21-秘境の泉

「いいえ、隠れた教会と聞いて驚いた。警戒してくれるのも助かる。」


「ほほっ良い子じゃな。あそこへは精霊の導きがいるんじゃ」


「何か特別なもの?」


「いんや精霊様にお祈りして森に入れば良いらしい。」


「らしいって確かじゃないのカシラ?」


「教会のある山を降りるのは簡単だがなあ。シスター見習いさんも買い物に出ているらしいしの。」


生活圏に入ったと言って良いかもしれない。


「ポーションは、その教会からおろしてるの?」


「村で貯蔵しているのもそうさ。お守りもな。」


見た覚えがある、ものだった。他のを見たことがないけど。セリも見せると、多分同じのだと話が終わる。


じゃあ知っておるかな。


『山より出ずる聖なる泉。その場所を守るために教会ができた。精霊の宿る聖域に悪しき心ではたどり着けない。』



伝承にある教会が、運命神を祀っておると言う話じゃ。ワシも一度、参ったことがある。


「神父様が話してた内容がそんな感じ。」


確定らしい。場所と方角を聞き、セリの用事は終わった。


「商人なのよ。何かいるものがあるかしら?」

シュルトの番だ。


「それはそれは、歓迎しますぞ。こんな山の中じゃ、ほとんど商人は来ませんからな。」



商談になるようなので、セリとロードは外に出る。


雪がチラついてきた。積もらないだろうな。

入れないとかあるのかあ。


そうなったら、手紙を出せるところまで行くか。

ここに頼めば、届けてくれるかもしれないけど。


それも時期を見なければいけない。それなら直接行きたいところだなあ。


お腹が空いたかなと自覚した。

温かい紅茶が恋しい。



教会があるという方向を見ても、木々に邪魔され見えない。

雪と風を防ぐ位置に村ができたのか。


静かで誰も出て来ない。冬籠りも、もう少し。



「終わったかい?」

門に居た男性だ。休憩だろうか。


「うん。ゆうような情報を得られた。」

「そっかい。ま、なんもないけど休憩してきな。」


セリを子供を気にかけてくれる。嬉しい事だけど、動いていた方が落ち着くんだよね。


「狩りに行きたいけど、禁止事項とかある?」


「ん。この時期出るやつはいないし、少し肉を分けてくれると良いな。狩りするのか?」


視線はロードとグスタフに行き期待がこもっているが、セリも行く。


「野菜も採る」


「ははっ、そうだな。母ちゃんが喜ぶ。」


肉のが喜ばれるのも知っているが、女性がいると野菜も重視してくれる。

雪に埋もれた野菜を探すのは運が必要だけど、結構勘で見つかるものだ。



セリは気負いないまま、シュルトの商談を待っているのだった。

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