第20話 感謝とお礼


アイテールの下にルドラとエルシアが帰ると、既にアリアとクレアを含めて全員が揃っていた。


「遅かったわね」

「アリア、クレア、ありがとな。おかげで間に合った」

「べ、別に気にしないでいいわよ。それより、時間かかってたみたいだけど、何かあったの?」

「あぁ、それはな‥‥」


ルドラとエルシアは、先ほどまでのシルヴィアとの出来事を説明する。

決闘の経緯について話しているところで全員の視線がエルシアに向かった。


「エルシアと同じことしてるわね。やっぱり、魔人族ってそういうもんなの?」

「みんながそうなわけではないけど、力に自信のある人はだいたいそんな感じね。ただ、シルヴィアはそういうタイプじゃないと思ってたから私も驚いたわ」


エルシアによると、シルヴィアは冷静で、相手の力量を見定めることにも長けており、無駄な戦いをするようなタイプではなかったらしい。

おそらく、ルドラの実力も分かった上で、決闘を挑んだのだろう。それほどまでエルシアを大切に思っていたということだ。


「まだ俺たちの目的については話していないが‥‥まぁ、あの様子なら問題ないだろう。それに、通信用の魔道具は渡してあるから、あっちが落ち着いたら説得すればいい」


シルヴィアはエルシアをとても慕っているようだった。

ルドラは、シルヴィアはクロノスへの信仰心よりエルシアを優先するだろうと確信していた。

それに、もともとクロノスへの信仰心もあまりないと思われる。


それから、ルドラがシルヴィアに渡した通信用魔道具とは、同じ魔道具を持った者同士での遠距離の会話ができるという魔道具のことで、ブランが創造したものだ。


「そうだ。みんなにお礼をしたいんだけど、何かして欲しいこととかあるか?」

「え、いいの?」

「あぁ、しばらくやることもないしな。さっきのこともそうだし、日頃のお礼も兼ねて俺にできることならなんでもするよ」


世界の危機だから仕方ないかもしれないが、ルドラは彼女たちを自分の「クロノスを倒す」という目標に巻き込んでしまったことを申し訳なく思っていた。

だけど、貴重な戦力でもある彼女たちを手放すこともできない。

なので、できるだけ後悔のないように過ごせるようにしてあげたかった。


「なら私、ルドラと王都でデートしたいわ」

「そんなことでいいのか?」

「もちろんよ!できれば2人きりだと嬉しいのだけど」

「そのくらい構わないよ。他のみんなはどうする?」

「じゃあ、私もデートで頼む」


他のみんなもデートがいいと言う。

そんなことで喜んでくれるなら、これからも時間があればしてあげたいと思った。


「アレンとブランはどうする?何か欲しいものとかあれば言ってくれ」

「ルドラさんには返しきれない恩があるし、僕らのことは気にしないでいいよ。せっかくだから、ルドラさん達がデートしてる間に僕らもデートしようかな」


アレンは気にしないでいいと言っているが、ルドラとしては、彼らを助けたのは仲間を増やすためという下心があってのことなので複雑な気分になる。


「ま、まぁ、今すぐじゃなくてもいいから、何かあれば言ってくれよ」

「その時はお願いするよ」


「それじゃあ、そろそろ帰るか」


こうして、また1週間ほどかけて王都へと戻っていった。

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