第四十話 持ち込み

大人の事情とは往々にあるもので

催事の前にも適応される。


模擬戦に参加するため、市場へは遠慮していただけると

あの盛り上がりに、参加不可。


ちょっと不服だったセリも、個人戦に出る人達が

騒がれているのを魔導具で見て…


「部屋から出ない」と自ら言った。

騒ぐ人の波、拡大の音声にキャアキャアと黄色い声。

人数も勢いもあり、盛り上がりを甘く見ていた。


その様子を見せたのは、ヴィジョンという魔導具の小型版。

小型と言っても、「絵画の額縁サイズ」


セリの手を広げたくらいのものだった。


「もっと大きいのは、玄関に飾る絵画くらいあるのよ」

「重いけどね?」


シュルトとキースの説明に、

とりあえず大きな物と覚えた。


浮かれた雰囲気と曲まで流れてくるのは、動く絵画のようで面白い。

人の動きも瞬くように変化があった。


キース様は、夜のパーティに出るまでこの部屋にいるらしい。

「めんどい輩が来ないからね?」


以前のように商人の突撃防止な気もする配置だ。


昼食も持ち込めるように特別手配された。

参加者への特別待遇のひとつらしい


「武器の優先手入れと、食事の差し入れに…」


優先と期待に応える役目がある、と。

今回はちょっと様子が違うのは、セリが敵と目されている

一部だが。


商人がそう思わせるよう仕向けた疑いがある

その方が儲けられる、と。


この機会に監視しているところだ。


セリに組みしているということで、カナンも

素性のよく知られていないロードにも敵意が向く。


そんな不和の解消は騎士の方が担うべきなのだが。

心情はそういかないのか、まだ知る時間が足りないせいか?


文官率いる上層部は、見定めているところである。


その被害に合わないよう、気をつけている協力者が

周囲をかためていても問題は起こりらしい。


カナンの視線と、ロードが避けた、香辛料が強い料理は

「これはやめとこうか?」

セリの口には運ばれない事になった。


「匂いは良いが、慣れないときついか?」


セリは特に気にせず、他のものを食べた。



「何かあった?」

シュルトがこっそりカナンに聞く


「ちょっと良くないくらいのもんが入ってかな〜。」

大人はオッケーで、子供は避けたいような?

作為的なのかはわからない。


「まあ避けたし」


明日は、シュルトが“べんとー”を作ると言っているので

こういうことは避けられる。


せこいてねえ、

後でどのルートできたかだけは調べよう。

そして釘を刺す事にする。

それが商人として守る術だ。


セリが気負っている様子はないけど、

良く思っていない輩が、嫌がらせをしているもよう。


援護の意味も込めての弁当。


混入対策でもあるが、

セリの好きなものを入れて応援しようと思うのだった。



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