16-舟で川上り

突然の出発の決定。側で聞いていた2人も準備に前向きだった。


「護衛どーすっかなあ。」

「手土産も必要よね。それに魔道具も持てる範囲で。」


『川の調査の一端』という建前、セリは極北の城から出ていた。もちろん、ロードが側に居る。


“セリのお願いを聞かない”という選択肢はない。その準備も瞬時にできた。その煽りを喰らった奴らなんて知るか。


荷物、手土産まで気を回したシュルトは、急な出発に対応できた。

より大変だったのは護衛の方。


「すっげえ頑張ったんだけど、オレ」

置いてかれないよう、急拵えと言うかなんとか着いて来た。


「報告を投げて準備してくっついて来た!オレ戻ったばっかで報告書が溜まってたのにぃ〜。」


可哀想に。

出発前のカナンをセリが撫でるが逃げなかった。狼だった時の名残りかもしれない。


後2人の準備は簡潔だった。

キースは権力者に報告。グスタフはメンバーが増えただけと普段通りだったのと比べてば立場の差か。


目的は上流と言えば良いのか。集落へも情報を集めに出発した。


人族ばかりと言うことは、獣人だと警戒されると予想される。その点、セリとシュルトは人族だし、ロードも人族に見える?


「不遜さが隠せねえだろ。」

カナンは待機だが、グスタフとキースも問題ないのかは…

“高貴さが隠れない”


無理だと結論だった。けど、グスタフは旅の学者といえば…居そうだなとセリは思った。「高身長、強面なら護衛なしでも旅に出れそう。」


その通りに、旅する学者の経験もあるらしい。



「それにしてもこの6人での行動にも慣れてきた。このメンバーの戦力、過剰だよなぁ。」


カナンが言うが自身も戦力に入る。


竜人のロード、尋常じゃない魔力を持つキース。喧嘩を売る奴はバカだと思う。


グスタフの身のこなしと、森の歩き方はただもんじゃないし。まず喧嘩売っちゃいけないタイプと分かりそうなもんだ。


シュルトも自衛ができるくらいには強い。

セリだが、この年齢では十分だし、ロードが傷ひとつ付けさせない。


「そんな事になったら、全部氷漬けだわ。」


カナンが愚痴めいているもは、それほど大変だったのだろう。

「まーたこのメンバーなの、ね。」

「他に誰を連れて来れるのヨ?」


進みながら、シュルトが話相手をした。


「団長?着いて来れるのそれくらい、かな。」

「議長のが来るんじゃないカシラ?セリに肩入れしてるし。」


当のセリは頑張って歩いていた。丘を越えれば、川。合流地点が下に見えた。既に川の探索の使っている船だ。船員に3人が待っている算段だった。


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