5-架け橋

「魔法でどうにかする!」


キースが言うが、火柱でも上げるのだろうか?


「ほいよー、先行くよお」


カナンが飛んだ。いや、跳んだ。強化魔法を使っての大ジャンプは、危なげなく向こう側に着地した。


先に行き、ロープを何本も持っている?

「それで引っ張るの?」

「落ちるわヨ。」


シュルトのツッコミに、セリは思う。

(跳んで落ちても、命綱になりそう。)


叩きつけられてしまうか。なら、木に括り付けて?そう見上げたが。

1人分の体重を支えられるかは、疑問な細さだ。


ビクトールは大丈夫だが、アレクセイは怪しい。ベンゼルは無理。


「なあに?どうかしたあ?」

セリは、首を横に振っておいた。


「ほら、さっきの藁を敷いて」護衛組みの3人が動く。

馬小屋で入れていた藁を向こう側まで張った縄の上に放り投げる。


藁のカケラがパラパラと舞う。こんもりと縄の上全部に行き渡った。

綱渡りをするにしても、下が見えないから怖くない…かな?全員が渡れる状況とは思えなかった。


「ロード!」

「ああ。」


ロードに連れられ、崖の端っこに来た。下に落ちれば、足がやられそうな高さ。獣人なら着地可能?

ここでやっと、“魔法でどうにかする”の時がきたらしい。


ロードの氷魔法が、縄と藁を包み込んでいく。

ぱきぱきと道が作られていくのを真前で見る。


魔法の指定範囲は、縄で。強度を上げるために藁があるのか?

そう眺めていたら…

“真っ直ぐな氷の橋”が掛かった。


「氷の橋ができた…。」

「うえ?これ乗れんの?」

オッサンとクエンは懐疑的だ。


知っていたらしいメンバーもいる。


「荷物の運搬に使う即席の橋だ。」

「水魔法で凍らせるのが普段の作り方だけどねえ」

「凄いデス!ぱぱっとできちゃったデス!」


護衛3人組みは知っていたようだ。

「これだけささっと作れるのは、なかなかいないワネ」

シュルトも使った事のある言いようだった。


「氷魔法ならすぐだな!」カナンが渡って来ていた。


念のためと、護衛の3人が耐久性を見ている。


手すりがないため、端っこがすぐ崖で怖いが。

ロードに抱っこされて渡ったセリは、橋の高さを楽しんだ。


抱えられている安定感。落ちたとしてもロードの魔法で宙を蹴れる。

ひやっとする高さも、のしのし渡り終わった。ロードが。


(自分で渡っていたら怖かったかも。)

と続々と渡ってくるのを振り返り、ロードに

「凄いね!」と興奮気味でセリが言う。満足そうだ。


夫人がソリのまま慎重に渡り、男3人が足が震えているが渡り切った。


「こえええぇえ」

「ふぅ」

ガクブル!


コックさんは喋れもしないようだ。


少し休んで、進む事になった。


「後は、下りと魔物に気をつければオッケー。」

「この人数だし、何か狩って行くのが良いカシラ?」


保存食は少しあったが、北の砦に置いて来ている。狩りの獲物は減っていて、なかなか増やせなかったらしい。


“もし、救助に来た人間用に置いていく”オッサンの考えに同意したため、

食糧なし、持ち物もほとんどない。


頼む!と頭を下げていた。


「なるほど?割りを食うタイプだね。」

というキースとを会話が出る前にしていた。



ロードに、食べれる木の実を口に入れられながら。セリはおとなしくしていた。


山登りのような傾斜に、こちらの方は狩りでも来た事がない。足元がわかりずらい危険な場所と認識していた。


とりあえず進めば、川に出るだろう。どの川かはわからないけど。


ぎゅうっとロードに抱きしめられている感覚に、応えながら少々疲れを意識した。


当初の目的通り、北の砦には辿り着けた。


でも欲しかった教会の帰り道は、はっきりしない。

資料と地図、教会に訪れた事のあるオッサンがいても…


わかるか微妙なところ。


また歩きまわって探すか?訪れていた商人を探す方が早いのか。

セリにはわからなくなっていたのでロードの胸に頭を埋めた。


ぽんぽんと慰められたのだった。




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