掌編や考えた事。

羽原みちばけ

路上の霊

月夜の路上。

コンクリートの塀に挟まれた道。

そこで、幽霊を見た。

とても美しかった。

それは幻に見えた。

だから美しかった。

生身の腐ったような感触がなかった。

臭いもなかった。

純粋に姿だけがあった。

その姿だけの存在は私に言った。


「こっちに来ない?」


あまりの美しい声に私は思わずうなづいた。

そして、私は路上の死体になった。

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