8-護衛担当
情報部の部屋にて。
「移動届け?!」
「第二の情報部から、護衛担当。」
「アイツ、どうしたいんだ?」
馴染まない、変わり種扱いのカナンだった。
犬獣人が多い中での狼はより異質に見えた。
特に、番の問題の尾を引く狼獣人は距離をとられた。
「人の子の護衛に、貴族の必要もないが。」
それに、増員を予定していたから問題はない。
人員の調整をしている中、舞い込んだ要望書。
報奨でもあるため、ほぼ決定事項だ。
候補には、騎士を含めた編成で、アレクセイがいる。セリの知り合いであり、最初に名乗った騎士でもあるが、その事を忘れられている。
“セレナーデの騎士”は、護衛を担当する。
貴人の警護、付き添いから特別名前を授けられた1人だ。
衛生士と荷物持ちだろ?
小柄な犬獣人とクマ獣人がセットで評判が良い。
一回遭難したが、それも彼らに落ち度はないと判断された。その時に、人の子と会ったらしいとは調書が取れている。それがセリであると分かった。
「竜人に与するのか?」
「あれが、か。」
得体の知れない男と言われていたカナンが、情報部に願い出た意図が読めなかった。
犬獣人は群れでの生活に馴染みやすい。
狼は群れに従うか、孤立するものもいる。
「竜人の番と認められた子供。執着の強い狼。すごい布陣だ。」
そう話をして、処理を進めた。
「じゃじゃーん!似合う?」
ロードとセリの前に、カナンが現れた。
その格好が騎士服に似ている、色違いだが。
「服が変わってる。」
「そっ!オレ、護衛隊長だから。後、知った顔の3人でとりあえず回すわ。」
軽い言いようだが、大出世か?
実際は、“小”出世くらいだ。しかしデリケートな竜人の問題なので押し付けられている面もあるが、カナンのポジションを利用しない手はない。
本人も望んだのでやり易い。
「部屋に入ってくるのか?」ロードが嫌そうに問う。これ以上、番の近くに人を彷徨かせたくない。
「いんや。オレは近くで護衛だけど、他は扉の外で待機にする。それと移動の時な!」
その移動方法なら、模擬戦に行く前の状態だろうとあたりをつけた。
「部屋の出入り、物にも目があるから。変な商人なんかも弾けるぜ。」
それは嬉しい。素直にセリが喜ぶ
「偉いっ、頼りにしてる!」
尻尾が気になりつつ、カナンに抱きつこうと思ったがセリは身動き取れなかった。ロードが阻止だ。
「あの3人か。セリに近づこうとしないだろうな?」
「大丈夫だろ。3人とも結婚もしくは、婚約者がいっから。」
「お前は?」
「いると思うか?」
「近づくな」
「隊長なのに?!セリちゃん、なんか言ってやって!」
「もふもふしたい。」
ロードとカナンも黙った。
しばらく止まったものの、ロードが手持ちの毛皮を取り出し始める。
「さらさら、ゴワゴワ。」
セリが頬擦りして確かめ、仕分けしていく。
「するなら毛皮にしてくれ」とロードに頼まれ、部屋に毛皮が積まれていく。
「入るわヨ〜」
商人であるシュルトが、揚々と入ってきて一言。
「宝の山ね。」
そう、換金すればひと財産な魔物の毛皮。それが商売しているように広げられているのについつい、目利きをしてしまう。商人の
今日から部屋の前に護衛が立っているが、
シュルトは顔パスだ。
「他には、グスタフとキースもな。」
酒を呑んだ仲なら、呼び捨ての関係になるのカナンは気軽に呼んだ。
よく部屋に来る、メンバーが入ってこれるようになっていた。
セリへの影響を考えての処置だ。
「議長は?」
「あの人は、ちゃんと人を寄越してからくるから。」
顔パスではないのかな。
偉い人がそう簡単に来ないと忘れているセリだが。
キースも偉いと言い切れないので、誤魔化したカナンだった。
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