17-部屋のもの

セリに夢の中


孤児院で起きたセリは、誰もいないので探していた。


『誰もいない』

それに違和感があるような、ないような。


ふわふわと考えがまとまらないが、探しに歩き回る。

いつの間にか、砦に来ていた。


掃除した廊下に、食事どころ



その生活感もなく、歩き回るが疲れもない。


夢だからだが、その疑問も納得もなく

歩いた。



何故か、建物の外に出られない。


窓に近づいても乗り出してみようと思えなかった。

雪が降るも、寒さも感じず。


その感触だけを思い出した。


風呂場。


寝る場所を探す。


(目が覚めないかな)


そう思って、目が覚めた。


「起きれるか?」


ロードの声が響く。

耳が身体に触れていたから、篭った声。


「起きた」


すんなり出た声に、お腹が空いたなと感じた。


「起きたー?そろそろ準備始めるよー。」


カナンのエプロン姿に、護衛はどうした?と頭をよぎったがツッコマない。


「手伝う」

「そう?疲れてるっぽし、ゆっくりしてたらー?」


疲れてるんだろうか。変な夢は見たけど。


迷っていると、ロードに体の位置を変えさせられた。

向き合う形になり、離す気はないと分かった。


「手伝いいるなら呼んで」

「あいよ。」


呼ぶタイミングをしっかり見ないと冷たいめに合わされるのは、確定だった。


「夢見てたのか?」

「そう、孤児院と砦。」


服でも違う。

歩いていて寒いとも邪魔とも思わない。

つぎはぎでサイズも違えば、そう言った不便もあった。


「魔力を通したり、魔物素材だと防御も上がる。」



「ロードの装備も?」


仲良く話している声が届いた。



「話してるわネ?」


よそよそしいセリはわかるが、ロードの方も踏み込みきれていない様子だった。いやあれは、番が見つかった興奮で落ち着きがなかったのかもしれない。


「ちゃんと歩み寄ってるな?」


生の野菜を盛り付けながら、カナンが確認する。


暴走は多い。

のんびり見ていられるロードとセリに感心した。


セリを抱きかかえ、独占欲丸出しの姿だが温厚な態度ってヤツだ。


「どっちが声かける?」

寒いのは勘弁だとシュルトに言外で伝えれば。


「行ってくるわヨ」

少し呆れながらも構わず向かっていった。


「セリ、そろそろ食事の準備ができるんだケド。手伝ってくれる?」

ロードの視線が少し鋭いが、セリを離した。


「今日は何?」嬉しそうに聞く。


「ひき肉料理よ。ソースが人気でネ」


説明しながら、キッチンに向かう。

寄り添うようにロードもついて来て、一気に狭くなる。


「オレ、セッティングしとくわ。」


一抜けしカナンに、

「ワインで良いー?」と叫び聞くシュルトに


「赤でー!!」と返された。


セリは、しゅわしゅわのブドウジュースがつく。

身内だけの晩餐に、和やかな時間が流れる。



しっかり食べたセリは、本を広げてロードと話しながら読んだ。


魔物や植生、この地域の特殊なものの話。

セリの身近にあっても、他の地域であるものとは限らない。


ロードは知っていた話を聞き、魔物の話のは詳しかった。


実体験付きの話に興味を掻き立てられる。


少々夜更かしをしてか眠りについた。


夢は見ずに、ぐっすり眠ったセリを


ワインで何に乾杯するのか


「セリちゃんの健やかな成長に」


演劇のような仰々しさがありながら、声のトーンは下がっている。

起こさない配慮だ。


ずでに無くなったワイングラスを見て、ロードは足りないなと思い口を潤す量だけ飲むことにした。


樽でも足りない。


シュルトは少し酔いが回ってきている様子で、カナンはそれほどでもないだろう。2人とも部屋で泊まるつもりらしい。


セリを起こさないなら、まあいいかとチーズにを口に入れる。

俺はうまいと思うが、セリは好みじゃなさそうだ。


やることなす事、番の事を考えている日々にもう前は何を考えて過ごしていたかなど考える気持ちもなかった。


大人組の夜は更け、適当に寝た。

これくらいなら、朝から響かないくらいで終わった。


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