第八話 反応に

「あーんってやった時、指を口でパクってされると、びっくりする」


惚気?と思って逡巡したが、相談の形なので確認する。

「嫌じゃないのね?」


確認して、驚いただけと聞いたシュルトはロードを“セリの椅子”から追い出しにかかった。セリの相談が、ロードに対するものだと察したからだ。


慣れない事の多い環境のセリに、相談相手として役に立ちたい気持ちは強い。

「キッチンにいなさいな。まさか、嫌とは言わないわよネ?ネエ?」


この場合は、強制に近い。ロードなら強行突破できるが、引くことにした。セリに必要なのだと目で訴えられれば従っても良い。


(正直、キッチンでも話の内容は聞けそうなのヨネ。)


場を仕切り直し、特に気負っていないセリは愚痴を言ってくれるかどうか。


(その会話そ聞かれていてもなんとかするのがワタシの手腕よネ。)


竜人の身体能力を甘くみては行けない、たぶん聞いているんだろう。



嫌われる方向に行く前に軌道修正を双方にさせるのが、自身の役目だとシュルトは思う。拗れる前の早期発見に力を注ごう。


それに、セリが心配。

弟妹の多いシュルトが、気を揉んだ。


「他にはあった?」

「指をぺろっとされる」


恋人同士なら戯れ程度のことに思うが、セリの方の認識次第だと判断した。教会育ちでは、親この関係のような近い関係に慣れていないと思うからだ。


「んー、嫌がるのよ?キライって言えばやめると思うから。」


ちらりと追い出した男を視界に入れれば、特に反応はなし。悪意ではなくやり過ぎの反省はないようだカラ


(ほんとにやり過ぎを釘刺す時じゃない、か。)


触れ合いを禁止するほどではない。そこまでしていないと加減していそうだ。


それより、問題はロードの執着心の方だろうか?番への本能はワタシでは分からない。カナンに聞いておこうと思う。


「食べられちゃう。」


端的だとイロイロ想像してしじゃったけど?

「指。」


これもふざけて反応を楽しんでいそうネ?

「怪我はないわね?」


「うん。歯があたるくらい?」

力加減も問題ない様子。向こうから当然っていう空気がするけど無視ヨ。


「反応に困る感じヨネ〜。」


場所を限定する方針で助言をする事にした。

護衛がいない時、お客の前でやっても問題なさそうだと認識を共有する。


ロードを優先させるのも、制御はセリの方に頼むしかない。だって、あの竜人の大切にするのは番しかいないのだから。


「獣人とは、感覚の違いでトラブルになる事も多いから、カナンも混じえて話しまショ」


成長途中のセリ、できる事は少ないけど今後に思い悩まないように考えを伝えたいと思うワ。惚気に話でもネ。



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