やる事ないので異世界行きます~無職一家の暇つぶし~

甘都生てうる@(●︎´▽︎`●︎)

プロローグ うちのトイレは異世界への入り口

 ......唐突ながら、



 ガチャ............コオオオオオオオオオ......



「......はあ、」



 我が家のトイレは、異世界と繋がっています。


 ......僕の名前は三津屋 怜みつや れん。日本でも有名な某国立大に通う男子大学生です。


 まあまずは、前述の事について軽く説明しようかなと思う。


 そもそも、うちの家族はサラリーマンの父と、専業主婦の母、そして高校中退してアルバイトしていたフリーターの妹·魅登里みとりという、ごくごくありきたりな家族だ。


 そんなありきたりな家族の人が、いきなり"うちのトイレ異世界と繋がってんだよね〜ww"とか言われても、大半の人は困るだろう。何言ってるんだこいつは、頭おかしいんか。そう思うのが普通だと思う。


 でも、うちのトイレは本当に異世界と繋がっているのだ。


 時々異世界行きのゲートになっては、時々ただのトイレの扉になる。物心着いた頃には既に、この現象が起きていた。


 僕と魅登里は無理だけど、両親は異世界行きのゲートに好きなタイミングで変えることができるので、


『ちょっと異世界フィフラレタに行ってくるから晩御飯食べといてよ〜』


『父さんちょっと向こうの飲み友と飲んでくる!』



 みたいな、めちゃくちゃ軽〜いノリで異世界にホイホイと行って、帰ってくる。


 だから、僕も魅登里も、これが当たり前だとず〜......っと思っていた。でも小3の時に実はそうではないことを知って、それ以降家族以外の人に言ったことは1度もない。



「はあ、トイレ行きたかったんだけど......」



 しかも、別に嬉しい事とかもない。魅登里は嬉しいらしいけど、少なくとも僕にとっては。


 むしろ今みたいに、トイレに行っておきたい時にこうなってるとめちゃくちゃ困るし。


 なので僕と妹はトイレに行きたくなる前の前にトイレに行くようにしている。


 走って1分の公園の公衆トイレに駆け込めるぐらいは余裕を持ってトイレに行くのが、うちの暗黙の了解だ。


 ......因みに、僕は異世界に行ったことは1度もない。魅登里はあるらしいが。


 何故なら、単純に興味がないからだ。異世界情勢だとかそういうのにも、異世界といえば〜な勇者とか天使とかそういうのにも。



「......公園行こ」



 だから今日も、いつも通り公園に行って用を済ませて帰ってこようと思っていたのに、



 フォンッ、ゴッ!!


「ぶべっ!?」


「ん......?」



 踵を返して公園に行こうとしていた僕の後ろで、あの両親が異世界に行く時によく聞くパソコンの起動音みたいなやつと、鈍い音が派手に鳴った。


 なんか悲鳴的なのも聞こえたし、思わず後ろを振り返ると......



「ぅいたたた〜......」



 膝を擦りながら立ち上がる、日本では滅多に見ない綺麗な金色の髪に朱色の目をした......角が生えた、人型のナニカ。


 よく見たらしっぽもあるし、耳はまるで豹のような、猫のような、そんなのが頭に乗っている。何、この生き物は。



「......っは、どこ、どこだよここ!?」



 ふわふわしたしっぽをゆらゆらと揺らしながら、耳を必死で動かして小さな音でも拾おうと頑張っている。


 数秒ほどそうしていた後、大きな朱色の目が僕を捉えた。


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