第五話 回復薬(温)

この寒い場所で、欲しい物を贈るとしたら薬だろうか。この極北のしろでは衛生士向けに薬草の講義が受けられるが。


寒さに痛めた肌をケアするものは、あるものの仕事をする人には差し障りがある。香りがあったり、服に付いてしまう事もある。


「あったかい回復薬」


手がかじかんだり、霜焼けを治すのに使える。ベタつかないし、お湯の用意ならしやすい環境で便利に使える。


オイルで数滴溶かせば、

弱い回復魔法を使ったみたいに軽い痛みが消える。


温めるだけなら、爆炎草なんてものがあるけど。肌に直接は荒れの原因。


「子供は無理ね、獣人だってムリな人もいるワヨ。」

「これなら、火傷はないよ」


水かお湯に溶かして使う必要があるけど、一定の温度より上がらない。何滴入れてもだ。


「人が使うのはムリだよって聞いたから。」


セリも使いたくなった。冷たい手先や足に癒しの効果を。


「獣人の薬師さんは、人って弱いんだなって言われたけど、まあそうだねって言うしかなかった。」


シュルトに使ってもらうと…


「軟豪に入れると手の荒れが消える!」


寝る前のケアに使ったらしい。普段使いでも香りが気にならないのが良いって反応だった。


「クリームで売らないの?」

「みんな持ってるだろうし、水と反応するようにしたから持ち運びに便利。」


小瓶に入った液体。


「他のものと混ぜても問題ないと思う。」


安定しているから、他と反応しないようになっている。そに点で肌に優しい効力を期待した。


「熱くなりすぎないように色々やった。」


子供、女性向けに売り出すシュルトが楽しそうだった。

レシピ も売り出したので、セリはほどほどに生産するにとどめる。


派生商品が出るのも面白いかもと思いながら。l



でも、トラブルが起こった。

『お湯をあったかい回復薬にする』で試してもらっていた人が、軽い火傷を負ったらしい。


「ケド、詳しく聞くとレシピで他の衛生士が作ったでネ。」

「セリが作ったものじゃないのか?」


レシピを買ったなら作り手の腕がどうなってるか、全部入れても火傷はしない。水に溶けて、もったいないだけだ


「素材を鑑定して勝手に作って売ったみたい。奥さんと娘さんに使わせて怪我したのヨ」


「安直」


安全性も試して、勢いで入れても大丈夫な量と、混ぜ合わせた他の材料で火傷しないようにしている。


「その話が広まって、こっちの売れ行きも悪くなったワ」


シュルトは残念そうだけど、私としては周囲に困ってそうな人達に渡せれば良い。この城を離れる私からの贈り物にするだけなのだから。

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