていたのかもしれないわね」
「俺もそう思います」
二人がまだ話しているが俺は疲れてソファーで眠りについた。閻王からの使いが来たがまた今度にしてくれと追い払ったとこで意識がなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます