第七幕 雪解けの時期
第一話 凍るかな
極北の城内は気忙しい。兵士の第一陣が、本国に帰るために出発した。到着の一報を持って交代要員が帰ってきたら、次は住民の方だ。
「帰る準備を始めてる?」
「もっと後だからまだだな。」
ほとんど、荷物はない。住民と言っているが、冬を越すために集まった国民が帰ってからになる。
獣人の国の国民ではなく、救出されたセリは荷物がないと思っている。
番のロードが購入した物達はどうなるのか。
専属の商人が解決方法を見つけるだろう、シュルトの事だが。
「本と服で、ロードは収納魔法付きにバッグを持ってるデショ?すぐ終わるわヨ。」
商人達の帰り支度のため、外のでの市場も安くなったものが並ぶ。その売買や交渉に忙しく動いている様子だ。
獣人に国へ行くと決めたセリにも、今後の行程は関係がある。
極北の城では騎士、兵士の交代の形が終われば住民がぐっと減る。毎年のことながら移動は、順番に兵士に守られての帰還だ。
「オレら最後だろ?」
混雑するため、急ぎでない限り遅い出発を選ぶ。準備の計画はしっかりたておかないと、品薄やまだ寒い道行きは辛いものになる。
セリは別に、国に入る許可が取れるなどの許可を心配している。
「ロードの番の時点で入れるよ?」
要らないらしい。
「孤児院の出身だと確認とれて、場所も把握。敵対の意思もないなら、順当だわ。」
「セリの証人に、後見者でしょ?ロードの番だから積極的に、取り入れたいって思惑もあるワ。」
裏っぽい事情もあった。
「入国して、何かやる事がある?」
条件や監視などありそうなものだ。
「監視はキース?そもそもロードについてるわヨネ。」
何で?という視線でロードを見た。
「竜人が暴れないように、誰かをつける慣習なんだわ。」
カナンは貴族がバカなことをしないようにと言う意味もあるが明言しなかった。こっそりバカを排除するのも仕事だったりする。
「セリにも付くけど護衛の意味合いが大きいわよね。だって怪我でもしたらロードが荒れ狂うわヨ?」
そんな事ある?と見返すロードは、当たり前だと言う顔だった。膝の上にいながら、セリはそっと前を向いた。
“一番気をつけないといけないのが、自身の安全かもしれない。”
「王都が氷漬けになる日が来るにかな?」
「雪が散らつくくらいの気候の筈なんだけどなー。」
「氷解の魔導具の常備が必要カシラ?」
「そうだねー、売りつけに行ってみる?」
確実に一回は氷に覆われると言われている気がする。いや、気のせいではないらしいと困ったセリをロードが微笑ましく見ていたのだった。
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